バッテリ & 燃料電池モジュールアップデート

バッテリ & 燃料電池モジュールをご使用の場合, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a では, 気体中と液体中の流体および反応を連成するための新しい 反応流 マルチフィジックスインターフェースを利用でき, またリチウムイオンおよびニッケル水素電池のモデル化を簡略化する新しい 単粒子電池 インターフェースが提供されています. リチウムイオン電池二元電解質電池 インターフェースで強化された機能として, 高速アセンブリオプション, ソルバーのデフォルトの強化, 高 SOC と低 SOC の数値安定性などがあります. バッテリ & 燃料電池モジュールのアップデートの詳細は, 以下のとおりです.

新しい 単粒子電池 インターフェース

新しい 単粒子電池 インターフェースでは, リチウムイオン電池, ニッケル水素電池など, 各種電池のモデル化を簡略化されたアプローチで行えます. 電池を記述する支配方程式は一般的に低電流および中電流レベルに対して有効であり, ジオメトリで大域的 (計算負荷が小さくなります) または局所的に定義することができます. 局所的オプションを使い, 大型のバッテリパックにおける不均一な温度分布の影響を調べることができます.

単粒子アプローチは, 中負荷での計算効率が高く, 正確です. この方法により, バッテリパックの複雑な 3D アセンブリを比較的低い計算コストでモデル化でき, シンプルな単粒子モデルによってバッテリパックの3次元記述の各ポイントで放電挙動と再充電挙動が提供されます.

新しい 単粒子電池 インターフェースの使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Batteries_and_Fuel_Cells_Module/Batteries,_Lithium-Ion/li_battery_single_particle

新しい 反応流 マルチフィジックスインターフェース

気体や液体の流体と反応に関するスタディの向上を図り, 新しい 反応流 マルチフィジックスインターフェースでは, 単相流 インターフェースと 濃縮化学種輸送 インターフェースを組み合わせます. 以前はスタンドアロン型インターフェースとして利用可能だった新しい 反応流 マルチフィジックスインターフェースでは, 各フィジックスインターフェースやそれらのマルチフィジックス連成で設定を制御しやすくなります.

新しい 反応流 連成を使用することで, 連成した任意のインターフェースの解を別箇または同時に求めるプロセスが大幅に改善されました. 反応流の場合, このことは, 適切な初期条件を作成するため, または結果がどのような影響を連成から受けるかを試験するために重要となります. 反応流 マルチフィジックスインターフェースは, 層反応流と乱反応流, 多孔質媒体の流れと反応に対応しています.

新しい 反応流 マルチフィジックスインターフェースの使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Chemical_Reaction_Engineering_Module/Reactors_with_Mass_and_Heat_Transfer/round_jet_burner

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新しい多孔質媒体輸送特性機能では, 多孔質媒体を流れる溶液内の多成分輸送についてスタディを行えます. 新機能として, 濃縮混合液内の輸送と組み合わせた, 材料の空隙率に依存する効果的な輸送特性を計算するモデルが含まれています.

濃縮化学種輸送 インターフェースの新しい多孔質媒体特性機能の使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Chemical_Reaction_Engineering_Module/Reactors_with_Porous_Catalysts/carbon_deposition

多孔質媒体輸送特性機能を使い, Ni-Al2O3 固体触媒のメタンの熱分解について反応器の空隙率分布のスタディを行います.
分解反応で煤が形成されるに従い, 空隙率が小さくなります. 多孔質媒体輸送特性機能を使い, Ni-Al2O3 固体触媒のメタンの熱分解について反応器の空隙率分布のスタディを行います. 分解反応で煤が形成されるに従い, 空隙率が小さくなります.
多孔質媒体輸送特性機能を使い, Ni-Al2O3 固体触媒のメタンの熱分解について反応器の空隙率分布のスタディを行います. 分解反応で煤が形成されるに従い, 空隙率が小さくなります.

新しい ネルンスト・プランク・ポアソン方程式 インターフェース

新しい ネルンスト・プランク・ポアソン方程式 マルチフィジックスインターフェースを使い, 電荷中性を仮定できない電気化学二重層内の電荷・イオン分布を調べることができます. ネルンスト・プランク・ポアソン方程式 インターフェースは, 電位と空間電荷密度の定義済み連成と共に, 静電気 および 希釈化学種輸送 インターフェースをモデルに追加します.

新しい外部短絡境界条件

新しい外部短絡境界条件を使い, 外部集中抵抗を介して電極表面, 多孔質電極, 電極を短絡させることができます. 新しい境界条件は, 例えば電池の短絡を調査する場合や, 防食の問題において電気化学的に活性の大型物質を相互接続する場合などに適しています.

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新しい 電気化学熱源 マルチフィジックスノード

新しい * 電気化学熱源* マルチフィジックスインターフェースは, 電気化学熱源と伝熱インターフェースを連成させる選択肢を提供します.

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新しい熱力学的平衡動力学タイプ

過電圧がゼロ (ごくわずかな電圧損失) であると仮定する, 新しい熱力学的平衡の電極反応速度タイプ (* 二次電流分布* インターフェースでは「第一条件」と言います) が電極反応でサポートされるようになりました.

