ローターダイナミクスモジュール

COMSOL Multiphysics®バージョン5.2a アップデート2ではローターダイナミクスモジュールが新たに導入されました. この構造力学モジュールへのアドオンによって回転機械中のコンポーネントとパーツをモデル化することができるようになり, 非対称性と回転が原因となる不安定性や破壊共鳴を解析することができるようになります. ローターダイナミクスモジュールの性能と機能は以下のとおりです.

回転機械とローターダイナミクスのシミュレーション

ローターダイナミクスモジュールは回転機械を含むアプリケーションにおけるローターとそれらのコンポーネントの振舞いを解析します. ローターの動作が臨界スピードと共鳴につながり, それがアンバランスに依存するかもしれないような場合におけるアセンブリの自然周波数を計算します. このようなシミュレーションは自動車, 航空, パワージェネレーション, 電気, 家電などの業界における機器の回転部品を解析するために使われます. 構造力学モジュールへのアドオンとして導入されたローターダイナミクスモジュールでローター, ベアリング, ディスク, ファンデーションの共鳴, 応力, 歪を解析することにより, 許容される動作範囲の条件を守ることができます.

ローターダイナミクスの5つの新しいインターフェース

モデルウィザードにおいて, 構造力学ノード (ローターダイナミクスノードの下) に新たに5つのインターフェースが加わりました.

  1. 固体ローター: このインターフェースではソリッド要素を使って, 回転機械アセンブリに寄与するパーツの完全な 3D ジオメトリ表現をモデル化できます. 計算コストは高いですが, 非線形幾何効果をはじめ, スピンソフトニング, 応力硬化, ジャーナルとマウンティングの変形を考慮することができます.

  2. ビームローター: このインターフェースはローターを梁として, 回転機械のコンポーネントを点として定義することにより, 高速で計算コストの安い計算を行います. 断面積や慣性モーメントなどのローターの固有の特性を使ってこのインターフェースにおけるフィジックスを定義します. ローターダイナミクス解析における軸, 曲げ, 捻り成分を分離し, ローター角速度に対する応答を解析します.

  3. ハイドロベアリング: このインターフェースを使えば潤滑油膜の効果を含む, ハイドロベアリングの完全なモデリングを行うことができます. 単にベアリング特性をモデル化するだけでなく, 他のインターフェースと組合わせることもできます (以下を参照). レイノルズ方程式を解くことにより, 次の種類のハイドロベアリングのジャーナルと軸受の間の潤滑油の効果を解析することができます: 平, 楕円, 半割, マルチローブ, チルトパッドベアリング, もしくはユーザー定義ベアリング.

  4. ハイドロベアリングと固体ローター: ソリッド要素に基づき, 固体ローター インターフェースを使った3Dローター, および, ハイドロベアリング インターフェースに基づくハイドロベアリングのモデリング.

  5. ハイドロベアリングとビームローター: ビーム要素に基づき, ビームローターインターフェースを用いた近似ローター, および, ハイドロベアリングインターフェースに基づくハイドロベアリングのモデリング.

ハイドロベアリング に加えて, 寄与部品の挙動を, 特定機能の中の集中パラメーターとして含めることができます. ジャーナルベアリング, スラストベアリング, ファンデーションが含まれます.

モデルウィザードにおける構造力学 ノード. 新しい ローターダイナミクス サブノードとインターフェースを示しています.

モデルウィザードにおける構造力学 ノード. 新しい ローターダイナミクス サブノードとインターフェースを示しています.

モデルウィザードにおける構造力学 ノード. 新しい ローターダイナミクス サブノードとインターフェースを示しています.

様々なスタディタイプでローターダイナミクスアプリケーションを解析

ローターダイナミクスモジュールを使用するときには, 何が動的で, 何が静的かは, ローターと一緒に回転する座標系における観測者によって決まります. 一般的な構造力学の設定では慣性力が無視できないときには異なる形の動解析が行われます. ローターダイナミクスインターフェースは共回転座標系で定式化されていますので, 慣性効果はある程度静的負荷として既に取り入れられています. このように, 定常的な条件で回転するローターは, 共回転する観測者から見て動解析する必要がありません. この簡素化がローターダイナミクスモジュールを使う基本的な利点のひとつです.

一方, 重力のような空間座標系での固定荷重は, 共回転の観点からは調和変化になり, 動的励振となります.

ローターダイナミクスモジュールは, 回転機械を解析する際に, 次のスタディタイプを静解析, 動解析の両方に提供します:

  • 定常スタディ
  • 固有周波数スタディ
  • 周波数領域スタディ
  • 時間領域スタディ
  • FFTを使った過渡スタディ
二つのベアリングで支持されたローターの3番目のモードを示すワールプロット 二つのベアリングで支持されたローターの3番目のモードを示すワールプロット
二つのベアリングで支持されたローターの3番目のモードを示すワールプロット

専用のプロットタイプで結果を可視化

新しく加わった専用のプロットタイプであなたのシミュレーション結果を明晰で簡便に可視化:

  • ワールプロット: ローター軸の周りを回転するローターのモード形を離散回転間隔ごとにプロット

  • キャンベルプロット: ローター速度に対するローターの固有周波数変化のプロット. 前ワールの場合, 固有周波数はローター速度とともに増加, 後ワールの場合, 減少します.

  • ウォーターフォールプロット: ローターの角速度に対する周波数スペクトルと振幅の変化をプロット.

  • 軌道プロット: ローター上のコンポーネントの位置と関係するある点 (例えばディスク, ベアリングなど) 上の3D軌道をプロット.

他のモデリング対象についてはローターダイナミクスモジュール 製品ページをご参照ください.

クランクシャフトのローターダイナミクス解析に対応するジャーナル軌道 クランクシャフトのローターダイナミクス解析に対応するジャーナル軌道
クランクシャフトのローターダイナミクス解析に対応するジャーナル軌道