音響モジュールアップデート

音響モジュールをご使用の場合, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a では, 超音波のモデル化のための不連続ガラーキン法に基づく新しいインターフェース、小型ダクトの伝播モードと非伝播モード解析のための新しいインターフェース, ラウドスピーカー解析のための新しい指向性プロットタイプ等, 多彩な機能が強化されています. 音響モジュールの新機能についての詳細は, 以下のとおりです.

大規模な時間依存性音響波シミュレーションのための不連続ガラーキン法

時間領域における大規模音響シミュレーションの効率的なモデリング

音響モジュールでの陽的ソルバーによる, 時間領域における大規模な音響シミュレーションのための全く新しいインターフェースが追加されました. このインターフェースは, 不連続ガラーキン法 (DG-FEM または DGとも言います) に基づき, 時間陽的なソルバーを使用する, 非常にメモリ効率の高い方法です. この新しいインターフェースの名前は 対流波方程式、時間陽的 インターフェースと言い, モデル化したいフィジックスの選択時にモデルウィザードページの新しい Ultrasound (超音波) ノードから利用できます.

吸収 (スポンジ) 層をメッシュ化ドメインとして示した, 圧力パルスの静止画像. 吸収 (スポンジ) 層をメッシュ化ドメインとして示した, 圧力パルスの静止画像.
吸収 (スポンジ) 層をメッシュ化ドメインとして示した, 圧力パルスの静止画像.

このインターフェースは, 波長に比例して距離が大きくなる定常バックグラウンド流の有無に関わらず, 過渡的線形音響の問題を求解するために使用します. 用途分野としては, 超音波流量計, 超音波距離センサー, および TOF (タイムオブフライト) が重要なパラメーターであるその他の超音波センサーなどがあります. また, 超音波を使用した用途に限定されず, 室内音響や自動車の車室内の過渡的な音声パルス伝播も用途に含めることができます.

また, 対流波方程式, 時間陽的 インターフェースには関連機能 吸収層ドメインがあり, 無反射境界条件と似た関数によって無響環境を模すために使用します. このインターフェースは, 音圧および音速摂動を依存変数とする, 断熱状態方程式を仮定して線形化オイラー方程式を解きます. バックグラウンド流は, 速度勾配が小から中程度の任意の定常流とすることができます. 損失メカニズムはインターフェースに含まれていません.

ここに示すモデルは, 2 MHz の信号が平均速度 10 m/s で流路を伝播する超音波流量計 (TOF構成) です. この 3D モデルは, 音響モジュールのアプリケーションライブラリ (汎用TOF構成の超音波流量計) で利用することができ, 自由度 (DOF) は1600万, メモリ使用量は 10 GB の RAMです.

新しい不連続ガラーキン法と 対流波方程式, 時間陽的 インターフェースの使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Acoustics_Module/Ultrasound/ultrasound_flow_meter_generic

新しい 対流波方程式, 時間陽的 インターフェースと吸収層ドメイン機能の併用を例示するアプリケーションライブラリへのパス:

Acoustics_Module/Tutorials/gaussian_pulse_absorbing_layers

 
モデル対称面の連続正弦波圧力パルスを示す動画.
 
この動画では, 変形を追加したモデルの対称面のガウス圧力パルスを示しています. メインフローチャネルの左右の吸収層で音波が吸収されます.

新しい 対流波方程式、時間陽的 インターフェース

新しい 対流波方程式, 時間陽的 インターフェースには, 以下のドメイン条件と境界条件があります.

Convected Wave Equation Model (対流波方程式モデル): モデルの支配方程式を定義します.

Sound Hard Wall (反射壁): 反射境界 (壁) を定義します.

Initial Values (初期値): 依存変数の初期値を設定します.

Domain Sources (ドメインソース): 流体にかかる外力をモデル化するためのドメインソースを追加します.

Pressure (圧力): 外部境界にある圧力源を定義します.

Symmetry (対称): モデルに対称形がある場合に適用します.

Normal Velocity (法線速度): 例えばトランスデューサなどの振動面を表す, 外部境界にある発生源を定義します.

Acoustic Impedance (音響インピーダンス): インピーダンス条件をモデル化するため, または単純輻射条件として使用します.

General Flux/Source (一般流束/発生源): DG フレームワークで一般化された流束を外部境界に設定します.

General Interior Flux (一般内部流束): DG フレームワークを考慮に入れた, 一般化された内部流束条件を設定します.

新しい吸収層ドメイン条件

吸収層 (スポンジ層とも言います) を使い, 計算上のドメインを除きます. 吸収層ドメイン機能は, 以下の3つの機能を組み合わせて使用します.

  1. 伝播波の速度を遅くするスケーリングシステム.
  2. 高周波成分を除去する吸収層ドメインのフィルターリング.
  3. 外部一次無反射条件 (インピーダンス条件).

