光線光学モジュールアップデート
COMSOL Multiphysics® バージョン5.3a の光線光学モジュールでは, 新しい光線出射分布と, よりフレキシブルな境界条件が加わりました. パーツライブラリにも新しいミラーとレンズの モデルが追加されました. 光線光学モジュールのアップデートの詳細は以下の通りです.
円筒およびヘキサポーラーグリッドベース出射
「グリッドから出射」機能を使って円筒グリッド, またはヘキサポーラーグリッドの点から光線を出射できるようになりました. 円筒分布の中心, 向き, 角度の数を指定することができます.
境界からの高速出射
境界からの均一な密度ベースの光線出射はバージョン5.3aで5.3と比べると大幅に高速になりました. 流入と照射面機能を使うモデルでこの高速化効果が得られます.
次のテーブルはアプリケーションライブラリのソーラーディッシュレシーバーモデルのパフォーマンスの比較です.
Number of Rays | Solution Time(s), Version 5.3 | Solution Time(s), Version 5.3a | Speedup |
---|---|---|---|
1000 | 5 | 4 | 25% |
2000 | 8 | 3 | 170% |
5000 | 16 | 5 | 220% |
10,000 | 41 | 6 | 7x |
20,000 | 53 | 9 | 6x |
50,000 | 130 | 19 | 7x |
100,000 | 244 | 36 | 7x |
CPU:Intel (R) Xeon (R) CPU E5-2620 v2; クロック:2.10GHz; 6コア, 1ソケット; メモリ: 16.33GB
屈折における反射光線の出射制御
異なる媒質間の材料不連続での反射をどの面で計算するかを制御することができるようになりました. 屈折率の異なる界面では, デフォルトでは入射光線は常に屈折光と反射光に分かれます. 新しいオプションでは反射光線を生成しないか, または, 論理式を満たすような反射光線だけを出射することができます.
境界での反射率と透過率のより簡単な指定方法
材料不連続機能の設定において, ユーザー定義の反射率, または, 透過率を設定することが簡単にできるようになりました. 界面での誘電体コーティングの物性を知る必要はありません. デフォルトでは反射率/透過率は数値で与えられていますが, 数式, または解析関数, 補間関数の入力も可能です.
回折格子の新しい設定オプション
バージョン 5.3a では回折格子の設定が大幅にフレキシブルになりました. 3Dで回折格子の向きを指定するには, 周期方向 (単位セルから次のセルまでの方向) か, 格子の線の方向を入力します. 従来は0次回折光は自動的に処理されていましたが, 今後は他の回折次数と同様, 回折次数サブノードで設定を行います. 回折格子ノードを加えると, デフォルトで回折次数サブノードが追加されます. この新機能により, 0次光がモデルにおいて重要ではない場合, それを省略することができるようになりました.
鏡面境界条件
専用の鏡面境界条件が導入されました. この境界条件は常に鏡面反射をする境界条件です.
反射回数によるスタディの終了
自動で境界での反射光線を計測できるようになりました. 「反射を計測」チェックボックスを選択すると, 壁か材料不連続面での反射回数をビルトイン変数に保存できます. さらに,全光線で指定回数を超える反射が起きると自動でスタディを終了する標準オプションが光線追跡スタディステップに加わりました. このオプションにより, 不必要に多数の回数の反射が終了するまで待つ必要がなくなりました.
パーツライブラリ改善
4つの新しいパーツが光線光学モジュールのパーツライブラリに加わりました.
一般球面レンズ
一般球面レンズパーツを使うと2つのことなる曲率半径をそれぞれの面で定義できます. このレンズジオメトリは従来の両凸レンズや平凸レンズよりも一般的です. 各々のレンズ面にクリアアパーチャーを設けることもできます.
円環
円環は平面リングで3Dジオメトリにアパーチャーストップとして挿入することができます. 例えば, 迷光を防ぐために, カメラや望遠鏡のレンズの周囲にそれらを入れることができます. 中心に穴のない円盤として使うこともできます.
軸上コニックミラー
軸上コニックミラーは軸対称なミラーで, 曲率半径とコニック係数を使って定義します. 中心の穴の有無は任意です.
軸外コニックミラー
軸外コニックミラーは中心が対称軸からずれているミラーです. 軸上コニックミラーと同様, 曲率半径とコニック係数を指定して定義します. アプリケーションライブラリの白色瞳エシェル分光チュートリアルモデルでこのパーツが使われています.
新しいチュートリアルモデル:ダブルガウスレンズ
ダブルガウスレンズチュートリアルモデルは簡単な多レンズの対物レンズです. 個々のレンズは光線光学モジュールのパーツライブラリの標準パーツインスタンスで定義されています.
アプリケーションライブラリパス:
Ray_Optics_Module/Lenses_Cameras_and_Telescopes/double_gauss_lens
Ray_Optics_Module/Lenses_Cameras_and_Telescopes/double_gauss_lens_parametric
新しいチュートリアルモデル:ペッツバルレンズ
アプリケーションライブラリに新しく加わったこのペッツバルレンズチュートリアルは, ダブルガウスレンズチュートリアルと同様に, マルチパーツインスタンスを用いてレンズ系をポストプロセスする方法を示します. 多くの場合, ペッツバルレンズのようなレンズをより大きな系に含めたいと思うことがあるでしょう. 次の新しいチュートリアルモデル, 白色瞳エシェル分光, にそれが示されています.
アプリケーションライブラリパス:
Ray_Optics_Module/Lenses_Cameras_and_Telescopes/petzval_lens
白色瞳エシェル分光
このチュートリアルでは複雑で完全にパラメーター化されたジオメトリの構築を紹介します. 光線光学モジュールの標準パーツライブラリから新しい軸外コニックミラーパーツを使っています. アプリケーションライブラリのペッツバルレンズのジオメトリを若干修正したモデルを含みます. 2つのエシェル回折格子とクロス分散器で異なる波長とエシェル次数の2Dアレイスポットが形成されます.
アプリケーションライブラリパス:
Ray_Optics_Module/Spectrometers_and_Monochromators/white_pupil_echelle_spectrograph