マルチボディダイナミクスモジュールアップデート

マルチボディダイナミクスモジュールをご使用の場合、COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a ではギアをモデル化できるようになり, 動力伝達や自動車のシミュレーションに活用できます. パーツライブラリに多様なギアパーツが追加されたのでモデルのセットアップが簡単になり, またチュートリアルモデルも新たに追加され, このユーザー主導の機能の活用が期待できる用途について説明しています. マルチボディダイナミクスモジュールの更新内容は以下のとおりです.

ギアのモデリング

マルチボディダイナミクス インターフェースに, ギアをモデル化する機能が追加されました. 動力伝達に使用するギア系をモデル化することができます. 数種類のギアとラックに利用可能なノードには以下のようなものがあります. 平ギア, ヘリカルギア, ベベルギア, ウォームギア, スパーラック, ヘリカルラック. モデルビルダーのモデルツリーに, Gear Pair, Worm and Wheel (ギアペア, ウォームとホイール)Rack and Pinion (ラック&ピニオン) ノードを追加することで, ギアを他のギアに接続することができます.

マルチボディダイナミクス インターフェースの新しいギア機能を使いモデル化した複合歯車列.

マルチボディダイナミクス インターフェースの新しいギア機能を使いモデル化した複合歯車列.

マルチボディダイナミクス インターフェースの新しいギア機能を使いモデル化した複合歯車列.

モデルビルダーでは, ギアは剛体として定義されます. しかし, 他のギアに接続する場合, ギア噛み合いに有限剛性を指定することも可能です. モデルビルダーでは, 噛み合い剛性, 噛み合い減衰, 噛み合い率など, ギア噛み合いの弾性特性を定義するために, ギアノードのサブノードとして Gear Pair (ギア弾性)ノードを追加することができます.

ギアペアは, 静的伝達誤差やバックラッシュ (ガタ) がない理想的なペアであると仮定することができます. 幾何誤差や幾何形状変更等による静的伝達誤差がある場合は, ギアペアノードに Transmission Error (伝達誤差) サブノードを追加することができます。 このような例として, ギアのランアウト (心振れ), ミスアライメント (不整列), 歯先修整と歯元修整の発生などがあります. 同様に, システムの動力に影響を与えるようなバックラッシュがある場合には, ギアペアノードに Backlash (バックラッシュ) サブノードを追加することができます。

さらに, 接触点における摩擦力を考慮に入れるため, ギアペアノードに Friction (摩擦) サブノードを追加することができます. 摩擦力は, 接触点にかなりのすべりがある場合のみ支配的になります. すべりの原因としては, 中心距離が変化している, または2つのギアの軸が平行ではないか交差していない場合が考えられます. ウォームとホイールのギアペアは, このタイプの操作例ですが, 完ぺきな条件下でも内在的なすべりが存在します.

ギアのモデル化を例示するアプリケーションライブラリへのパス:

Multibody_Dynamics_Module/Automotive_and_Aerospace/differential_gear

Multibody_Dynamics_Module/Tutorials/gear_train

Multibody_Dynamics_Module/Tutorials/helical_gear_pair

Multibody_Dynamics_Module/Verification_Examples/bevel_gear_pair

パーツライブラリのギア

パラメーター化された数種類のギアジオメトリがパーツライブラリに追加されました. 3D モデルと 2D モデルの両方にこれらの部品を使うことで, 様々なタイプのギアを作成することができます. 部品の入力パラメーターを編集して, ギアの歯やギアブランクの形状をカスタマイズできます. これらの部品を使い, ギアの歯, ギア単体, 一対のギア, 平行ギア列または遊星ギア列を作成することができます. 使用可能なギアパーツは, 3つのカテゴリに分類されています.

  1. External Gears
    1. Spur Gear
    2. Helical Gear
    3. Bevel Gear
    4. Worm Gear
  2. Internal Gears
    1. Spur Gear
    2. Helical Gear
  3. Spur Gear
    1. Spur Rack
    2. Helical Rack
すべてのギアタイプについて, 歯の断面を作成するためのパーツが追加されています.

マルチボディダイナミクスモジュールのパーツライブラリで使用可能なギアパーツを使い作成した, ヘリカルギアジオメトリ. マルチボディダイナミクスモジュールのパーツライブラリで使用可能なギアパーツを使い作成した, ヘリカルギアジオメトリ.

マルチボディダイナミクスモジュールのパーツライブラリで使用可能なギアパーツを使い作成した, ヘリカルギアジオメトリ.