これらを組み合わせることで, 不要反射波の振幅を最大1000分の1まで低減することができます. ここに示すのは, 新しい「2D 等流のガウス形パルス」の動画です. 外側に向かう伝播音響パルスが吸収層に吸収される, 対流波方程式と吸収層チュートリアルモデル.

新しい吸収層ドメイン機能の使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Acoustics_Module/Tutorials/gaussian_pulse_absorbing_layers

 

"ガウス形パルス...吸収層"チュートリアルモデルの圧力パルスの動画. 左: 吸収層を含む, 計算領域全体の動画. 右: 物理領域のみ.

新しいチュートリアルモデル: 汎用 TOF (タイムオブフライト) 構成の超音波流量計

移動する流体の速度を把握することは, 流体を使い材料やエネルギーを輸送するあらゆる場合に重要となります. 流速を求めるためのTOF (タイムオブフライト) または遷移時間法では, 配管内のメインフローに超音波信号を伝播させ, その速度を非侵襲的に求めます. メインフローに対して所定の角度で信号を伝播させることで, 超音波信号がメインフローの順方向に伝播する場合は音速よりも速くなり, 逆方向に伝播する場合は音速よりも遅くなります. 2つの方向の伝播時間の差分は, メインフローの流速が速くなるほど大きくなります. このタイプの流量計には多くの用途がありますが, 特に工業用途に使用されています.

このチュートリアルモデルでは, 音響モジュールで汎用湿式遷移時間超音波流量計をシミュレートする方法について説明しています. このモデルの設定では, 流体を下流方向に伝播する信号の遷移について解を求めます. このモデルは, まず CFD モジュールを使って流量計の安定状態のバックグラウンド流を計算します. 上流方向に伝播する信号については, 事前に計算されており, データとしてインポートされます. 到着時間の差分を使い, メインフローの流速を概算します. 過渡的な高周波状況に最適化されている, Ultrasound (超音波) ノードにある 対流波方程式, 時間陽的 フィジックスインターフェースが使用されます。 このインターフェースは, 不連続ガラーキン法 (DG-FEM) に基づいています.

アプリケーションライブラリへのパス:

Acoustics_Module/Ultrasound/ultrasound_flow_meter_generic

注: このモデルには, 音響モジュールの他に, CFD モジュールまたは伝熱モジュールが必要です.

Pressure distribution of the transmitted signal, depicted in the symmetry plane of the flow meter, at time t = 5 ms. Pressure distribution of the transmitted signal, depicted in the symmetry plane of the flow meter, at time t = 5 ms.
The average pressure at the receiver for a pulse moving downstream and a pulse moving upstream. The time difference is used to calculate the average flow speed in the main channel. The average pressure at the receiver for a pulse moving downstream and a pulse moving upstream. The time difference is used to calculate the average flow speed in the main channel.

左: 流量計の対称面で表した, 時間 t = 5 ms における伝播信号の圧力分布. 右: 下流方向に伝播するパルスと上流方向に伝播するパルスの受信器における平均圧力. 時間差を使い, メインチャネルの平均流速を計算します.

新しいチュートリアルモデル: 2D 一様流のガウス形パルス

対流波方程式と吸収層

この小規模なチュートリアルは, 線形化したオイラー的座標系について, 無反射条件およびスポンジ層の標準試験およびベンチマークモデルをシミュレートします. シミュレーションでは, 2D 等流の遷移ガウス形パルスを伝播します. 対流波方程式、時間陽的 インターフェースは, 断熱状態方程式で線形化オイラー方程式の解を求め, 吸収層機能を使い無限領域をモデル化します.

計算領域の中心部の初期ガウス分布によって音響パルスが生成されます. このパルスは, 高マッハ数の等流で伝播します. 問題に対する解析解が存在し, 解の妥当性評価に用いられ, 非常に良好な一致を得られます. このモデルでは, 吸収層の設定方法と使用方法も示されます. このような吸収層を使用することで, 不要反射波を入射場振幅の 1/1000 に低減することができます.

アプリケーションライブラリへのパス:

Acoustics_Module/Tutorials/gaussian_pulse_absorbing_layers

The acoustic particle velocity of a convected Gaussian pulse as it impinges on the absorbing layer. The acoustic particle velocity of a convected Gaussian pulse as it impinges on the absorbing layer.
Comparison of the pressure profile of the COMSOL Multiphysics® model (blue line) and the analytical solution (green dots) in a cross section along the x-axis. The spike to the right represents the pulse inside the absorbing layer and has no physical meaning. Comparison of the pressure profile of the COMSOL Multiphysics® model (blue line) and the analytical solution (green dots) in a cross section along the x-axis. The spike to the right represents the pulse inside the absorbing layer and has no physical meaning.
吸収層衝突時の対流ガウス形パルスの音響粒子速度. X軸上の断面の COMSOL Multiphysics® モデル (青線) と解析解 (緑色の点) の圧力プロファイルの比較. 右側のスパイクは吸収層内のパルスを表し, 物理的意味はありません.

