光線光学モジュールアップデート

光線光学モジュールをご使用の場合, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a では, ジオメトリの外側の光線追跡をモデル化することができるようになり, 単色収差測定の新しいプロットタイプ, 光線軌道プロットの向上等, 機能が強化されています. 光線光学モジュールのアップデートの詳細は, 以下のとおりです.

ジオメトリ外の光線伝播

レンズ系を通過する光線を追跡する際に, 空気または真空ドメインを追加して光線を取り囲む必要がなくなりました. それらのドメインが均質 (無勾配) である限り, 光線を放射することができ, またメッシュ化されていないドメインでジオメトリの外側に伝播することができます. この 新しい機能 により, 壁条件の代わりに, 材料の不連続部分の境界条件を外部境界に使用できるようになり, メッシュ化したドメインに光線が入射する時やドメインから出る時に屈折させることが可能となりました. この機能に伴い, アプリケーションライブラリの例のほとんどは更新されています. モデル化する際に, 幾何学的光学 インターフェースの設定ウィンドウで, 外部ドメインの屈折率 機能を指定します. 光線がジオメトリの外側や, 幾何学的光学 インターフェースの選択リストにない領域に伝播すると, この屈折率の値が使用されます. メッシュ化したドメインに光線が隣接しない場合でも, 光線はジオメトリの境界と相互作用する可能性があります. ただし, 境界自体をメッシュ化する必要があります. 境界のメッシュ化は, デフォルトのメッシュ設定を使用すると自動的に処理されます.

平行ビームは凸レンズによって集束されます.
光線はレンズや, メッシュが定義されていないジオメトリ外側の領域を伝播することができます.
光線のカラー式は光線強度に基づき, メッシュの色は要素のサイズに比例します. 平行ビームは凸レンズによって集束されます. 光線はレンズや, メッシュが定義されていないジオメトリ外側の領域を伝播することができます. 光線のカラー式は光線強度に基づき, メッシュの色は要素のサイズに比例します.
平行ビームは凸レンズによって集束されます. 光線はレンズや, メッシュが定義されていないジオメトリ外側の領域を伝播することができます. 光線のカラー式は光線強度に基づき, メッシュの色は要素のサイズに比例します.

光学収差プロット

新しい光学収差プロットタイプは, 単色収束測定専用のプロットです. これらのプロットは, 焦点に集束するに従い生じる入射光間の光路長差を計算し, この光路長差をゼルニケ多項式の基底でフィッティングします. 計算されたゼルニケ係数を乗ずることで, 任意の線形結合のゼルニケ多項式をプロットすることができます. また, 収差評価機能を使い, ゼルニケ係数表を作成することができます.
単位円にプロットされた5次までのゼルニケ多項式 単位円にプロットされた5次までのゼルニケ多項式
単位円にプロットされた5次までのゼルニケ多項式

光線軌道プロットの機能強化

保存済みの時間ステップまたは光路長ステップでの解に加え, 追加のポイントが自動的に光線軌道プロットタイプに含まれるようになりました. 通常, これらの追加のポイントの位置は, 光線が境界で反射または屈折する箇所です. このようにポイントが追加されたことで, 光線軌道プロットタイプは機能が強化され, 保存済みの時間ステップまたは光路長インクリメントが非常に小さい場合でも, 以前よりもはるかに多くの情報を得られるようになりました.

保存済み解法時間が同一の Czerny-Turner分光器モデルでの光線軌道プロットタイプについて, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2 とCOMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a を比較した場合. 保存済み解法時間が同一の Czerny-Turner分光器モデルでの光線軌道プロットタイプについて, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2 とCOMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a を比較した場合.
保存済み解法時間が同一の Czerny-Turner分光器モデルでの光線軌道プロットタイプについて, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2 とCOMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a を比較した場合.

円錐ベース出射の新しいオプション

初期方向が円錐分布される光線を出射する場合に幾つかの新しいオプションを使用することができます. 各光線の立体角が同じになるように均一な密度を持つ光線を波数ベクトル空間で出射することができます. または, 光線の密度を極方向と方位角方向で別々に指定することができます. また, ビルトインオプションを使い, 軸方向光線の有無を指定してマージナル光線を出射することもできます.

円錐分布による光線出射の4つのオプション 円錐分布による光線出射の4つのオプション
円錐分布による光線出射の4つのオプション

強度計算のオプションの名称変更

幾何光学 インターフェースの設定ウィンドウの強度計算リストのオプション名が直観的な名称に変わりました.

バージョン5.2でのオプション名 バージョン5.2aでのオプション名
主曲率を使用 強度計算
主曲率と光線パワーを使用 強度とパワーを計算
曲率テンソルを使用 勾配媒質における強度計算
曲率テンソルと光線パワーを使用 勾配媒質における強度とパワーを計算

更新されたチュートリアルモデル: ソーラーディッシュ受光器

ソーラーディッシュ受光器のチュートリアルモデルが更新され, 2つのベンチマークデータが含まれるようになりました. 放物面ディッシュ型集光器は入射太陽放射をターゲットまたはキャビティ型レシーバーに集束させることができるので, 非常に高温の局所的熱流束が発生します. これを利用して蒸気を生み出すことができ, 発電機の動力として利用したり, 水素を生成して直接燃料源として利用できます. 用途によっては, キャビティ型レシーバー表面の熱流束の均一性が効率性に大きな影響を与えます. この例では, 集光器によって太陽放射が焦点面の小領域に向かって反射するので, その箇所にキャビティ型レシーバーを配置することができます.

太陽光集光器・受光器システムの性能を評価する上で特に重要となるのが, 周囲太陽束に対する入射束の比率として定義される集光比です.

このモデルでは, 2つの仮定について, 放物面型太陽光集光器の焦点面の集光比を評価します. 第一の仮定では, 完全に平滑な非吸収性反射鏡として放物面反射鏡を扱います. 第二の仮定では, 表面粗さ, 吸収, 太陽形状の影響を考慮に入れます. これら2つのスタディでは両方とも, 放物面ディッシュの焦点面の集光比を計算し, その結果を公表値と比較します.

アプリケーションライブラリへのパス:

Ray_\Optics_\Module/Industrial_\Applications/solar_\dish_\receiver

ソーラーディッシュ受光器チュートリアルモデルは, 理想的な反射鏡 (左上) と, 表面粗さ, 吸収, 太陽の周辺減光を考慮に入れた反射鏡 (右上) について, 結果と公表値のデータ比較を示します.
それぞれのケースの 2D 結果も示されます (下). ソーラーディッシュ受光器チュートリアルモデルは, 理想的な反射鏡 (左上) と, 表面粗さ, 吸収, 太陽の周辺減光を考慮に入れた反射鏡 (右上) について, 結果と公表値のデータ比較を示します. それぞれのケースの 2D 結果も示されます (下).
ソーラーディッシュ受光器チュートリアルモデルは, 理想的な反射鏡 (左上) と, 表面粗さ, 吸収, 太陽の周辺減光を考慮に入れた反射鏡 (右上) について, 結果と公表値のデータ比較を示します. それぞれのケースの 2D 結果も示されます (下).