RFモジュールアップデート

COMSOL Multiphysics® バージョン5.3a の RF モジュールではマイクロ波とミリ波回路基板用の材料ライブラリが追加されました. アダプティブ周波数スイープ, エッジコネクターなどの拡張 RF パーツライブラリ, 陽的時間発展シミュレーションによる広帯域レーダー断面積 (RCR) 計算などが加わりました.

アダプティブ周波数スイープ

アダプティブ周波数スイープスタディステップは, 細かく分けられた複数の周波数の調和励起の下にある線形, または, 線形化モデルの応答を縮小次数モデルを周波数領域で計算します. 漸近波形評価 (AWE) モデル縮小化はパデ近似, または, テイラー級数展開を使ったモーメントマッチング技術によって実行され, 指定された周波数間隔で伝達関数を計算します.ポート設定に従ってデフォルトで自動的に AWE 表現が選択されますが,ユーザー定義のスカラー値表現によって AWE アルゴリズムで計算される誤差評価を指定することも可能です.

An illustration of the Adaptive Frequency Sweep study type, new with COMSOL Multiphysics 5.3a. 導波路絞りフィルター:アダプティブ周波数スイープと通常スイープのSパラメーター比較. ほぼ同じ時間で10倍細かい周波数分解能での計算が可能です.
導波路絞りフィルター:アダプティブ周波数スイープと通常スイープのSパラメーター比較. ほぼ同じ時間で10倍細かい周波数分解能での計算が可能です.


新しいアダプティブ周波数スイープスタディステップを使ったアプリケーションライブラリの例題: RF_Module/Antennas/microstrip_patch_antenna_inset RF_Module/Antennas/pifa_handheld RF_Module/Couplers_and_Power_Dividers/wilkinson_power_divider RF_Module/EMI_EMC_Applications/antenna_ebg RF_Module/EMI_EMC_Applications/frequency_selective_surface_csrr RF_Module/Filters/cylindrical_cavity_filter_evanescent RF_Module/Filters/lumped_element_filter RF_Module/Filters/notch_filter_srr RF_Module/Filters/pcb_microwave_filter_with_stress RF_Module/Filters/tunable_cavity_filter RF_Module/Filters/waveguide_iris_filter RF_Module/Passive_Devices/rf_coil RF_Module/Transmission_lines_and_Waveguides/substrate_integrated_waveguide

新RF材料ライブラリ

RF, マイクロ波, ミリ波回路基板のモデル化に役立つ60以上の基板材料が材料ライブラリに加わりました.


エッジコネクターの加わったRF パーツライブラリアップデート

RF パーツライブラリにSignal Microwave からのエッジコネクターが加わりました. これらは高速接続と高データーレートの RF 部品のモデリングに役立ちます.


A CPW circuit board model. エッジコネクターテスト回路基板:共平面導波路 (CPW) 回路基板のどこに電場が集中しているかを示すデシベルスケールの電場ノルム (コンター) プロットと電場の矢印プロット (表面).
エッジコネクターテスト回路基板:共平面導波路 (CPW) 回路基板のどこに電場が集中しているかを示すデシベルスケールの電場ノルム (コンター) プロットと電場の矢印プロット (表面).
非埋蔵ポート

非埋蔵Sパラメーターの位相は伝播定数と doffset の値を使って計算されたSパラメーターから調整することができます. この非埋蔵機能はdoffsetが非ゼロの値に設定されると機能し, Sパラメーターの位相がユーザー指定のオフセット値でスケール化されます. ポート境界と doffset によって射影される境界の間のドメインは真直ぐであること, 断面形状が一定のままであること, が仮定されています.

A screenshot of the COMSOL Multiphysics GUI showing a de-embedded port plane. 非埋蔵ポート平面(長い青色長方形部分). この部分でSパラメーターの位相がオフセット設定値によってスケール化されます.
非埋蔵ポート平面(長い青色長方形部分). この部分でSパラメーターの位相がオフセット設定値によってスケール化されます.
スリットポート可視化: さらに直感的な矢印方向

パワー流れの方向を示す新しい矢印可視化が導入されました.