新しい 熱粘性音響, 境界モード フィジックスインターフェース

幾何学的寸法が小さいスマートフォン等の小型電子装置の音響解析では, 壁近傍の境界層に存在する現象のため, 粘性損失や熱伝導の影響が重要となります. これらの層の厚さを, 粘性および熱の進入深さと言います. 熱粘性音響, 境界モード インターフェースは, 導波管やダクトの伝播モードと非伝播モードを計算して特定します. このインターフェースは, 境界, 入口, 導波管の断面, または幾何学的寸法の小さなダクトに境界モード解析を行います. 壁近傍の音響境界層で重要な影響を与える, 熱損失と粘性損失についても解析されます. インターフェースは, 圧力, 速度, 温度の音響変化について解を求め, また計算されたモードの面外波数も解析します.

An example of analysis of a 0.5-mm-by-2-mm waveguide. The plot shows the pressure for the first 3 modes at 100 Hz. An example of analysis of a 0.5-mm-by-2-mm waveguide. The plot shows the pressure for the first 3 modes at 100 Hz.
An example of analysis of a 0.5-mm-by-2-mm waveguide. The plot shows the out-of-plane acoustic velocity for the first 3 modes at 100 Hz. An example of analysis of a 0.5-mm-by-2-mm waveguide. The plot shows the out-of-plane acoustic velocity for the first 3 modes at 100 Hz.
An example of analysis of a 0.5-mm-by-2-mm waveguide. The plot shows acoustic temperature variations for the first 3 modes at 100 Hz. An example of analysis of a 0.5-mm-by-2-mm waveguide. The plot shows acoustic temperature variations for the first 3 modes at 100 Hz.
0.5 mm × 2 mm 導波管の解析例。 プロットは, 100 Hzでの最初の3つのモードの圧力を示します. 0.5 mm × 2 mm 導波管の解析例. プロットは, 100 Hzでの最初の3つのモードの面外音響速度を示します. 0.5 mm × 2 mm 導波管の解析例. 100 Hzでの最初の3つのモードの圧力 (左), 面外音響速度 (中央), 音響温度変化 (右) がプロットに示されています. 最初の (伝播) モードは波数 kn = 2.58-1.31i 1/m でジオメトリ表面に適用した画像, 次の2つはそれぞれ波数 2970.6-7134.7i と 2904.8-7635.9i のエバネッセントモードです. カラーのスケールは同じではありません.

補聴器やモバイルデバイス等, 小型ダクトがあるシステムの他にも, 熱粘性音響, 境界モード インターフェースを使い, ダクト断面の伝播波数と特性インピーダンスを識別することができます. この情報は, 解析の次のステップで, 圧力音響、周波数領域 インターフェースの均質化された狭領域音響機能への入力として使用することができます.

このインターフェースは, 3D および 2D 軸対称モデルで利用でき, 境界に適用されます. インターフェースは, 静止背景条件下で, 線形化されたナビエ・ストークス方程式によって定義された方程式を解き (線形化連続性方程式, 運動量方程式, エネルギー方程式), 所定の周波数での面外波数を検索します.

熱粘性音響のバックグラウンド音場 (散乱場の形成)

熱粘性音響 インターフェースに散乱場形成オプションが加わりました. この機能を使い, バックグランド音場をモデルに追加することができます. バクグラウンド音場は, ユーザー定義 または 平面波 定式化とすることができます.

ユーザー定義 の場合, 圧力, 音響速度, 温度変化の計算式を定義します. これらは, バックグラウンド音場を定義する別の音響モデルの解から得ることもできます. Plane wave (平面波) オプションは, 物理的に矛盾のない粘性減衰と熱減衰を持つ平面進行波を定義します. この新しい機能を使い, 熱損失と粘性損失が重要となる伝送の問題をモデル化する場合に簡単な発生源を作成したり, 小型の物体 (音響境界層と比べて小さい) の散乱を調べることができます.

高度な応用例として, この機能を 熱粘性音響, 境界モード インターフェースと併用して, 導波管の入口に発生源を作成することができます.

