MEMSモジュールアップデート

MEMS モジュールをご使用の場合, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a では, ピエゾ抵抗インターフェースが更新されており, またセンサーやアクチュエーターをモデル化するための新しい 磁歪 インターフェース, 粘着と剥離をモデル化する機能等, 機能が強化されています. MEMS モジュールのアップデートの詳細は, 以下のとおりです.

新しい 磁歪 インターフェース

新しい磁歪インターフェースが導入されました. この機能を使い, 磁歪の原理に基づき広範囲のセンサーやアクチュエーターをモデル化することができます. 磁歪効果の一つであるジュール効果は, 材料の磁化状態が変化することで生じる長さの変化を表します. この効果は, ソナー, 音響装置, 能動制振装置, 位置制御装置, 燃料噴射装置などの用途でトランスデューサーに用いられています. 逆磁歪効果は, 材料の機械的応力により磁化が変化することです. この効果はビラリ効果として知られ, センサーに有用です.

磁歪インターフェースをモデルに追加すると, 個体力学インターフェース, 磁歪インターフェース, 磁歪マルチフィジックス連成または一連のノードが作成されます. 個体力学インターフェースには新しい材料モデル磁歪材料が追加されており, 3種類の定式化線形, 非線形等方性非線形立方晶が提供されています. 磁歪インターフェースでは, 磁歪材料をモデル化する際に, 新しいアンペアの法則, 磁歪機能が用いられます.

非線形等方性材料モデルを用いた新しい 磁歪 インターフェースの使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Structural_Mechanics_Module/Magnetostrictive_Devices/nonlinear_magnetostriction

ピエゾ抵抗フィジックスインターフェースをマルチフィジックス連成にアップグレード

ピエゾ抵抗効果の3つの専用フィジックスインターフェース (ピエゾ抵抗, ドメイン電流 インターフェース, ピエゾ抵抗, 境界電流 インターフェース, ピエゾ抵抗, シェル インターフェース) がアップグレードされ, Multiphysics (マルチフィジックス) ノードに対応するようになりました. モデルウィザードの <2622>Select Physics<2623> Select Physics(フィジックスの選択) ツリー表示の外観は以前と同じです. また, 3つのマルチフィジックス連成は, 同じ名前で Structural Mechanics <2624> Piezoresistivity (構造力学 - ピエゾ抵抗) の同じ場所にあります. 新しいマルチフィジックス連成では、構成フィジックスインターフェースごと、あるいはフィジックス間の連成ごとに有効/無効を切り替える柔軟性が提供されています. ピエゾ抵抗効果は機械的応力から電気伝導性への一方向連成なため、各ケースでデフォルトにより Electric Currents (電流) ノードに Piezoresistive Material (ピエゾ抵抗材料) ノードが新たに追加されています. Select Physics (フィジックスの選択) ウィンドウには、 Structural Mechanics <2649> Piezoresistivity (構造力学 - ピエゾ抵抗) に3つのピエゾ抵抗マルチフィジックスインターフェースが表示されます.

新しいマルチフィジックス連成では、構成フィジックスインターフェースごと, あるいはフィジックス間の連成ごとに有効/無効を切り替える柔軟性が提供されています. ピエゾ抵抗効果は機械的応力から電気伝導性への一方向連成なため, 各ケースでデフォルトにより Electric Currents (電流) ノードに Piezoresistive Material (ピエゾ抵抗材料) ノードが新たに追加されています.

既定速度と加速の調和摂動

既定速度と既定加速機能に Harmonic Perturbation (調和摂動) サブノードが加わりました. これらの境界条件を定常スタディステップで固定制約として使用でき, 後続の既定応力周波数領域スタディで調和摂動を得られます. この新しい機能は, 固体力学 インターフェースで使用できます.

粘着と剥離のモデル化

Contact (接触) ノードに新しく加わった Adhesion (粘着) サブモードを使い, 粘着および剥離する部品が関連するさまざまな製造工程を解析することができます. 一定の基準が満たされると, 接触境界同士が粘着します. この基準は, 接触圧, 間隙距離, ユーザー定義による任意の式とすることができます. 例えば, 後者は伝熱スタディの温度に基づくことができます. また, 仮想粘着層の弾性特性を指定することができます.

剥離の法則を指定すれば, 粘着で接合する2つの境界を分離させることができます. 新しい Adhesion (粘着) サブノードには, 設定ウィンドウの一部として, Decohesion (剥離) を選択する機能があります. このサブノードには3種類の剥離の法則があり, Linear (線形), Polynomial (多項式), Multilinear (多線形) から選択できます. 剥離の法則は, 法線方向と接線方向にそれぞれ独立した特性を持つ混合モード剥離が可能であり, この技法を凝集帯モデル (CZM: cohesive zone model) と言います.

剥離のモデル化の例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

Structural_Mechanics_Module/Contact_and_Friction/cohesive_zone_debonding

セレンディピティ要素

固体力学薄膜 インターフェースには, いわゆるセレンディピティタイプと呼ばれる要素が追加されており, ラグランジュタイプを補完しています. 大部分が六面体の要素があるモデルの場合, セレンディピティ要素を使うことで, パフォーマンスが大幅に向上し, 実行速度が高速化され, しかもメモリ使用量が少なくて済みます. 新しいフィジックスインターフェースの追加時に, セレンディピティ要素の使用がデフォルトになりました.

熱膨張データの新しい入力方法

熱膨張材料データを3通りの方法で入力できるようになりました.

  • Secant coefficient of thermal expansion (熱膨張の正割係数) として入力する. これがデフォルトの方法であり, 以前のバージョンで利用できた唯一の方法でした.
  • 熱膨張 の Tangent (接線) (<3788>熱力学<3789>) 係数として入力する. Solid mechanics (熱ひずみ) を温度関数に明示的に指定して入力する. 適切なオプションを選択することで, 換算を行わなくても多様な測定データを使用できます. 新しいオプションは, *Solid mechanics (固体力学), Membrane (薄膜), Truss (トラス) インターフェースで 使用することができます.

熱膨張の正割係数 オプションを使い, 一定の基準温度から温度が変化する時の歪みの総変化量を計算します ( ). 熱膨張の接線係数 オプションは, 温度について熱歪みの感受性に関する情報を提供します: . 2つの値は基準温度の箇所で一致します.

拘束の熱膨張

Thermal Expansion (熱膨張) サブノードを使い, 固定制約条件や既定変位など, 制約条件を増やせるようになりました. これにより, 制約条件により理想化された周囲構造が一定温度に保たれない場合, 制約条件によって誘引される応力を解放することが可能となります. 同様に, Rigid Connector (剛性連結器)Attachment (アタッチメント) ノードに Thermal Expansion (熱膨張) サブノードが追加され, これらの剛性物体の熱膨張を可能にします. この機能を使用する場合, モデル化されていない構造周囲部の熱膨張率と温度分布を指定します. これらの要因によって引き起こされる熱歪みを統合して変位場を求め, 制約条件に追加します.

ドメイン終端

Electric Currents (電流) および Electrostatics (静電気)フィジックスインターフェースの終端機能をドメインレベルで使用できるようになりました. ジオメトリが複雑な電極の場合, 終端を境界レベルで使用する場合に多数の境界を選択しますが, このような場合に便利な機能です. 終端の選択ドメイン内の電位が未知である場合は求解されず, 変数に置換されます. これは, ジオメトリによって考慮される有限の厚さを持つ電極をモデル化する際に有用な機能です.