スタディおよびソルバーアップデート

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.3a には新しいモデル縮小機能, よりフレキシブルになった解連結, 計算結果データの再利用オプションなどが加わりました. 詳細は以下をご覧ください.

モデル縮小

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.3a に導入された新しいモデルの縮小のフレームワークは, 縮小モデルの作成と使用のプロセスを分離します. モデル縮小は, 求解すべき自由度数を減らすことによって, より効率的なモデルを作成するための数値技術の総称です. 縮小モデルは元のモデルの近似値であり, 解法プロセスを高速化します. 1つの例は, 異なる入力パラメータを用いて同様の計算を何回も実行する必要がある場合です. 縮小モデルを作成する前に, モデル縮小方法 (COMSOL Multiphysics® の「モード解析」またはAWE) と, 入出力パラメーターのセットを定義します. そして, 設定された入出力関係とユーザー定義の忠実度尺度に基づいて, 可能な限り元のモデルに近いモデルを再現するような縮小モデルが作られます.

新しいフレームワークの一環として, モデル縮小のための別のスタディが導入されました. モード解析ソルバーと漸近波形評価 (AWE) ソルバーの使用をサポートします. モデル縮小スタディでは過渡シミュレーション, または, 周波数スイープを直接実行し, 必要に応じて異なるコンテキストで使用するための縮小モデルを作成できます. 縮小モデルはグローバル変数出力を定義し, 非縮小モデルの選択された部分を再構成することができます. モード解析ソルバーを使用する場合, グローバルパラメータを使用してモデル制御入力を定義し, そこにグローバル数式を代入することができます. これにより, 縮小モデルを自由にフィードすることができます. モード解析ソルバーによって作成された縮小モデルはJava® API, または, LiveLink™ for MATLAB® を使用して縮小線形システムのシステム行列を取得するために使用することもできます.

「モデル縮小」スタディは「スタディ」コンテクストメニューからしか利用できません. 「詳細スタディオプション」が有効になっている必要があります.


縮小モデルを構築するワークフローは以下の通りです:

  1. モデル縮小法をモード解析かAWE
    から選択 a. モード解析法では「トレーニングスタディ」を選択して「固有値」または「固有周波数」スタディステップを使用
  2. 適合する別のスタディステップを選択して非縮小モデルを定義
    a. モード解析法ではモード制御入力を定義
  3. 縮小モデルの出力を定義
  4. 設定した定義でスタディを実行して縮小モデルを作成
    a. グローバル定義ノードの下に縮小モデルができていることを確認

パラレル化Smoothed Aggregation 代数マルチグリッド (SA-AMG)

SA-AMG の設定がパラレル化しました. SA-AMG ソルバーは主に CFD シミュレーションで使われます. 今回新しく SA-AMG の設定時にマルチコアと分散メモリの利点を生かせるようになりました. これによりマルチコアプロセッサーでの計算が高速化し, クラスター上のピークメモリ量が減りました.

解連結時の削除選択

「解連結」機能が, 解時刻, 固有周波数, パラメーターに関して選択した部分だけを残す新しい機能を導入しました. これは大規模モデルで保存データー量を減らしたり, ポスト処理には不要な解をフィルタリングして削除するのに便利です.

重み付解の総和計算

「解連結」機能が時刻, 固有周波数, パラメーターなどに関して重み付の解総和系計算をできるようになりました.

固有周波数パラメトリックソルバー

「固有周波数」および「固有値」スタディステップが拡張され, 「時間依存」スタディの機能と同様に, 補助パラメータースイープをサポートするようになりました. 「補助スイープ」は通常の「パラメトリックスイープ」よりさらに効率的なアルゴリズムでパラメーターを変化させることができます. その結果, 計算時間と計算結果の保存スペースを縮小します. クラスターでは「分散パラメトリックソルバー」オプションがあり, 各パラメーターでシングルノードにフィットするような問題に非常に効率的です.

計算済みデータの再利用

リニアソルバーでデータを再利用できる新しいオプションが導入され, 多くの場合でパフォーマンスが大幅に向上します. 非線形, 時間依存, パラメトリックソルバーの前のステップからのデータを再利用することで, いくつかの線形ソルバーのパフォーマンスが向上しました. 大型モデルの場合, 非線形反復で直接線形ソルバを使用するとパフォーマンスが最大30パーセント向上します.