熱粘性音響機能での新しいバックグラウンド音場の使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Acoustics_Module/Tutorials/transfer_impedance_perforate

新しいバックグラウンド音場機能を使い片側の入射場を適用した, 多孔板伝達インピーダンスチュートリアルモデルから得られた結果.
カラープロットは多孔板の孔内部の音響速度を示し, またラインプロットは, 準解析的モデルと比較し COMSOL Multiphysics® によって計算された伝達インピーダンスを示します. 新しいバックグラウンド音場機能を使い片側の入射場を適用した, 多孔板伝達インピーダンスチュートリアルモデルから得られた結果. カラープロットは多孔板の孔内部の音響速度を示し, またラインプロットは, 準解析的モデルと比較し COMSOL Multiphysics® によって計算された伝達インピーダンスを示します.
新しいバックグラウンド音場機能を使い片側の入射場を適用した, 多孔板伝達インピーダンスチュートリアルモデルから得られた結果. カラープロットは多孔板の孔内部の音響速度を示し, またラインプロットは, 準解析的モデルと比較し COMSOL Multiphysics® によって計算された伝達インピーダンスを示します.

新しいチュートリアルモデル: 多孔板の伝達インピーダンス

多孔板は, 微細孔を均質にあけた薄板です. マフラーシステムや吸音板の他, ライナーとして広く使用されており, 正確な減衰制御が重要となります. 微細孔の小型化が進むに従い, 粘性損失と熱損失が益々重要になります. 減衰挙動は, 周波数にも依存しますが, 多孔板の孔サイズと孔分布を選択することで制御できます.

多孔板については長年にわたり理論的に研究されてきましたが, 解析的または準解析的モデルは単純なジオメトリにしか適用することができません. 穴の断面が多様なシステムやテーパー型の穴形状, あるいは穴の分布が均質でない場合には, 数値的アプローチが必要となります.

このチュートリアルモデルでは, 熱粘性音響、周波数領域 インターフェースを使って影響をモデル化します. 高音部や流体がある (微細孔の中または上を通過する) 箇所では非線形の損失メカニズムが発生しますが, このチュートリアルモデルでは粘性および熱伝導による線形効果のみ調査します. システムの伝達インピーダンス, 表面ノーマルインピーダンス, 減衰係数を求めます. 伝達インピーダンスを準解析的モデルと比較します. この詳細なモデルで計算した伝達インピーダンスを, 圧力音響, 周波数領域 インターフェースの既存の内部インピーダンス条件を用いた大型システムのシミュレーションに適用することができます.

アプリケーションライブラリへのパス:

Acoustics_Module/Tutorials/transfer_impedance_perforate

Comparison of the transfer impedance of the perforated plate, modeled with the Acoustics Module, and a semianalytical model. The graph shows the real, imaginary, and absolute values of the transfer impedance. Comparison of the transfer impedance of the perforated plate, modeled with the Acoustics Module, and a semianalytical model. The graph shows the real, imaginary, and absolute values of the transfer impedance.
Acoustic temperature fluctuations inside the perforation. The thermal boundary layer is clearly visible. Acoustic temperature fluctuations inside the perforation. The thermal boundary layer is clearly visible.

左: 音響モジュールを使いモデル化した多孔板と準解析的モデルの伝達インピーダンスの比較. グラフは, 伝達インピーダンスの実数値, 虚数値, 絶対値を示します. 右: 微細孔内部の音響温度変動 熱境界層がはっきり見えます.

熱音響の新しい名前: 熱粘性音響

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a では, 熱音響 インターフェースの名称がすべて 熱粘性音響 に変わりました. これらのインターフェースは, 幾何学的寸法が小さい場合の問題, すなわち熱音響境界層と粘性音響境界層の損失が重要となる問題における熱音響損失と粘性音響損失を詳細にモデル化するための専用インターフェースです. このようなケースの例として, マイクロホン, モバイルデバイス, 補聴器, ミニチュアトランスデューサ等のモデル化があります. 熱音響 とは, 音響の既存の一分野で用いられる用語で, 音響波を使用した冷却や加熱が対象となります. このため, これらのインターフェースがモデル化するフィジックスを表す用語として, 熱粘性音響 の方が適しています.

以下のインターフェースは名称が新しくなりました.

  • 熱粘性音響、周波数領域

  • 熱粘性音響、境界モード (新しいインターフェース)

  • 音響-熱粘性音響連成、周波数領域

  • 熱粘性音響-構造連成、周波数領域

新しい指向性プロット

音響工学の用途に新しい指向性プロットタイプを使い, ラウドスピーカーの空間応答を周波数と角度両方の関数として表すことができます. ラウドスピーカーや電子音響変換素子の解析において, プロットが重要となります. この方法で空間応答を表すことは, ラウドスピーカー業界では非常に一般的に行われており, 測定データもこれと同じ方法で表されることがよくあります. プロットには, モデル化したデータに対する洞察力を最大限に高めるための多彩なフォーマット設定オプションがあります. 主要なフォーマット機能には以下のものがあります.

