半導体モジュールアップデート

半導体モジュールをご使用の場合, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a では, 指定した日付と場所でシリコン太陽電池の設計パラメーターを評価するための新しいアプリケーションが提供されています. 理想的なショットキー境界条件, 熱イオン放出境界条件, 連続擬フェルミ境界条件の機能強化を図り, 計算時間とメモリを節約しつつ, 半導体モデルの精度を向上しました. 半導体モジュールのアップデートの詳細は, 以下のとおりです.

新しいアプリ: 光線光学を用いたシリコン太陽電池

光線光学によるシリコン太陽電池アプリは, 光線光学モジュールと半導体モジュールを組み合わせて, 指定した日付と場所でのシリコン太陽電池の動作を説明します. まず, 光線光学モジュールで, ユーザーが選択した日付と場所の平均照度が計算されます.

次に, 半導体モジュールで, ユーザーが指定した設計パラメーターに基づき正規化した太陽電池の出力特性が計算されます. 出力と照度の関係が単純な線形であると仮定し, 正規化した出力特性に平均照度の計算値を乗算して, 指定した日付と場所の太陽電池の出力特性を求めます. その後, 太陽電池の効率性や, 一日のうちの発電量を計算することができます.

基本モデルは, 担体発生を伴う 1D シリコン PN 接合と SRH (Shockley-Reed-Hall) 再結合から構成されます. 接地した陽極は、エミッター (n型ドープドメイン) に蒸着した薄いオーミックコンタクトとしてモデル化されます. 同様に, 陰極は, 基底側 (p型ドープドメイン) に蒸着して外部回路に接続した, 理想的なオーミックコンタクトとしてモデル化されます.

光線光学を用いたシリコン太陽電池アプリを示すアプリケーションライブラリへのパス:

Semiconductor_Module/Applications/solar_cell_designer

注: このアプリを稼働するには, 半導体モジュールと光線光学モジュールの両方を使用する必要があります.

計算結果と太陽の位置を示す, 光線光学を用いたシリコン太陽電池アプリのユーザーインターフェース. 計算結果と太陽の位置を示す, 光線光学を用いたシリコン太陽電池アプリのユーザーインターフェース.
計算結果と太陽の位置を示す, 光線光学を用いたシリコン太陽電池アプリのユーザーインターフェース.

金属接触部の理想的なショットキー境界条件のパフォーマンス向上

COMSOL Multiphysics® 5.2 以前のバージョンでは, 理想的なショットキー境界条件の金属接触部の箇所で一定値の外挿スキームが用いられています. これを行うには, 許容精度の結果を得るために境界の箇所で細密なメッシュが必要となります. バージョン 5.2a では, 高次の外挿スキームが用いられ, 精度の向上が図られているので, 境界でのきわめて高密度のメッシュを必要としません. 例えば, 均一な材料と電流密度を持つ四角形のドメインの左側に, 理想的なショットキー境界条件を適用します. COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a の以下のプロットは, 2つのメッシュとそれぞれの結果を比較したものですが, 非常に正確であり, 実際上区別がつきません。

理想的なショットキー境界条件を適用する, 左側の境界で精緻化しなかったメッシュ. 理想的なショットキー境界条件を適用する, 左側の境界で精緻化しなかったメッシュ.
理想的なショットキー境界条件を適用する, 左側の境界で精緻化しなかったメッシュ.
理想的なショットキー境界条件を適用する, 左側の境界で精緻化したメッシュ. 理想的なショットキー境界条件を適用する, 左側の境界で精緻化したメッシュ.
理想的なショットキー境界条件を適用する, 左側の境界で精緻化したメッシュ.
結果には, 精緻化しなかったメッシュの場合も, 電流密度の均一性が非常に良好であることが示されています (最大値と最小値は, 5桁まで同じ). 結果には, 精緻化しなかったメッシュの場合も, 電流密度の均一性が非常に良好であることが示されています (最大値と最小値は, 5桁まで同じ).
結果には, 精緻化しなかったメッシュの場合も, 電流密度の均一性が非常に良好であることが示されています (最大値と最小値は, 5桁まで同じ).
精緻化しなかったメッシュの結果は, 精緻化したメッシュを使用した結果と実際上区別がつきません. 精緻化しなかったメッシュの結果は, 精緻化したメッシュを使用した結果と実際上区別がつきません.
精緻化しなかったメッシュの結果は, 精緻化したメッシュを使用した結果と実際上区別がつきません.

ヘテロ接合部の熱イオン放出境界条件のパフォーマンス向上

COMSOL Multiphysics® の以前のバージョンでは, 理想的なショットキー境界条件と同様に, 熱イオン放出境界条件のヘテロ接合部で一定値の外挿スキームが用いられています. これを行うには, 許容精度の結果を得るために境界の箇所で非常に微細なメッシュが必要となります. バージョン 5.2a では, 高次の外挿スキームが用いられ, 精度の向上が図られているので, 境界でのきわめて高密度のメッシュを必要としません.

ヘテロ接合部の連続擬フェルミ準位境界条件の機能向上

{COMSOL Multiphysics® では, 連続擬フェルミ準位境界条件を課したヘテロ接合部にフェルミ・ディラック統計法を使用できるようになりました. バージョン 5.2 以前では, 連続擬フェルミ準位境界条件はマクスウェル・ボルツマン統計法のみ有効です. バージョン 5.2a では, フェルミ・ディラック統計法も境界条件に使用でき, その結果として, 下図に示すように, 縮退領域に隣接するヘテロ接合部のモデル化精度が向上します.
ヘテロ接合部の連続擬フェルミ準位境界条件のフェルミ・ディラック統計:計算されたレベルは, ゼロレベルの予測通りです. ヘテロ接合部の連続擬フェルミ準位境界条件のフェルミ・ディラック統計:計算されたレベルは, ゼロレベルの予測通りです.
ヘテロ接合部の連続擬フェルミ準位境界条件のフェルミ・ディラック統計:計算されたレベルは, ゼロレベルの予測通りです.

隣接する電荷保存ドメインの静電気の定式化の精度向上

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a では, 隣接する電荷保存ドメインの静電気定式化が改善され, より正確な結果を得られるようになりました. 互いに隣接するさまざまなタイプの絶縁 (誘導体) 材を使ったモデルに有用です. プロットに示すように, 精度には, 隣接するドメインの異なる誘電率の影響が考慮に入れられています.
バージョン 5.2a では, 静電気フィジックス インターフェース (左) の結果と半導体モジュールの結果 (右) とが一致します.

バージョン 5.2a では, 静電気フィジックス インターフェース (左) の結果と半導体モジュールの結果 (右) とが一致します.

バージョン 5.2a では, 静電気フィジックス インターフェース (左) の結果と半導体モジュールの結果 (右) とが一致します.

スタディ設定の最適化によるバイポーラトランジスタのチュートリアルモデルの計算時間短縮

バイポーラトランジスタのチュートリアルモデルのスタディ設定が最適化され、計算時間の短縮化が図られています. 3D モデルでは, 求解に要する時間が日数単位から時間単位に短縮され, また 2D モデルでは1時間以上かかっていた求解時間が分単位になりました.