AC/DC モジュールアップデート

COMSOL Multiphysics® バージョン5.3a の AC/DC モジュールでは新たに磁場 (電流なし) (境界要素法) インターフェースが導入されます. 前回導入された静電場(境界要素法)インターフェースは今回ポストプロセスが改善されました. 軟永久磁石のモデル化のための新しい材料モデルが磁場 (電流なし) インターフェースと回転機械(磁気)インターフェースに追加されました. 表面磁気電流密度境界条件が磁場インターフェースに加わりました. アプリケーションライブラリには回転機械 (電気モーター) におけるラミネーションの時間依存モデリングのチュートリアルの例が新しく加わりました. 詳細は以下をご覧ください.

新しく増強された境界要素法インターフェース

新しいフィジックスインターフェース, 磁場 (電流なし) (境界要素法) インターフェースは境界要素法 (BEM) に基づいています. スカラー磁気ポテンシャルを解いて, 線形かつ一定で, 一様な特性を持つ永久磁石をモデル化するスタンドアロンのインターフェースとして使うことができます. 有限要素法 (FEM) と BEM を組み合わせることのできるマルチフィジックス機能も提供します. 磁場(電流なし)インターフェースや磁場インターフェースと組み合わせて, より複雑なモデリングが可能になりました.

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.3 で導入された「静電気 (境界要素)」インターフェースは静電気力計算と, 新しい境界上のポストプロセス変数のサポートによって増強されました. また, 協会要素ベースの場のポストプロセスと可視化が境界近傍の自動スムージングで改良されました.

A model of a submarine with its magnetic signature below. 潜水艦の1km下における磁場痕跡. この例は磁場 (電流なし) (境界要素法) インターフェースと磁場 (電流なし) (有限要素法) インターフェースを用いて解かれています. 既定のマルチフィジックスカップリングである磁気スカラーポテンシャルカップリングが使われています. 境界要素法は図中箱型の外側の開空間を解析します. 箱型と潜水艦は20倍に拡大して表示されています.
潜水艦の1km下における磁場痕跡. この例は磁場 (電流なし) (境界要素法) インターフェースと磁場 (電流なし) (有限要素法) インターフェースを用いて解かれています. 既定のマルチフィジックスカップリングである磁気スカラーポテンシャルカップリングが使われています. 境界要素法は図中箱型の外側の開空間を解析します. 箱型と潜水艦は20倍に拡大して表示されています.

回転機械のための更新

AC/DC モジュールの「回転機械 (磁場)」インターフェースでは移動メッシュ機能が更新されました. 移動メッシュ設定がフィジックス間で共有され, 重複設定を避けることができるようになりました. これにより移動ドメインにおけるマルチフィジックスのモデル化が前バージョンと比べてさらに簡単になりました. その他, 電磁気と回転機械の流体との連成も簡単になりました.

軟永久磁石用の材料モデル

軟永久磁石用の新しい材料モデルが磁場インターフェース, および磁場インターフェース, 磁場 (電流なし) インターフェース, そして, 回転機械 (磁気) インターフェースに追加されました. 市販の材料例として, アルニコ5の特性を近似した材料,非磁化可能非線形永久磁石が AC/DC 材料データベースに加わりました. 新しい材料モデルをサポートするユーザー定義の材料のテンプレートとして使うことができます. 2つの重要な磁性材料はアルニコ (軟磁石) と NdBFe (硬磁石) です. NdBFe のキュリー温度が310–400°C であるのに対して, アルニコは 700–860°C と高いために動作温度が高いという利点があります. このためにアルニコは NdBFe には温度が高くて使えないような場合の永久磁石モーターに使われることがあります. そのようなモーターの設計の鍵になるのは磁石中の磁束密度が磁化曲線の「膝」を下回らないようにすることです. そこを下回ると不可逆な非磁化が起こり, パフォーマンスが失われるからです.