  • 正規化: 入力音圧レベルデータは, 具体的な極角または (各周波数での) 最大値に基づき正規化することができ, また正規化を行わないこともできます.
  • 評価: 空間の任意の箇所に評価サークルを定義することができ, 0°の方向が設定される基準方向を定義することが可能です.
  • カラーとスタイル: 塗りつぶし, 線などデータの書式を指定したり, ラベルを追加します. また, 軸のレイアウトを簡単に切り替えることができ, 周波数を x 軸上に表示したり y 軸上に表示できます.
An example of a Directivity plot where the data is normalized with respect to 30 degrees, the frequency is on the x-axis, and labels have been added to the plot.

An example of a Directivity plot where the data is normalized with respect to 30 degrees, the frequency is on the x-axis, and labels have been added to the plot.

An example of a Directivity plot where the data is normalized with respect to 0 degrees, the frequency is on the y-axis, and labels have been added to the plot.

An example of a Directivity plot where the data is normalized with respect to 0 degrees, the frequency is on the y-axis, and labels have been added to the plot.

データを 30 度に基づき正規化, 周波数を x 軸上に表示, プロットにラベルを追加した, 指向性プロット例 (左). 同じデータ正規化を 0 度で適用して, 周波数を y 軸上に表示 (右).

線形化ナビエ・ストークスとオイラーのバックグラウンド音場 (散乱場の形成)

線形化ナビエ・ストークス, 周波数領域線形化オイラー, 周波数領域 インターフェースで, 散乱場形成オプションを利用できるようになりました. このオプションを使い, バックグランド音場をモデルに追加することができます. バックグラウンド音場は, ユーザー定義による圧力, 音響速度, 温度変化の計算式として入力することができます. これは, 特定のタイプの波を定義する解析的表現でも, 別の音響モデルの解でも構いません.

線形化オイラー インターフェースでは入射音響場機能と呼ばれていた機能を更新して機能を強化し, 名称もバックグラウンド音場機能に変わりました.

音線音響: 音線出力と表面の音圧レベル (SPL) の計算

音線出力のための 音線音響 インターフェースに, 新しく改善された計算機能が追加されました. 強度計算には4つのオプションがあります.

  1. Compute intensity (強度の計算)(以前の Using principal curvatures (主曲率の使用))
  2. Compute intensity and power (強度と出力の計算)
  3. Compute intensity in graded media (勾配媒質における強度を計算) (以前の Using curvature tensor (曲率テンソルの使用)) )
  4. Compute intensity and power in graded media (勾配媒質における強度と出力を計算)

音線出力オプションには, Wall (壁) 条件に Sound Pressure Level Calculation (音圧レベルの計算) を追加することができます. この新しい機能は, 吸収係数など表面特性の影響を含め, 表面の音圧レベルを計算します. Results (結果) ノードを使い, これらの変数を簡単にプロットすることができます.

音線出力と表面音圧レベルの計算例を示すアプリケーションギャラリーのエントリ:

小規模なコンサートホールの音響効果

The new ray power computational option for Ray Acoustics; the Settings window where the options for Intensity computation can be selected.

The new ray power computational option for Ray Acoustics; the Settings window where the options for Intensity computation can be selected.

A screenshot from the Small Concert Hall Acoustics tutorial model with the Sound Pressure Level Calculation node highlighted.

A screenshot from the Small Concert Hall Acoustics tutorial model with the Sound Pressure Level Calculation node highlighted.

音線音響の新しい音線出力計算オプション: Intensity computation (強度計算) のオプションを選択できる設定ウィンドウ (左) と, Sound Pressure Level Calculation (音圧レベル計算) ノードが強調表示されている 小規模なコンサートホールの音響効果チュートリアルモデル のスクリーンショット (右).

音線音響: メッシュレス音線追跡

音線音響 インターフェースでは, 媒体の特性が均質 (無勾配媒質) であれば, メッシュが不要になりました. この場合, 周囲媒質の材料パラメーターを大域的に定義することができます. 唯一の要件として, 壁や材料不連続性など, 少なくとも1つの境界条件がモデルに含まれている必要があります. メッシュ化されていないジオメトリでは, 音線は長い距離を伝播することができ, 放出音線はジオメトリモデルの外まで伝播することができます. このような特徴を, 例えば大規模コンサートホールのシミュレーションで使用することができます.

円錐ベース放出の新しいオプション

初期方向が円錐分布される光線を放出する場合に幾つかの新しいオプションを使用することができます. 各光線の立体角が同じになるように均一な密度を持つ光線を波数ベクトル空間で放出することができます. または, 光線の密度を極方向と方位角方向で別々に指定することができます. また, ビルトインオプションを使い, 軸方向光線の有無を指定してマージナル光線を放出することもできます.

