半導体モジュールアップデート

COMSOL Multiphysics® バージョン5.3a の半導体モジュールでは準フェルミ準位離散化オプションの新しいスタディ, 電力駆動ターミナルが加わり, チュートリアルが更新されました. 詳細は以下をご覧ください.

半導体平衡スタディ

新しいスタディステップ, 「半導体平衡」が半導体フィジックスインターフェースに導入されました. この新しいスタディで平衡状態にある系や, 非平衡状態の系の初期条件を計算することができます.

A cropped screenshot of the Model Wizard in COMSOL Multiphysics version 5.3a. 新しい半導体平衡スタディステップを示すモデルウィザード.
新しい半導体平衡スタディステップを示すモデルウィザード.

準フェルミ準位定式化

準フェルミ準位を電荷キャリアの従属変数として使う新しい離散スキームが加わりました. 準フェルミ準位定式化は, 極低温半導体デバイスなどのモデル化における高度に非線形な方程式系を解くための代替手段です.

電力駆動ターミナル

金属コンタクト境界条件に新しくターミナル電力を指定するオプションが電圧駆動, 電流駆動, 回路接続などのオプション群に加わりました.

捕獲機能

捕獲機能が拡張されて初期捕獲占有率と縮退度を離散, または, 連続エネルギー準位サブノードで入力できるようになりました. エネルギー離散化, エネルギー範囲, エネルギー軸上メッシュ点数も各々の連続エネルギー準位サブノードで詳細設定できるようになりました. 拡張された機能のおかげで, 複雑な捕獲特性のダイナミクスのある系を解析するフレキシビリティが増えました.

シュレーディンガー方程式用 PML

外向き波の開放境界条件に加えて, 完全整合層 (PML) 機能がシュレディンガー方程式インターフェースに加わりました. 定常解析における外向き波の吸収をモデル化します. 様々な散乱現象の解析に役立ちます.

新しいチュートリアル:ボーズ・アインシュタイン凝縮のGross–Pitaevskii 方程式

このチュートリアルモデルは, 高調波捕獲におけるボーズ・アインシュタイン凝縮の基底状態の Gross–Pitaevskii 方程式を半導体モジュールのシュレディンガー方程式インターフェースを使って解きます. この方程式は基本的には局所的な粒子密度に比例するポテンシャルエネルギー分布の非線形単粒子シュレディンガー方程式です. この種の非線形固有値問題を固有値解析するのは通常は適していません. その代わり, 定常解析において, 波動関数の規格化を強制するグローバル方程式を一緒に解き, 基底状態解を求めます. 多粒子の結果はトーマス・フェルミ近似とよく一致します.

 
ボーズ・アインシュタイン凝縮の蒸発の可視化. 粒子数減少のシーケンスをGross-Pitaevskii 方程式を解いて解析します. 結果はアニメーションで表示します.


アプリケーションライブラリパス:
Semiconductor_Module/Quantum_Systems/gross_pitaevskii_equation_for_bose_einstein_condensation

新しいチュートリアル:1D MOSCAP 小信号

金属-シリコン酸化物 (MOS) 構造は多くのシリコン平面デバイスの基礎になっています. その容量測定によりそのようなデバイスの動作原理を洞察することができます. このチュートリアルでは簡単なMOS容量 (MOSCAP) の1Dモデルを構築します. 低周波数と高周波数の C-V 曲線を小信号解析のアプローチで計算します. このモデルはバージョン5.3aで新しく導入された準フェルミ準位定式化と半導体平衡スタディステップを使います.

A plot from the MOSCAP 1D Small Signal tutorial model. 低周波数と高周波数のC-V曲線.
低周波数と高周波数のC-V曲線.

アプリケーションライブラリパス:
Semiconductor_Module/Device_Building_Blocks/moscap_1d_small_signal

パフォーマンス改善とバグ修正

  • 不完全イオン化の有限体積法定式化, 空間変化する電子のアフィニティとバンドギャップ, 熱平衡条件との整合性などの改良
  • ユーザー定義ショットキーバリア高さの定義による, 金属コンタクトでの電気ポテンシャルの自動拘束値設定
  • 低温での高フィールド易動度モデルの改善
  • 全てのドーピングプロファイルにおける連続性パラメータースケーリングの整合性改善
  • バンドギャップ狭帯化 (FVM および FEM) 定式化, 位置依存バンドギャップ (FVM), 温度勾配によるキャリア拡散 (FVM) でバグフィックス
    • MOSFET チュートリアルのバンドギャップ機能でバグフィックス
  • 有限要素対数定式化のフェルミ・ディラク変数の定義を修正
  • 金属コンタクト境界条件におけるユーザー定義ショットキーバリア高さの定式化を修正

チュートリアルモデル改善

MOSFET シリーズチュートリアル

MOSFET のチュートリアルシリーズを粗めのユーザー定義メッシュで高速化しました. このシリーズのモデルは改良されたバンドギャップ狭帯化効果を含みます. これにより粗いメッシュでも精度が向上しています.

一般的なモデル高速化

より効率的なメッシュとパラメトリックスイープ設定で多くのモデルが更新されています. 最大10倍の高速化が得られています.

  • MOSFET シリーズチュートリアル
    • MOSトランジスターのDC特性
    • MESFET のブレークダウン
    • MOSFET の易動度モデル
    • MOSFET の小信号解析
  • イオンセンシティブ電界効果トランジスターシミュレーション
  • • GaAs p-n ジャンクション赤外 LED ダイオード
  • PN-ダイオード回路
  • Caughey Thomas 易動度
  • ロンバルディ表面易動度
  • 浮遊ゲートEEPROM デバイスのプログラミング
  • MESFET の DC 特性

アプリケーションライブラリカテゴリーの再編成

デバイスカテゴリーが次の4つのカテゴリーになりました:

  1. デバイスビルディングブロック
  2. フォトニックデバイスおよびセンサー
  3. 量子系
  4. トランジスター