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多孔質電極とエッジ電極の膜抵抗および溶存-付着化学種の新しいサポート

Porous Electrode (多孔質電極) ノードと Edge Electrode (エッジ電極) ノードで, 膜抵抗および溶存-付着化学種の追加がサポートされるようになりました. 以前は, これは電極表面機能でのみサポートされていました. 多孔質電極の膜抵抗と溶存-付着化学種を使い, 例えばリチウムイオン電池の固体電解質界面 (SEI) 形成をモデル化できます.

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リチウムイオン電池 および 二元電解質電池 インターフェースの新しい高速アセンブリオプション

多孔質電極 ノードで 粒子寸法の高速アセンブリ を有効にすることで, 粒子のインターカレーションを用いたバッテリモデルで, 計算時間が大幅に短縮されます. この効果は, 電池要素におけるメッシュ要素の数と, 粒子寸法における要素の数とが比較可能である場合に, 1D モデルに最もよく表れます. ただし, このオプションを使用する場合, 粒子寸法軸上の解からデータの後処理を行うことはできず, また粒子寸法における固体拡散係数など変動材料特性の使用には対応していません.

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リチウムイオン電池 および 二元電解質電池 インターフェースで強化されたソルバーデフォルト

2D および 3D の空間次元で, インタカレートする濃度が分離ソルバーで別々のグループに入れられるようになりました. この変更により, 大きな問題のメモリ要件が低減される他, シミュレーションの計算時間も短縮されます.

リチウムイオン電池 および 二元電解質電池インターフェースでの高SOCと低SOCの数値安定性の向上

Porous Electrode Reaction (多孔質電極反応) ノードで リチウム挿入反応速度 を使用する際の数値安定性が, 0% と 100% 近傍の SOC 値について改善されました. 改善された反応速度論的定式化は, デフォルトにより, 新しいモデルに用いられます. 新しい反応速度論的計算式を旧モデルで使用するには, この計算式を Advanced Insertion Kinetics Expression Settings (拡張挿入反応速度の計算式の設定) セクション (Advanced Physics Options (拡張フィジックスオプション) が有効になっている場合のみ表示されます) で有効にします.

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新しいチュートリアルモデル: リチウムイオン電池の内部短絡

電池で内部短絡が発生すると,2つの電極材料が内部的・電子的に相互接続され, 局所電流が高密度になります. リチウムイオン電池では, 例えばリチウムデンドライト (樹枝状結晶) の形成や圧縮衝撃のため, 内部短絡が発生することがあります. 長時間にわたり内部短絡が発生すると, 結果として自己放電が発生し, 局所的な温度上昇を伴います. 温度が所定の閾値以上になると発熱反応によって電解質が分解し始め, 熱暴走を引き起こして健康被害や安全上の問題につながるおそれがあるので, 温度上昇の影響は重要です.

このチュートリアルモデルでは,2つの多孔質電極材料間のセパレーターを貫通する金属フィラメントの発生による局所的な温度上昇について調べます. リチウムイオン電池 インターフェースと 電熱 インターフェースを連成させて, 物理特性を設定します. 電池の化学的性質は, グラファイト負極と NMC 陽極, LiPF6 電解質から構成されます.

リチウムイオン電池の内部短絡チュートリアルモデルを示すアプリケーションライブラリへのパス:

Batteries_and_Fuel_Cells_Module/Batteries,_Lithium-Ion/internal_short_circuit

貫通する小さなフィラメント周囲とフィラメント表面温度についての, リチウムイオン電池の温度分布の断面. 貫通する小さなフィラメント周囲とフィラメント表面温度についての, リチウムイオン電池の温度分布の断面.
貫通する小さなフィラメント周囲とフィラメント表面温度についての, リチウムイオン電池の温度分布の断面.

更新されたチュートリアルモデル: 容量減退

副反応と劣化プロセスは幾つもの望ましくない影響につながることがあり, リチウムイオン電池の容量損失の原因となります. 一般的に, 経年劣化は, 複数の複雑な現象や, 電池のさまざまな場所で同時に発生する反応によって起こりますが, 電位, 局所濃度, 温度, 電流の方向に応じて, 負荷サイクル時の段階ごとに劣化速度が異なります. 異なるセル材料の経年劣化プロセスはそれぞれ異なり, 異なる材料を組み合わせている場合, 例えば電極材料のクロストークによって経年劣化がさらに加速化されることがあります. このチュートリアルでは, リチウムイオン電池のグラファイト陰極で経年劣化をモデル化する方法について説明し, 反応を形成する固体電解質界面 (SEI) が寄生する結果として, 循環可能なリチウムの不可逆的損失が生じる様子を示します. また, 成長する SEI 膜の抵抗により大きくなる潜在的な損失が電極粒子に与える影響, および電解質の体積分率減少が電解質の電荷移動に与える影響もモデルに含まれています.

このチュートリアルモデルは COMSOL Multiphysics® の以前のバージョンから更新され, 科学論文の経年劣化データが最近のものになりました. さらに, 複数サイクルのシミュレーション時間を短縮するための時間変換係数が導入されています.

容量減退チュートリアルモデルを示すアプリケーションライブラリへのパス:

Batteries_and_Fuel_Cells_Module/Batteries,_Lithium-Ion/capacity_fade

さまざまな経年劣化サイクル数の 1 C 放電時のセル電圧. さまざまな経年劣化サイクル数の 1 C 放電時のセル電圧.
さまざまな経年劣化サイクル数の 1 C 放電時のセル電圧.