圧力音響の背景圧力場と入射場における球面波と円筒波

圧力音響, 周波数領域 インターフェースでは, 背景圧力場 および 入射圧力場 機能 (輻射条件のサブノード) の機能が拡張され, 円筒波と球面波が含まれるようになりました. これにより, 複雑な入射場やバックグラウンド音場を設定しやすくなります. 外部点源や小型の振動体によってできる音場を, 単極タイプの音源によって近似することができます.

Select Cylindrical wave or Spherical wave pressure field types for pressure acoustics. Select Cylindrical wave or Spherical wave pressure field types for pressure acoustics.
A 2D scattering example; clockwise from top left is the total acoustic pressure field, total sound pressure level, the scattered pressure, and the cylindrical background pressure. A 2D scattering example; clockwise from top left is the total acoustic pressure field, total sound pressure level, the scattered pressure, and the cylindrical background pressure.

左: 円筒波 または 球面波 圧力場タイプを圧力音響に選択します. 右: 左上から時計周りに, 全音圧場, 全音圧レベル, 散乱圧, 円筒波背景圧力が示されている, 2D 散乱の例.

ラウドスピーカーの電気音響結合

新機能の追加と改善により, コイルなど, トランスデューサで使用される電磁結合の簡素化と機能拡張を図りました. このことは, ラウドスピーカー用ドライバをモデル化する場合に重要となります. コイルドメイン機能で, 3D および 2D 軸対称における速度 (ローレンツ項) がサポートされるようになりました. 構造力学アプリケーションでは, ローレンツ力の効果を物体負荷として自動的に選択することができます. この様子を, アプリケーションギャラリー およびアプリケーションライブラリのラウドスピーカー用ドライバモデルが示しています.

強化された複数巻コイルドメイン機能の利用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Acoustics_Module/Electroacoustic_Transducers/loudspeaker_driver

ラウドスピーカー用ドライバモデルには, 新しい電気音響結合があります. ラウドスピーカー用ドライバモデルには, 新しい電気音響結合があります.
ラウドスピーカー用ドライバモデルには, 新しい電気音響結合があります.

更新されたチュートリアルモデル: ラウドスピーカー用ドライバー

ラウドスピーカー用ドライバモデルが更新され, ムービングコイルと磁場間に自動電磁結合を新たに使用するようになりました. コイルドメインに速度 (ローレンツ項) が追加され, 構造境界負荷機能によってローレンツ力の効果が選択されます. この新機能により, このタイプのマルチフィジックス連成をモデル化するためのユーザー定義の方程式が不要になります.

注: このモデルには, 音響モジュールと AC/DC モジュールが必要となります.

アプリケーションライブラリへのパス:

Acoustics_Module/Electroacoustic_Transducers/loudspeaker_driver

周波数スイープの対数および ISO 推奨周波数オプション

スタディで周波数スイープを定義する際の入力方法が新たに2つ追加されました.
  1. Logarithmic (対数): 開始周波数と終了周波数, 1桁あたりの周波数の数を入力します. この機能は, COMSOL Multiphysics® で使用することができ, アドオン製品を必要としません.

  2. ISO 推奨周波数: 開始周波数と終了周波数, 目的の間隔 (オクターブ, 1/3 オクターブ, 1/6 オクターブ, 1/12 オクターブ, 1/24 オクターブ) を入力します.

    1. 1/3 オクターブの望ましい周波数の定義は, ISO 266 規格に基づきます. 1/6 オクターブ, 1/12 オクターブ, 1/24 オクターブを定義するため, 標準オプションは ISO 3 (シリーズ R20, R40, R80) の推奨値に基づく周波数に拡張されました. このオプションを使用するには, モデルビルダのツールバーで Show (表示) > Advanced Study Options (拡張スタディオプション) を選択する必要があります.

完全整合層 (PML) のアップデート

完全整合層機能にオプションが幾つか追加され, 層特性をカスタマイズできるようになりました.

  • ソルバーの Enable/disable PMLs (PMLの有効化/無効化) オプションは, 計算上の電場を散乱源とする散乱問題をモデル化する場合に有用です.
  • ユーザー定義のジオメトリタイプオプションは, PML が非標準ジオメトリを持つ場合に使用することができ, また自動 PML ジオメトリ検出に失敗した場合にも使用できます.
  • ユーザー定義の座標ストレッチング機能を選択して, PML 伸縮を定義することができます. つまり, PML 内部のスケーリングを調整して, 例えば具体的なフィジックス構成の弾性波を非常に効率的に吸収することができます.