A demonstration of the Toggle Power Flow Direction button in COMSOL Multiphysics 5.3a. 「パワー流れ方向切替」ボタンをクリックすると内部スリットポート上のパワー流れの方向を切り替えることができます.
「パワー流れ方向切替」ボタンをクリックすると内部スリットポート上のパワー流れの方向を切り替えることができます.
増強されたフィジックス制御メッシュ

新しいフィジックス制御メッシュは周波数を入力引数とする補間関数で決められる材料特性を解析し, 適切なサイズのメッシュを生成します.

増強されたアプリケーションライブラリモデル可視化

いくつかのアプリケーションライブラリの例題を新しく導入されたポストプロセス機能を使って更新しました. これによりポストプロセスの可視化と解析プロセスを補強します.

A demonstration of the annotated microstrip patch antenna model. マイクロストリップパッチアンテナモデルが注記機能とともに更新されました.
マイクロストリップパッチアンテナモデルが注記機能とともに更新されました.

アプリケーションライブラリパス:

RF_Module/Antennas/microstrip_patch_antenna_inset

A demonstration of isosurfaces in the microstrip patch antenna model. 等値面を加えて更新されたマイクロストリップパッチアンテナモデル.
等値面を加えて更新されたマイクロストリップパッチアンテナモデル.

アプリケーションライブラリパス:

RF_Module/Antennas/microstrip_patch_antenna_inset

A demonstration of using the 3D Grid data set in the mobile device antenna model. 「3Dグリッド」データセットを用いた遠方場の可視化を加えて更新されたモバイルデバイスアンテナモデル.
「3Dグリッド」データセットを用いた遠方場の可視化を加えて更新されたモバイルデバイスアンテナモデル.

アプリケーションライブラリパス:

RF_Module/Antennas/pifa_handheld

新チュートリアルモデル: 陽的時間発展フィジックスインターフェースとFFTを用いた高帯域 RCS 計算

このモデルは散乱体のレーダー断面積 (RCS) を電磁波 (陽的時間発展) インターフェースを使って高帯域で計算する方法を示します. 時間的に変調されるガウス波形パルスを背景場とした散乱場定式化で問題を解きます. シミュレーション結果は周波数領域と時間領域での散乱場と, 周波数領域での単位円当りの RCS を示します.

A plot from the RF Module tutorial model for calculating RCS. デシベル表示の 300MHz における単位長当りの準静的RCS.
デシベル表示の 300MHz における単位長当りの準静的RCS.

アプリケーションライブラリパス:

RF_Module/Scattering_and_RCS/rcs_time_explicit

連結解スタディ拡張ステップを用いたデータ細分化

連結解スタディ拡張ステップが結果の不要な部分を取り除きます. 例えば, 時間-周波数 FFT 変換後の周波数スペクトルにおいて, 最初と最後の5パーセントの周波数成分をユーザー定義式で取り除くことができます.


新しい「連結解」スタディステップを使った例題のアプリケーションライブラリパス:

RF_Module/Filters/coaxial_low_pass_filter_transient

RF_Module/Scattering_and_RCS/rcs_time_explicit

ヘルムホルツ方程式を満たすガウシアンビーム背景場

ガウシアンビーム背景場が新しくなりました. ガウシアンビームの焦点面が主伝播方向周りに分布する波動ベクトル方向に伝播する平面波の和で近似されます. この方法の長所は近軸近似の方法に比べてヘルムホルツ方程式の真の解であることです. 平面波がヘルムホルツ方程式の解であるからです. その名の通り, 近軸近似はヘルムホルツ方程式の近似解に過ぎないので, 広角で収束するガウシアンビームに適用することはできません.


境界モード解析の新しい有効屈折率変数

境界モード解析を実行する際に, モードの有効屈折率の変数が新たに加わりました. 変数名は <phys>.neff_<x> のようになります. <phys> がフィジックスインターフェースタグで <x> がポート名を表します.