タッチストーンファイルを使って2ポートのデバイスモデルを簡略化する方法

2019年 4月 3日

カスケード接続された回路系が一連の2ポートネットワークで構成されている場合, 系内の各2ポートネットワーク部分はタッチストーンファイルを使って記述することができます. シミュレーションモデルにタッチストーンファイルをインポートすることにより, 複雑なジオメトリ表現の代わりに2つの境界線を選択することができ, それによって計算リソースの使用を削減します.

タッチストーンファイルの S パラメーターによるデバイスの特性評価

タッチストーンファイル内では, n ポートネットワーク回路の周波数応答が S パラメーターで記述されています. タッチストーンファイルが2つのポートを持つデバイスを表す場合, ファイル内の値は S11, S21, S12, および S22を表します. これらの値を使用して, インピーダンスの不整合や挿入損失など, 回路の周波数応答を時間の関数としてプロットできます. また, タッチストーンファイルは, シミュレーションモデル内の任意の複雑な回路を簡略化することもできます.

 

電場の z成分. 枠内の回路部分は簡略化できるのでしょうか?

タッチストーンファイルは, 数値シミュレーションやネットワークアナライザーの測定結果から収集されたものです. 回路の複雑な形状を構築しなくても, 2ポートのネットワークであれば, 得られたファイルを用いて, 数値モデルで回路の性能を記述することができます.

2ポートのデバイスモデルを記述したタッチストーンファイル.

S パラメーター値を用いて回路の性能を周波数の関数として記述したタッチストーンファイル.

同軸コネクターのみを使用したローパスフィルターのモデリング

このアプリケーションライブラリの例では, タッチストーンファイルを使用して計算行列のサイズを縮小する方法を示しています. 2つの同軸コネクター間のローパスフィルターを, 2ポートネットワーク機能(COMSOL Multiphysics® ソフトウェアのアドオンである RF モジュールで利用可能な境界条件) を使用してモデル化します. S パラメーターはタッチストーンファイルを介してインポートされます. 元のフィルタモデルに示されているように, 2ポートネットワーク機能を使用して物理的に分離された2つの同軸表面を橋渡することで, 同軸コネクターの両端で計算された S パラメーターを再現することができます.

このモデルは, 2つの同軸コネクターのみで構成されており, それらの間の回路は2ポートネットワークに置き換えられています. 金属表面は, 動作周波数での損失が無視できると仮定して, 完全電気導体 (PEC) を使用して構成されています. 同軸コネクターの内部導体と外部導体の間のスペースには, 誘電率 εr = 2.1の無損失ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) が充填されています.

2ポートネットワーク機能の境界選択 (青).

同軸コネクターの各遠端は, 50オームの参照特性インピーダンスを持つ集中ポートの同軸タイプで終端されています. 同軸コネクターの内側の端, 残りの同軸境界は, 2ポートネットワークを挿入するために選択されます.

2ポートネットワーク機能の設定画面のスクリーンショット.

タッチストーンインポートオプションを備えた2ポートネットワーク機能の設定ウィンドウ.

境界条件の S パラメーター定義のタイプに応じてタッチストーンファイルを選択し, ファイルをインポートすることで, タッチストーンファイルのシミュレーションまたは測定された S パラメーター値に応じて, 周波数に依存した制約を選択した境界にマッピングすることができます.

このモデルのタッチストーンファイルは, RF モジュールアプリケーションライブラリで利用可能な集中定数を使用したローパスフィルターチュートリアルモデルの最初の部分から生成されています.

ローパスフィルターの集中定数モデルのイメージ図.

集中定数ローパスフィルター. タッチストーン出力ファイルはこのモデルからエクスポートされます.

このモデルは, インポートされたタッチストーンファイルと2つのコネクターだけで構成されています.

2ポートネットワーク機能を使用した新しいシミュレーションの周波数範囲がタッチストーンファイルの S パラメーターデータの周波数範囲内であるが, 周波数サンプリングポイントが互いに正確に一致していない場合, デフォルトでは S パラメーター値は, 3次スプラインに基づいて補間されます. シミュレーションの周波数範囲がタッチストーンファイルのデータの帯域幅を超えている場合は, タッチストーンファイルのデータの最初の値または最後の値を使って, S パラメーターを定数として外挿します. ポート1と2の場所は, 2ポートネットワークのサブ機能によって定義されます.

ローパスフィルターの応答を示す S パラメーターのプロット.

S パラメータープロットは, 完全なモデルと同じローパスフィルター応答を示しています.

最後に

2ポートネットワーク機能は, 1対のサーフェスに適用できる境界条件です. この機能は, インポートされたタッチストーンファイルまたはユーザー定義の定数 S パラメーターを使用した2ポートデバイスの周波数応答を表します. また, 数値モデリングドメインのジオメトリから望ましくない複雑さを取り除くことにより, シミュレーションモデルのサイズを縮小するために使用されます.

次のステップ

RF モジュールで利用可能な RF およびマイクロ波モデリングの特別な機能の詳細については, こちらをご参照ください:

こちらの2ポートデバイスモデルを試す

以下のアプリケーションギャラリの例は, このテーマに関するモデリングスキルを向上させるのに役立ちます:

コメント (0)

コメントを残す
ログイン | 登録
Loading...
COMSOL ブログを探索