COMSOL Multiphysicsを用いたパワーモジュールレイアウトの熱・信頼性に対する影響評価

伊勢谷 健司1, 鳴海 旬哉1
1株式会社先端力学シミュレーション研究所
Published in 2026

 パワーモジュールはスイッチングのON/OFFによってチップ発熱による温度上昇→冷却水への放熱による温度低下という繰り返し温度サイクルに晒され、このとき異種材料界面では線膨張係数の差に起因する熱応力が繰り返し発生し、接合材やワイヤボンディングに損傷が蓄積され、最終的に熱疲労破壊につながる。このような現象に対するレイアウト等の設計因子の影響をシミュレーションにより評価するには、熱/応力の連成解析が必要となる。本研究では、これらの解析をGUI上で操作・設定できる設計探索アプリをCOMSOL Multiphysics上に構築し、熱疲労評価を実施した。  解析モデルは伝熱と固体力学モジュールの連成解析とし、チップ発熱を区分線形関数で ON/OFF 変調しパワーサイクル試験を再現した。GUI は Application Builder を用いて実装し、形状・材料・試験条件の設定、メッシュ生成、解析実行、結果表示に加え、チップ位置や厚みのパラメトリック探索、はんだ材比較までをボタン操作で実行できるようにした。アプリケーションライブラリのモデルは使用せず、解析モデルおよび GUI は独自に構築した。LiveLink™ 製品は使用しない。  解析対象モジュールの構成を図1に示す。パワーモジュール基板上に配置したチップ位置をパラメトリックに変更した場合(図2)のジャンクション温度振幅⊿Tjとはんだ/ワイヤの最大応力への影響を評価した。チップ発熱時の温度分布を図3に示す。図4はパラメトリック解析の結果を整理したグラフであり、単体チップの場合には、はんだ/ワイヤ最大応力に対してチップ位置の影響は小さい。一方、複数チップの場合にはチップ間の熱干渉と基板反りの影響が大きく、単体チップの場合とは異なる挙動を示すことがわかった。  本アプリにより、シミュレーションの非専門家でも熱・応力連成解析および熱・応力評価を短時間で実施でき、実装設計の初期検討を加速する有効な手段であることを確認した。また、本アプリはCOMSOL Compilerにより作成した製品版を頒布予定であり、今後、非線形構造材料モジュールによりはんだ・ワイヤの塑性/クリープ特性を考慮して非弾性ひずみ振幅Δεinと散逸エネルギー密度ΔWから寿命サイクル数Nfを評価する機能を追加予定である。