その他の機能強化と重要なバグ修正

  • 遠方場プロットが更新され, 角度 0° を定義する基準方向を指定できるオプションが新たに加わりました.
  • 圧縮性ポテンシャル流 インターフェースの温度計算オプション.
  • 圧縮性ポテンシャル流 インターフェースに, 2つの新しい境界条件 Interior Wall (Slip Velocity)) 内壁 (すべり速度)Mean Flow Velocity Potential (平均流速ポテンシャル) が加わりました. さらに, 流体の温度場を自動的に計算するオプションが新たに加わりました. この機能は, 線形化ポテンシャル流モデルのバックグラウンド流を設定する際に使用します.
  • 熱粘性音響, 周波数領域 インターフェースに, 以下の2つの熱境界条件が新たに追加されました.
  • Heat Flux(熱流束) 条件は, パルス熱源により音響波が発生する場合に使用します.
  • Interior Temperature Variation (内部温度変化) 条件は, パルス状電流の抵抗加熱によって発生する高調波温度変化を伴う薄板などの用途のモデル化に使用します.
  • 線形化オイラー インターフェースの入射音場機能がバックグラウンド音場に改称された変更に伴い, 末尾に _i が付くすべての変数は末尾が _b になります.
  • 線形化ナビエ・ストークスと線形化オイラー インターフェースでは, 時間微分の変数の名称が p_t から pt に, u_t から ut に, rho_t から rhotに, T_t から Tt にそれぞれ変わりました.
  • 音響拡散方程式 インターフェースに, 寄与点源が2つ追加されました.

更新されたチュートリアルモデル: マイクロチャネル断面の音響ストリーミング

マイクロフルイディクスシステムの製造における近年の進歩に伴い, 生細胞等の微粒子の処理および混合が必要とされます. これは, 常流の音響放射力と粘性抵抗を使い行うことができます.

  1. ストリーミング: ナビエ・ストークス方程式の非線形項のため, 流体の調和摂動からアコースティックストリーミングと呼ばれる正味時間平均流が導かれます.
    1. アコースティックストリーミングは二次 (非線形) 音響効果であり, 2通りの方法でシミュレートできます.
      1. 非線形ナビエ・ストークス方程式を求解する直接シミュレーションによるか,
      2. または, ここに示すように時間スケールの分割により行います.
  2. 放射力: 支配方程式の非線形項のため, 音場から粒子への運動量輸送が可能です.

    1. その結果として, 粒子に作用する正味の力である音響放射力となります.

装置内の粒子の軌道は, (常流の) 粘性抵抗力と音響放射力との平衡に支配されます. このモデルでは, COMSOL Multiphysics® で音響モジュールを使い, これら両方を含めてモデル化する方法を示します.

アプリケーションギャラリーのリンク:

マイクロチャネル断面のアコースティックストリーミング

The acoustic streaming flow inside the microchannel cross section. The acoustic streaming flow inside the microchannel cross section.
 

左: マイクロチャネル断面内の音響常流. 右: 常流抵抗と放射力の影響を受ける微粒子の軌道を示す動画.

更新されたチュートリアルモデル: 熱損失と粘性損失を伴う多孔質弾性波 (Biot-Allard モデル)

空気を充填した多孔質材料に圧力波と弾性波が伝播する用途では, 熱損失と弾性損失の両方が重要となります. このことは, 室内音響のための絶縁材や車室内用ライニング材で一般的です. また, 自動車産業のマフラーの多孔質材料でも発生します.

多くの場合, 圧力音響 インターフェースに実装されている多孔性音響モデル (等価流体モデル) を使い, これらの材料をモデル化することができます. 多孔性音響モデルではすべての影響を捕捉できないため, 場合によっては多孔質マトリックスに弾性波を含める必要があります. これは, 多孔質弾性波をモデル化するための, いわゆる Biot-Allard 理論で網羅されています.

音響モジュールの 多孔質弾性波 インターフェースは, 地球科学の分野で用いられる古典的な Biot 理論に基づいています. このモデルでは, 飽和流体は液体 (水) と仮定し, 粘性損失のみ含まれています. 材料入力も, 音響絶縁材で一般的に提供されるものとは異なります. 現在のモデルは, 多孔質弾性波 インターフェースを調整して, Biot-Allard 理論で説明されている通りに熱や粘性の影響を含める方法を示しています.

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熱損失と粘性損失を伴う多孔質弾性波 (Biot-Allard モデル)

単一の多孔質層の表面ノーマルインピーダンス.
曲線には, 流体の熱損失と粘性損失が両方とも示され, また多孔質マトリックスの機械的変形も示されます. 単一の多孔質層の表面ノーマルインピーダンス. 曲線には, 流体の熱損失と粘性損失が両方とも示され, また多孔質マトリックスの機械的変形も示されます.
単一の多孔質層の表面ノーマルインピーダンス. 曲線には, 流体の熱損失と粘性損失が両方とも示され, また多孔質マトリックスの機械的変形も示されます.