An example of using the material model for soft permanent magnets, new in COMSOL Multiphysics 5.3a. 軟永久磁石の例:軟鉄コア (灰色) で閉じた磁気回路の内側に置かれると, 磁化曲線の「膝」の上に停滞します. 自由空間に押出されると, 膝の下のどこにでも行くことができ, もとの曲線に沿って戻ることはなく, 赤い破線に沿って戻ってきます. このときに永久非磁化されます.
軟永久磁石の例:軟鉄コア (灰色) で閉じた磁気回路の内側に置かれると, 磁化曲線の「膝」の上に停滞します. 自由空間に押出されると, 膝の下のどこにでも行くことができ, もとの曲線に沿って戻ることはなく, 赤い破線に沿って戻ってきます. このときに永久非磁化されます.
 

自由空間に動かされると, 軟永久磁石は初期磁化を大きく失い, その変化が不可逆になります.

磁気スカラーポテンシャル不連続性

磁場 (電流なし) インターフェースでは新しい機能, 磁気スカラーポテンシャル不連続性, が導入されました. この機能は電流のない磁気スカラーポテンシャル定式化に辺電流ループを導入します. このアプローチは, より一般的なベクトルポテンシャル定式化よりも計算的に安くて効率的です.

An example that uses the Magnetic Scalar Potential Discontinuity feature in the AC/DC Module. 磁場(電流なし)インターフェースによる, 磁気スカラーポテンシャルを用いたトロイドインダクターモデル. 新しい磁気スカラーポテンシャル不連続機能が灰色の円形境界に適用されています. これは交わる円形エッジに1[kA]の線電流を課するのと等価です.
磁場(電流なし)インターフェースによる, 磁気スカラーポテンシャルを用いたトロイドインダクターモデル. 新しい磁気スカラーポテンシャル不連続機能が灰色の円形境界に適用されています. これは交わる円形エッジに1[kA]の線電流を課するのと等価です.

表面磁気電流密度

新しい表面磁気電流密度境界条件が磁場インターフェースに加わりました. この境界条件は外部境界と内部境界の両方で表面磁気電流密度を定義します. 磁気電流密度は通常 3D ベクトルで記述されますが, 表面を流れる電流の場合, もっと効率的なモデリングが可能です. COMSOL Multiphysics®ソフトウェアでは電流を境界表面に射影し, 法線成分を無視します. この新しい境界条件は電気双極子のモデリングなどの特別な場合のために設けられました.

時間領域のラミネーションモデリングの例

回転機械 3D チュートリアル例題が更新されました. ローターのラミネーションをモデル化します. モデル中の回転円筒を回転機械 (磁気) インターフェースの絶縁境界条件の有無の場合についてシミュレートし, 結果を比較します. ローターがラミネート化されるとき, 渦電流損失が著しく減少することが示されます.を使って説明します.

Visualized results from the Rotating Machinery 3D tutorial model. 円筒がその軸の周りを回転し, 永久磁石によって生成される磁場から渦電流を発生させる回転機械の例. 電流密度を絶縁層なし (上図, 凡例左), および絶縁層あり (下図, 凡例右) の2つの状況について計算します.
円筒がその軸の周りを回転し, 永久磁石によって生成される磁場から渦電流を発生させる回転機械の例. 電流密度を絶縁層なし (上図, 凡例左), および絶縁層あり (下図, 凡例右) の2つの状況について計算します.
アプリケーションライブラリパス:

ACDC_Module/Motors_and_Actuators/rotating_machinery_3d_tutorial

電磁力検証シリーズ

磁力計算に関する2つの新しいチュートリアル例題が加わりました. 磁場(電流なし)インターフェースと磁場 (電流なし) (境界要素法) インターフェースを使って境界要素法 (BEM) と有限要素法 (FEM) を比較します. このモデルでは静磁場に適用される境界要素法を紹介します.

A model of two parallel magnetized rods. 2つの平衡な1mの長さの磁化ロッドが1m離れて置かれています. ロッド内部の残留磁束密度は2つのロッド間の反発力が厳密に1ニュートンになるように選ばれています.
2つの平衡な1mの長さの磁化ロッドが1m離れて置かれています. ロッド内部の残留磁束密度は2つのロッド間の反発力が厳密に1ニュートンになるように選ばれています.
アプリケーションライブラリパス:

ACDC_Module/Verification_Examples/force_calculation_02_magnetic_force_bem ACDC_Module/Verification_Examples/force_calculation_03_magnetic_torque_bem