化学反応工学モジュールアップデート

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.3a には流体の熱力学特性データベースが新しく加わり, 反応工学インターフェースと連成できるようになりました. 3つの新しいチュートリアルモデルがその新しい機能を紹介します. 詳細は以下をご覧ください.

熱力学特性計算のビルトイン機能

化学反応工学モジュールの熱力学特性データーベースによって生成エンタルピー, 反応エンタルピー, 熱容量, 熱伝導度, 密度, 拡散係数, 平衡組成などの流体特性を計算することができます. 純粋な液体, 混合液体, 純粋化合物からなる2相液体系の特性も計算が可能です.

特定の系に関して特性パッケージを作成することができ, モデル化した系に存在できる化学種と相(集合状態)を指定することができます. 特性パッケージは化学系の熱力学的および輸送特性の関数を定義し, 評価します. 例えば, 液体, 気体, 気体-蒸気平衡(引火点計算), 液体-液体平衡などです.

ビルトインデータベースは251の化学種と化合物に関する熱力学的と輸送特性を含みます. 「外部特性パッケージ」機能は外部のCAPE-OPEN 準拠パッケージで, これらのビルトインデータベースに加えて, 特性関数を計算します.

An annotated screenshot of the Property Package settings.

「特性パッケージ」の設定ウィンドウ. メタン再生成プロセスがビルトイン熱力学データベースから選択されています.

「特性パッケージ」の設定ウィンドウ. メタン再生成プロセスがビルトイン熱力学データベースから選択されています.

特性パッケージとの連結による熱力学特性の自動定義

特性パッケージの作成ができたら, その中の化学種を「反応工学」または「化学」インターフェースで定義される化学種と連結することができます. つまり, これらのインターフェースで必要な特性パラメーターと関数が全て自動で特性パッケージにより生成されることになります. 化学種特性の例としては, モル質量, 熱容量, エンタルピー, エントロピーなどです. 「反応工学」インターフェースと「化学」インターフェースは混合結果の輸送特性の定義にも使うことができます. 化学種を連結すると, 熱容量, 密度, 拡散係数, 熱伝導度, 粘性係数などの混合特性が自動で計算されます.

特性パッケージを使うと「反応工学」インターフェースと「化学」インターフェースにおけるモデリング能力が格段に飛躍します. 気体と液体に関する全ての理想, 非理想熱力学モデルが直接利用可能で, 特性パッケージの設定を編集すると自動で更新されます. さらに, 「化学」インターフェースは空間依存モデルにおいて質量輸送, 熱伝導, 流体流れのモデリングに必要な混合特性を作ることも簡単にできます.

An annotated screenshot of the Reaction Engineering settings.

特性パッケージと連成する際の「反応工学」インターフェースの設定. 「反応工学」の化学種が熱力学特性パッケージとマッチします.

特性パッケージと連成する際の「反応工学」インターフェースの設定. 「反応工学」の化学種が熱力学特性パッケージとマッチします.
A model of a 4-cylinder combustion engine created with COMSOL Multiphysics version 5.3a.

4シリンダー燃焼エンジン中の冷却液の密度, 粘度, 熱容量, 熱伝導度が熱力学特性パッケージで計算されます. 流体流れと熱伝導解析が熱力学特性および輸送特性関数と完全連結します.

4シリンダー燃焼エンジン中の冷却液の密度, 粘度, 熱容量, 熱伝導度が熱力学特性パッケージで計算されます. 流体流れと熱伝導解析が熱力学特性および輸送特性関数と完全連結します.

新しいチュートリアルモデル:メンブレインリアクター中の水素化脱アルキル化

熱力学特性データベースの主な目的の一つは化学と化学工学における反応系をモデル化することです. メンブレインリアクターで行われる熱水素化脱アルキルプロセスをビルトインの熱力学特性と物理特性評価を使ってモデル化します.輸送と反応の問題がメンブレイン有り, または, 無しの管状リアクターの熱力学特性パッケージを使って定義され, 求解されます.

A plot of the molar flow rate from the Hydrodealkylation in a Membrane Reactor model.

リアクターの長さの関数としてのメンブレインリアクターの出口でのモル流率.

リアクターの長さの関数としてのメンブレインリアクターの出口でのモル流率.

アプリケーションライブラリパス:
Chemical_Reaction_Engineering_Module/Thermodynamics/membrane_hda

新しいチュートリアルモデル:エンジン冷却特性

2つ目の熱力学特性データベースのアプリケーションは純粋な流体流れ問題か, 熱伝導を含む流体流れ問題です. つまり, 化学反応を含まない流体問題です. このチュートリアルモデルでは内燃エンジンの冷却液の特性を解析します. 純水が冷却液としてはよい材料ですが, 低温で凍結するのを避けるため, エチルグリコールと水の混合液が通常使われます. ビルトインの熱力学機能を使って沸点, 密度, 粘度, 熱伝導度, 熱容量など, 冷却混合液の組成に依存するこれらの量をどのように計算するか, これらの特性の変化がどのように冷却プロセスに影響するかを示します.

An engine coolant modeled with the Chemical Reaction Engineering Module.

テスト器内での冷却温度を考慮します.

テスト器内での冷却温度を考慮します.

アプリケーションライブラリパス:
Chemical_Reaction_Engineering_Module/Thermodynamics/engine_coolant_properties

新しいチュートリアルモデル:蒸留塔

熱力学特性データベースの3つ目のアプリケーションは, 引火点を含む分離プロセス, 例えば蒸留のモデル化です. このチュートリアルでは二段蒸留プロセスの簡単なモデル化を示します. エタノールと水の非理想的混合液の分離をモデル化します. 蒸留プロセスは, 液体が充填された塔で, 蒸発率の違いを利用して, 逆向きに流れる気相と液相に化学種を分離します. このモデルは新しいビルトインの熱力学特性データベースから平衡計算関数を使います. このモデルの最終目的は, 揮散および精留部分の長さを最適設計して, 既定の蒸留物および残留成分の条件を満たすことです.

A diagram from the Distillation Column tutorial model.

x-yダイアグラム(相図)が計算された蒸留物内の動作線を示しています.

x-yダイアグラム(相図)が計算された蒸留物内の動作線を示しています.

アプリケーションライブラリパス:
Chemical_Reaction_Engineering_Module/Thermodynamics/distillation_column