更新されたチュートリアルモデル: ソニック結晶

フォノニック結晶とソニック結晶は非常に多様な技術用途が期待されることから, 科学的関心が高まっています. これらの結晶は, マトリックスに埋め込んだ散乱体の周期的分布から構成されます. 一定の条件下では, 音響バンドギャップが形成されます. これらは, 波の伝播が禁止されるスペクトル帯です.

このチュートリアルモデルは, まずソニック結晶を解析してそのバンド構造を判断します. 次に, 有限サイズの結晶の伝達損失を解析し, 結果をバンド構造と比較します.

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ソニック結晶

ソニック結晶構造内の周期的圧力場.
組み込まれているフロケ (ブロッホとも言います) 周期条件により周期性を与えています. ソニック結晶構造内の周期的圧力場. 組み込まれているフロケ (ブロッホとも言います) 周期条件により周期性を与えています.
ソニック結晶構造内の周期的圧力場. 組み込まれているフロケ (ブロッホとも言います) 周期条件により周期性を与えています.

更新されたチュートリアルモデル: バイオリンの音響-構造連成と空気の流れ

過去千年間で, バイオリンのサウンドホールは円形から細長い形状へと変化を遂げました. バイオリンから発する低音のほとんどは, このような細長い穴を通じて外へ輻射します. バイオリンは本体の振動によって高い周波数の音を出しますが, バイオリン内部の空気も共鳴します.

Application Gallery entry には2つのチュートリアルモデルが示されています. 1つ目のモデルでは, 音響構造の相互作用について, バイオリン内部の連成振動が空気モードの共鳴にどのような影響を与えるか解説しています. 2つ目のモデルは, ポテンシャル流近似を使い, 細長い穴を流れる空気とその形状にどのような関連があるかについて調べます.

これらのモデルについては, "Analyze Violin Tone and Volume with Multiphysics Modeling" という題名のブログでさらに詳細に説明されています.

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Acoustic-Structure Interaction and Air Flow in Violins

The first mode, here at 300 Hz, of a coupled violin and acoustics model. The first mode, here at 300 Hz, of a coupled violin and acoustics model.
The airflow through the f-holes in the violin. The flow is simulated as a potential flow. The airflow through the f-holes in the violin. The flow is simulated as a potential flow.

左: バイオリンの音響との連成モデルの最初のモード (ここでは 300 Hz). 右: バイオリンのF字孔を通る空気の流れ. この流れはポテンシャル流れとしてシミュレートされています.

更新されたチュートリアルモデル: 熱弾性音響におけるエネルギー保存性

小さな寸法を持つ構造物に伝播する音は, 壁近傍の粘性損失と熱損失の影響を受けます. このような構造物の音響挙動をモデル化する際には, これらの損失を含める必要があります.

このチュートリアルモデルでは, 入口と出口があり, 内部にヘルムホルツ共鳴器を備えた, 非常に細いネック部を持つ概念的テストセットアップにおけるエネルギー保存性について調べます. 細いネック部の音響については, 熱弾性音響 インターフェースを使いモデル化し, 熱損失と粘性損失を詳細に解析します. このモデルは, エネルギー保全を調べて検証するために, 音響境界層の総散逸エネルギーと, システムの総入力エネルギーから出力エネルギーを引いた値とを比較します.

熱音響理論については, "Theory of Thermoacoustics: Acoustics with Thermal and Viscous Losses(熱音響理論: 熱損失と粘性損失を伴う音響)"という題名のブログでさらに詳細が示されています.

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熱音響におけるエネルギー保存性

更新されたチュートリアルモデル: インピーダンス境界条件を課した音響サブコンポーネントの集中化

このチュートリアルでは, 音響モジュールで物理的に矛盾のない簡略化モデルを導出するモデル化アプローチについて説明しています. このアプローチでは, 複雑なサブコンポーネントをインピーダンス境界条件に変換し, これ以外は簡単な音響をモデル全体に使用します. こうすることで, 計算速度をかなり高速化できます.

この例では, メインダクトとヘルムホルツ共鳴器 (サブコンポーネント) からなる簡略化されたマフラー状のシステムから構成されます. 粘性損失と熱損失が重要となるので, 共鳴器の音響のモデル化には粘性音響を用いています. ここでは, 熱粘性音響ドメインにインピーダンスモデルを集中させることを目的とします.

チュートリアルモデルでは, 複雑な音響モデルでインピーダンス境界条件を導出する方法と, 新しい簡略化モデルでこのインピーダンスを呼び出す方法について, 手順を追って説明しています. さらに, 最適化モジュールを使い, 導出したインピーダンスを RCL モデルに適合させる方法についても詳細に説明しています. ドキュメントでは, この2つ目のアプローチを用いることで, モデル化したシステムへの洞察を深められることが説明されています.

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インピーダンス境界条件を課した音響サブコンポーネントの集中化