新しいチュートリアルモデル: ディファレンシャルギア機構

このモデルは, 自動車等の車両で使用されるディファレンシャルギアの機構をシミュレートします. ディファレンシャルギアにより, 旋回時に外側の駆動輪の方が内側の駆動輪よりも速く回転することができます. 車両が旋回する時にカーブの外側を通る車輪は内側を通る車輪よりも回転数が多くなりますが, 外側の車輪を内側よりも速く回転させることで回転数の差を吸収する場合に, ディファレンシャルギアが必要となります. 2つの駆動輪の回転速度の平均値が, ドライブシャフトの入力回転速度となります. 片方の車輪の回転速度の増加は, もう片方の車輪の速度を遅くすることでバランスを取ります.

車両が直進する場合や旋回する場合のスパイダーギアの動きを計算するため, 過渡解析を行います. これら2つの場合について, 異なるパーツの速度および内側と外側の車輪の角速度が計算されます.

ディファレンシャルギア機構を表したチュートリアルモデルを示すアプリケーションライブラリへのパス:

Multibody_Dynamics_Module/Automotive_and_Aerospace/differential_gear

2本の車軸を別々の回転速度で回転させるディファレンシャルギア機構.
回転速度と回転方向が示されています. 2本の車軸を別々の回転速度で回転させるディファレンシャルギア機構. 回転速度と回転方向が示されています.

2本の車軸を別々の回転速度で回転させるディファレンシャルギア機構. 回転速度と回転方向が示されています.

新しいチュートリアルモデル: 複合歯車列の振動

このモデルは, 複合ギア列の振動をシミュレートします. ギア列のモデル化には平ギアが使われており, 両側が弾性ハウジングによって支持されている剛性軸に取り付けられています. ギアの噛み合いは弾性で変動剛性を伴うと仮定され, 持続した振動源となります. ギアのダイナミクスおよびハウジング内の振動を計算するため, 過渡解析を行います.

ギアの噛み合い剛性の計算には, 接触モデリングを用います. ギアの噛み合い剛性を1回の噛み合いにおけるギアの回転関数として計算するため, パラメトリック解析を行います.

歯元だけでなく歯の接触部でも応力が大きくなる, ギアペアのミーゼス応力分布がモデルによって計算されます. また, ギアの噛み合い剛性, ギアの位置ずれ, 振動によるハウジング内の法線加速度も計算されます.

チュートリアルモデルを示すアプリケーションライブラリへのパス:

Multibody_Dynamics_Module/Tutorials/gear_train

弾性のギア噛み合いに誘引される振動によって生じるハウジング内の法線加速度.
ギアの位置ずれを表したグレイスケールプロットも示されています. 弾性のギア噛み合いに誘引される振動によって生じるハウジング内の法線加速度. ギアの位置ずれを表したグレイスケールプロットも示されています.

弾性のギア噛み合いに誘引される振動によって生じるハウジング内の法線加速度. ギアの位置ずれを表したグレイスケールプロットも示されています.

新しいチュートリアルモデル: ヘリカルギアのダイナミクス

このチュートリアルモデルは, ヘリカルギアのダイナミクスを説明しています. ギアの噛み合いが剛性の場合と弾性の場合が考慮されています. 一定のギア噛み合い剛性, 変動ギア噛み合い剛性, 接触面の伝達誤差, ギアの角速度の影響を解析するため, 過渡スタディを行います. 剛性および弾性のギア噛み合いについて, ギアペアの固有振動数と振動モードの形を計算するため, 固有周波数解析を行います.

チュートリアルモデルを示すアプリケーションライブラリへのパス:

Multibody_Dynamics_Module/Tutorials/helical_gear_pair

新しいチュートリアルモデル: べベルギアの力とモーメント

このチュートリアルモデルは, 一対のストレート円錐ベベルギアをシミュレートします. ギアは剛性としてモデル化されていますが, 片方のギアを固定し, もう片方は剛性バーに蝶番で取り付けます. この剛性バーも, 固定したギアの軸にかかる箇所に蝶番で取り付けます. 固定したギアの中央部の力とモーメントを計算するため, 過渡解析を行います. 解析結果を, 国際的学術誌の参考文献の結果と比較します.

チュートリアルモデルを示すアプリケーションライブラリへのパス:

Multibody_Dynamics_Module/Verification_Examples/bevel_gear_pair

剛性バーに増分回転を既定した場合のベベルギアの動作. 剛性バーに増分回転を既定した場合のベベルギアの動作.

剛性バーに増分回転を既定した場合のベベルギアの動作.