CFDモジュールアップデート

CFD モジュールをご使用の場合, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a では, 一定の非等温流シミュレーションの計算を高速化する新しいオプション, CFD アプリケーションで重力を簡単に考慮に入れられる機能, 圧縮性非等温流のモデル化のためのブシネスク近似等, 機能が強化されています. CFD モジュールのアップデートの詳細は, 以下のとおりです.

弱圧縮性流オプション

密度変化が圧力に関してはごくわずかである場合, Compressibility (圧縮率) の新しい Weakly compressible flow (弱圧縮性流) オプションを非等温流に使用することができます. これは, マッハ数 0.3 未満の大半の流動が当てはまります. 圧縮性流 (Ma < 0.3) オプションの代わりにこのオプションを使用すると, 音速で伝播する圧力波の解を時間依存シミュレーションで求めずに済むという利点を得られます. これにより, 時間ステップを大きくすることができ, 計算速度が速くなります.

新しい弱圧縮性流オプションを使い解を求めた置換換気のベンチマーク問題.
プロットには, 等値面, 表面, 流速場の流線に温度 (K) が示されます. 新しい弱圧縮性流オプションを使い解を求めた置換換気のベンチマーク問題. プロットには, 等値面, 表面, 流速場の流線に温度 (K) が示されます.
新しい弱圧縮性流オプションを使い解を求めた置換換気のベンチマーク問題. プロットには, 等値面, 表面, 流速場の流線に温度 (K) が示されます.

非圧縮性流オプションの場合, 基準値 を用いて、 等の流体特性を定義します. 新しい Weakly compressible (弱圧縮性) オプションの場合, 流体特性は, 圧力ではなく, 温度の関数 です (伝熱インターフェースから取ることが望ましいと言えます). 従って, および となります. Compressible flow (圧縮性流) (Ma < 0.3) オプションの場合, の両方を用いて流体特性を評価します. (Ma < 0.3) の表記は, 連続性, 運動量, エネルギーに関する完全圧縮形式が求解できても, マッハ数がこれよりも高くなると, 安定化および境界条件が適さない可能性があることを示します.

流動 インターフェースで 圧縮率 を定義する際の Weakly compressible flow (弱圧縮性流)オプションの使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Heat_Transfer_Module/Heat_Exchangers/heat_exchanger_ni
CFD_Module/Non-Isothermal_Flow/displacement_ventilation

新しい重力特性と機能

単相流 および 非等温流 インターフェースで重力特性を利用できるようになりました. Include gravity (重力を含める) チェックボックスを選択すると, 流体流動インターフェースが有効なすべてのドメインに, と等しい体積力が追加され, モデルツリーに重力機能が表示されます. 重力特性は, 静水圧を補正するための追加オプションであり, Outlet (出口), Open Boundary (開境界), Boundary Stress (境界応力) 条件等, 圧力タイプの境界条件を指定します.

圧力と温度が基準値を取る箇所を定義する基準位置を定義することもできます. 境界条件機能はこの基準位置を使い, 静水圧を補正します. 例えば, 出口境界に静水圧補正オプションを選択している場合, と等しい圧力分布が出口のユーザー定義による圧力に追加されます. この補正から, 非圧縮性流には厳密値を得られ, また他の2つの圧縮率オプションには出口の圧力プロファイルの良好な近似値を得られます. また, 減圧のオプションもあり, 例えば圧力の依存変数の定義に自動的に静水圧を含めるために使用できます.

層流 インターフェースで Include gravity (重力を含める) オプションを使用した例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

CFD_Module/Single-Phase_Tutorials/gravity_tutorial

 
塩分濃度不連続性によって発生するロック解除重力流のシミュレーション.

非等温流のブシネスク近似

熱膨張率が定義されている材料を使い非圧縮性非等温流をシミュレートする場合, 線形温度依存性を伴う浮力が自動的に追加されますが, 流体特性 (密度, 粘性, 熱伝導率) はすべて一定に保たれます. このモデリング手法を「ブシネスク近似」と言い, 非等温流の用途に広く使用されています. 組み込み材料を使い線形化ポイントを指定する代わりに, Non-Isothermal Flow Multiphysics (非等温流マルチフィジックス) ノードで基準密度と熱膨張率を明示的に定義することもできます.