データを再利用するための新しいオプションはデフォルトで有効になっており, オプションが無効になっている場合と比較してメモリ使用量が増加する可能性があります. 新しいオプションは場合によってはシステム行列に若干依存することもあり, 場合によっては異なる収束レートを与えることがあります. データが再利用されて収束に問題がある場合, 関連するソルバーのデータが更新されます.

反復ソルバー終了制御の新しいオプション

反復ソルバで左前処理を使用する場合, 別のトレランス値で相対残差を制御できるようになりました. この残差に対する新しい条件により, 左前処理を実行中にソルバーがあまりにも早く終了するということがなくなり, 反復ソルバーの堅牢性が向上しました.

また, 中間非線形ソルバーステップの反復回数を減らして終了することができる新しいオプションが加わりました. このオプションを使用すると, 各非線形ステップで線形ソルバーが実行する作業を制御することができます. 最後の非線形ソルバーステップでの反復回数は, 「最大反復回数」によっても制御することができます.

行列フリー形式での自動スケールのサポート

行列フリー形式が場の成分のスケールを自動的に推定するようになりました. これにより高速ソルバーによって行列フリー形式を使用する境界要素法 (BEM) の収束率を大幅に向上させる可能性があります.

バッチモードにおける新しいバッチおよびクラスターオプション

COMSOL Multiphysics® は「分散パラメトリックスイープ」, 「バッチスイープ」, 「クラスタースイープ」を含むパラメトリックスイープをサポートしています. 「分散パラメトリックスウィープ」は, 異なるパラメーターに対応する計算に異なるプロセスを使用する MPI ベースのジョブ内で, 異なるパラメーターを並列に処理します. 一方, 「バッチスイープ」, または, 「クラスタースイープ」は, いくつかのプロセスを並行して開始し, 独立して実行し, その結果をメインのユーザーインターフェースベースのプロセスに収集します. 以前のバージョンの COMSOL® ソフトウェアでは, バッチコマンドから「バッチスイープ」や「クラスタースイープ」を開始できませんでしたが, この機能は新しいコマンドラインオプション- mode batch, および, - mode desktopで使用できるようになりました. この機能は, 何らかの理由でユーザーインターフェースにアクセスできないシステムでソフトウェアを実行する場合に便利です.

ほとんどの場合, 「分散パラメトリックスイープ」はチェックボックス「分散パラメトリックスイープ」を選択して分散モードで開始するだけで簡単に操作できます. 「バッチスイープ」, および, 「クラスタースイープ」では, いくつかのパスおよびその他の設定をする必要があります. 「バッチスイープ」と「クラスタースイープ」は, 潜在的に収束の問題があり, パラメーターの個別再起動の可能性がある場合で牢性が必要な場合に適しています. 「分散パラメトリックスイープ」, および, 「クラスタースイープ」はフローティングネットワークライセンス (FNL) でのみ使用できますが, 「バッチスイープ」はシングルユーザーライセンスで使用できます.

オペレーティングシステムのコマンドラインからバッチモードで実行する場合, いくつかの新しいコマンドラインオプションが導入されました. オプション -clearmesh, および, -clearsolution は, モデルがファイルに保存される前にそれぞれメッシュと解を消去します. これは出力ファイルにプローブデータなどのスカラー出力を保持したい場合に便利です. オプション -cancel, および, -stop は既に実行されているバッチジョブをキャンセルして停止します. オプション -jobfile <ファイル名> は入力ファイルのリストを含むファイルを読み取り, 各入力ファイルのバッチジョブを実行します. メソッド名が Method Call 機能のタグである場合は, methodcall__ <メソッド名> を指定してバッチからメソッド呼出を実行することもできます.

クラスターおよびリモートコンピューティングのアップデート

クラスターコンピューティングで PBS ベースのスケジューラーがサポートされるようになりました. 「リモートコンピューティング」の設定では, ファイルに COMSOL Multiphysics® によって使用されるバッチコマンドラインを保存し, リモートコンピューターに転送する必要がある全てのファイルの一覧と, 転送する必要があるファイルの一覧を保存するオプションが新たに加わりました. これにより, バッチジョブを作成するコンピューターからリモートコンピューターにアクセスできない場合に, バッチジョブをリモートで実行することができます. バッチジョブが終了し, 結果のファイルがリモートコンピューターからコピーされると, その結果が更新されます.

A screenshot showing the Remote Computing settings in COMSOL Multiphysics.

「リモートコンピューティング」の新しい設定.

「リモートコンピューティング」の新しい設定.