確立されたベンチマークモデルによる津波の解析

2021年 4月 8日

津波は破壊的で動きが速く, 時速800 km にもなるものもあります. 海や湖などの水域で水塊が変位し, 一連の波が発生したときに起こる自然災害です. 本日のブログでは, COMSOL Multiphysics® バージョン5.6で利用可能な “浅水方程式 (陽的時間発展)” インターフェースを用いた津波に着想を得た実験のベンチマークモデルについてご紹介します.

1993年北海道地震

1993年7月, 日本海側でマグニチュード7.8の地震が発生しました. 参考までに, マグニチュード7.0~7.9 の地震は年に10~20回起こり, 設計の悪い構造物も良い構造物も同様に大きな損害を与えることが知られています. この地震は, 1993年北海道南西沖地震と呼ばれ, 日本列島で2番目に大きく最北端の北海道の南西55 km, 小さな島である奥尻島の北75 km の地点で発生しました.

注: 1900年以降, 日本ではマグニチュード7.0以上の地震が100回発生しています. 日本で観測された最大の地震は2011年に発生したものです. 2011年東北地方太平洋沖地震 と呼ばれるこの地震はマグニチュード9.0を記録し, その影響は世界中に及びました.

 

日本北部の島, 北海道の地図の画像.
北海道の地図. 画像はWikimedia Commonsを介して GNU Free Documentation License の下でライセンスされています.

1993年の地震で何度か津波が発生し, 北海道と奥尻島, 特に奥尻島に大きな被害をもたらしました. また, ロシア南東部沿岸や韓国東部沿岸も被害を受けました.

この 自然災害 は, 最終的に数百人の死者と数百棟の家屋の倒壊, 約6億ドルの財産損失をもたらし, その大部分は津波によってもたらされたものでした. 

津波がこれほど破壊的なものになったのはなぜでしょうか? 動いている間, その波は巨大な遡上高さに達し, そのうちの1つは, 高さ32 m (~104フィート) — 電柱の約3倍の高さ — であったという記録があります. この極端な津波の遡上痕は, 奥尻島の西海岸, 藻内地区の近くにある小さな谷, 藻内谷で発見されました.

ここでは, 実験規模での津波遡上解析のための確立されたベンチマークモデルについてご説明します.

シミュレーションによる津波と遡上高の解析

日本の我孫子市にある電力中央研究所 (CREIPI) の研究者は, 数値シミュレーションと物理実験を
使用して, 1993年の北海道南西沖地震で発生した極端な津波の遡上高の縮尺バージョンを大型実験水槽 (長さ205 m, 深さ6 m, 幅3.4 m) で再現することに成功しました. 実験室モデルの水深 (海洋, 海, 湖の深さの測定値) は, 実際の藻内谷の水深の1/400の大きさです.

地面と波がリアルな質感と色で可視化された, 海岸に押し寄せる津波の計算 3D モデルの画像.
“複雑な 3D 海岸への津波の遡上, 藻内谷” ベンチマークモデル.

上図の “複雑な 3D 海岸への津波の遡上, 藻内谷” ベンチマークモデルは, CREIPI で実施された実験結果を基に作成されています. CREIPI 実験水槽の長さ5.445 m, 幅3.402 mの小さな矩形領域をシミュレートしています. CREIPI 実験水槽と同様に, ここでモデル化されたタンクは静水で満たされ, その境界の1つに既知の入射波が加えられます.

モデルには 3つの “ドメインポイントプローブ” が搭載されており, 以下の3点での水位の変化を追跡することができます.

  • x = 4.52 m, y = 1.196 m
  • x = 4.52 m, y = 1.696 m
  • x = 4.52 m, y = 2.196 m

注: この作業では, “浅水方程式 (陽的時間発展)” インターフェースが多用されています. この機能により, 1D および 2D ドメインの自由表面流を深さ平均の定式化で解いたり, デジタル標高モデルからモデル内の底面地形を簡単に定義したりすることが可能です.

次に, ベンチマークモデルから得られた興味深い結果についてご説明します. このモデルを構築するためのステップバイステップの手順をご覧になりたい方は, こちらからダウンロードしてください. “複雑な 3D 海岸への津波の遡上, 藻内谷“.

ベンチマークの結果

全体として, 適用された波はモデル内の海岸線を前後に動かし, その過程でドメイン中央の小さな島を完全に水で覆っています.

 

シミュレーション実験中の津波遡上のアニメーション.

下の画像では, 到来する波の底面の高さとプロファイルを見ることができます.

到来する津波の底面地形をグレーで可視化した 3D プロット (左). 時間の経過とともに到来する津波のプロファイルをプロットした折れ線グラフ(右).
到来する波の底面地形 (左) とプロファイル (右).

下のグラフでは, 3つのドメインポイントでの水位計算結果を見ることができます. 底面地形が不規則であるため, 各ポイントで波が見える時間が異なっています. これらの結果は, 既存の文献の実験結果やシミュレーション結果とよく一致しています (チュートリアルモデルドキュメントの参考文献3参照).

津波の3つの異なるドメインポイントにおける水位を赤, 緑, 青でプロットした折れ線グラフ

米国海洋大気庁 (NOAA) は, 津波を研究する際にこの種のベンチマークモデルを使用することを推奨しています.

試してみましょう

ここでは結果に飛びましたが, 下のボタンをクリックすると, “複雑な 3D 海岸への津波の遡上” モデルの構築方法をご覧いただけます.

参考文献

他の分野のベンチマークモデルを以下のブログをご覧いただけます.

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