ブシネスク近似を使いシミュレートした, 下から加熱される平行プレート間の対流の温度 (上) と流速度 (下). ブシネスク近似を使いシミュレートした, 下から加熱される平行プレート間の対流の温度 (上) と流速度 (下).
ブシネスク近似を使いシミュレートした, 下から加熱される平行プレート間の対流の温度 (上) と流速度 (下).

ファン機能のための旋回流

入口の流動方向として Swirl flow (旋回流) のオプションを選択できるようになりました. ファンの下流側の旋流は, ブレードと比較した流動の角速度によって定義される, 回転速度とスワール比を設定して求めます.

ダクトの入口に配置したファンの下流側で発生する旋回流. ダクトの入口に配置したファンの下流側で発生する旋回流.
ダクトの入口に配置したファンの下流側で発生する旋回流.

多孔質媒体の伝熱に圧力作用サブ機能を使用できるようになりました.

多孔質媒体の流体部分の温度は, 圧力変化による作用の影響を受ける可能性があります. これをモデルに反映させるため, 圧力作用機能を更新し, 自由流体に加えて多孔質媒体にも対応するようになり, Porous Medium (多孔質媒体) ノードのサブ機能として利用できるようになりました.

新しい 反応流 マルチフィジックスインターフェース

気体や液体の流体と反応に関するスタディの向上を図り, 新しい 反応流 マルチフィジックスインターフェースでは, 単相流 インターフェースと 濃縮化学種輸送 インターフェースを組み合わせます. 以前はスタンドアロン型インターフェースとして利用可能だった新しい 反応流 マルチフィジックスインターフェースでは, 各フィジックスインターフェースやそれらのマルチフィジックス連成で設定を制御しやすくなります.

新しい 反応流 連成を使用することで, 連成した任意のインターフェースの解を別箇または同時に求めるプロセスが大幅に改善されました. 反応流の場合, このことは, 適切な初期条件を作成するため, または結果がどのような影響を連成から受けるかを試験するために重要となります. 反応流 マルチフィジックスインターフェースは, 層反応流と乱反応流, 多孔質媒体の流れと反応に対応しています.

新しい 反応流 マルチフィジックスインターフェースの使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Chemical_Reaction_Engineering_Module/Reactors_with_Mass_and_Heat_Transfer/round_jet_burner

濃縮化学種輸送の新しい機能: 多孔質媒体輸送特性

新しい多孔質媒体輸送特性機能では, 多孔質媒体を流れる溶液内の多成分輸送についてスタディを行えます. 新機能として, 濃縮混合液内の輸送と組み合わせた, 材料の空隙率に依存する効果的な輸送特性を計算するモデルが含まれています.

濃縮化学種輸送 インターフェースの新しい多孔質媒体特性機能の使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Chemical_Reaction_Engineering_Module/Reactors_with_Porous_Catalysts/carbon_deposition

多孔質媒体輸送特性機能を使い, Ni-Al2O3 固体触媒のメタンの熱分解について反応器の空隙率分布のスタディを行います.
分解反応で煤が形成されるに従い, 空隙率が小さくなります. 多孔質媒体輸送特性機能を使い, Ni-Al2O3 固体触媒のメタンの熱分解について反応器の空隙率分布のスタディを行います. 分解反応で煤が形成されるに従い, 空隙率が小さくなります.
多孔質媒体輸送特性機能を使い, Ni-Al2O3 固体触媒のメタンの熱分解について反応器の空隙率分布のスタディを行います. 分解反応で煤が形成されるに従い, 空隙率が小さくなります.

濃縮化学種輸送 インターフェースの擬似時間ステッピング

濃縮化学種輸送 インターフェースのための擬似時間ステッピング機能が新たに加わり, 定常スタディのソルバーの収束性が大幅に改善されます. 例えば, 乱反応流内の移流 (大ペクレ数) によって化学種の流束が支配される場合に特に便利です.