半導体モジュールアップデート

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.4 では新しいシュレディンガー・ポアソン方程式マルチフィジックスインターフェースとWKB近似による量子トンネリング機能が加わりました. これらの半導体機能の詳細は以下をご覧ください.

シュレディンガー・ポアソン方程式マルチフィジックスインターフェース

新しいシュレーディンガー・ポアソン方程式マルチフィジックスインターフェースは静電気インターフェースとシュレディンガー方程式インターフェースを双方向連成して, 量子閉じ込め系の電荷キャリアをモデル化します. 静電気インターフェースからの電気ポテンシャルがシュレディンガー方程式のポテンシャルエネルギーに寄与します. シュレディンガー方程式インターフェースによる固有状態からの統計的に重み付けされた確率密度の和は静電気インターフェースの空間電荷密度に寄与します. 全ての空間次元 (1D, 1D 軸対称, 2D, 2D 軸対称, 3D) がサポートされています.

専用のシュレディンガー・ポアソンスタディタイプが含まれており, ソルバーシーケンスで自己無頓着な反復を自動で生成します. アプリケーションライブラリには新しいベンチマークモデル, GaAs の自己無頓着シュレディンガー・ポアソンの結果が含まれており, その中でこの新しい機能が使われています. アニメーションではシュレディンガー・ポアソン系の自己無頓着解へ解が収束していくのが確認できます.

捕獲アシスト表面再結合

絶縁, 薄絶縁ゲート, 絶縁界面機能の表面捕獲チェックボックスの代わりに, 新しい境界条件捕獲アシスト再結合が加わりました. 従来のチェックボックスでは明示的な捕獲のオプションが1つだけしか許されませんでしたが, 新しい境界条件は明示的捕獲とSRH再結合の2つのオプションになりました (捕獲アシスト再結合ドメイン条件と同様). また, この新しい境界条件はショットキーコンタクトも含みます. この新機能を使った新しいベンチマークモデル, MOSCAPの界面捕獲効果, が新しくアプリケーションライブラリに加わりました.

An example of using the Trap-Assisted Surface Recombination boundary condition in a MOSCAP model. 計算されたゲート電圧の関数としての端子容量と透過平行コンダクタンスが文献の実験データの振舞いを定性的に再現しています.
計算されたゲート電圧の関数としての端子容量と透過平行コンダクタンスが文献の実験データの振舞いを定性的に再現しています.

WKB トンネリングモデル

WKB 近似に基づく新しいトンネリング機能が加わりました. ヘテロジャンクションやショットキーバリアをまたぐキャリア輸送によるトンネル効果による電流密度を加えます. この機能を有効にするために, 連続性/ヘテロジャンクション金属コンタクト(タイプショットキーを選んだ場合) 機能に新しく追加電流寄与セクションが加わりました. そこでWKB トンネリングモデルを選択することができます. この新機能を使った新しいベンチマークモデル, ヘテロジャンクショントンネリング, がアプリケーションライブラリに加わりました.


このアニメーションは古典的には透過できないポテンシャルバリアを量子トンネル効果により電子が浸透していく様子を示します.

重要な補強

  • 擬フェルミ準位フォーミュレーションの有限要素離散化に1次形状関数オプションを追加
  • 新しい追加電流寄与セクションのヘテロジャンクション (熱電子放出) とショットキーコンタクトへユーザー定義電流寄与を追加
  • ヘテロジャンクションの熱電子放出で, 単一の A* (リチャードソン係数) 値を計算し, 平衡状態における全電流密度を矛盾なくゼロに
  • 絶縁体 (semi.E_ins) 中の垂直電流の変数がいつでも利用可能になり, 絶縁体をまたぐユーザー定義トンネル電流密度が簡単に入力可能に
  • フレッチャー易動度モデル, SRH, オージェ, 直接再結合モデルが定式化で非負キャリア濃度値を組込み, 安定性が改善
  • 金属コンタクト, 絶縁ゲート, 静電端子を複製またはペーストする際, 複製されたエンティティに新しい端子名を付与
  • 小信号解析における端子電流変数が変位電流からの寄与を含むように変更
    • バイアス付きショットキーコンタクトの差分容量のような集中パラメーターの計算が容易に
  • 連続捕獲準位のある系の小信号解析が可能に
  • 半導体平衡スタディステップで電流起因の金属コンタクトの定式化を改善

新しいチュートリアルモデル

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.4 の半導体モジュールでいくつかの新しいチュートリアルモデルが加わりました.

チュートリアルモデル改善

  • Si 太陽電池 1D の更新モデルでは AM 1.5 太陽照度を使用し, 光子生成率にシリコン吸収スペクトルを使用.
  • ヘテロジャンクション 1D モデルの更新
    • 4つの収束性改善方法を包含
      • スタディ 1: マニュアルスケーリング
      • スタディ 2: スタディ 1 からの解の継承 (従来と同様)
      • スタディ 3: 半導体平衡スタディステップを初期条件として使用
      • スタディ 4: ドーピングと熱電子電流を 1e-8 から増加 (従来はドーピングのランピングはオフ)
    • 従来の古いソルバー調整を削除 (初期ダンピング, 反復回数)
    • コメント, モデル説明, モデルドキュメンテーション更新; ラベル更新
  • GaN ダブルへテロ構造 LED モデル更新
    • 従来のランピングと初期値調整, ソルバー設定を半導体平衡スタディステップで置換え
    • 電流バイアススタディの従来のソルバー調整を削除
    • モデル説明, 設定コメント, モデルドキュメンテーション更新
  • EEPROM モデル更新. スタディ 1 をデフォルトソルバーに変更. マニュアルスケーリングに変更し収束性を改善.