遺伝的アルゴリズムによるメタサーフェストポロジの仮想最適化

自然選択からヒントを得た最適化アルゴリズムを使用して, 光アンテナのメタサーフェスの最適な設計構成を決定します.


Sarah Fields著
2019年7月

エンジニアリングにおいては, 多くの場合, 自然界に目を向けて, 設計問題に取り組むための新しい方法のインスピレーションを見つけます. 翼の周りの流体の流れからインスピレーションを得て冷却装置のシステムを構築するか, スラッグスライムを研究してより良い医療用接着剤を発明するか, 鳥のくちばしに似せるように新幹線の鼻を設計するかに関わらず, 自然は最もとらえどころのないデザインソリューションの鍵を握っています.

本質的に, 最適化には調査中の系を管理する一連のパラメーターの中から入力値を体系的に選択することにより, 損失関数を最小化することが必要です. 電磁気のメタサーフェスの最適化という数学の密な世界でさえ, 当然, 自然がヒントを与えてくれます.

空軍工科大学(AFIT)のBryan Adomanis氏は, 3Dホイヘンスソースとして機能するピクセル化グリッドアンテナの作成を試みていました. つまり, 所望の振幅と位相遅延を維持しながら, 特定の方向にのみ伝播できる3D金属ナノ粒子ベースの光アンテナです. このようなアンテナの開発では, メタサーフェスのジオメトリが電磁応答の主要な推進力となります. このように, 「空白のスレート」のジオメトリ(この3Dピクセル(ボクセル)のグリッド)を最適化することで, 高い前方散乱と最小限の後方散乱を持つ最高のデザインを見つけることができます.

このアンテナを設計する際の難点は, 設計スペースが大きいことです. ボクセルは金または空気のいずれかとして存在する可能性があり, アンテナには非常に多くの可能な幾何学的構成があるため, 最適な設計を特定する方法が不明確でした. 最低解像度の設計でさえ, 240(1兆以上)の一意のモデルを生成できます(図1). 金と空気のボクセル(立方体)は, それぞれ青と灰色で表されます. COMSOL®ソフトウェアは, 遺伝的アルゴリズム(GA)ルーチンを使用して, 約2000~4000モデルで最適な解またはボクセルの配置を見つけます. また, ジオメトリとパフォーマンスのパターン(透過率と位相)の間に識別可能な相関関係がなかったため, 最小化する機能がありませんでした. したがって, これらの高度に非解析的モデルを効率的に求解するために, COMSOLモデルが実装されました.

Figure 1. Sample voxel and cavity geometries, which can be used for the genetic algorithm.

遺伝的アルゴリズムに使用できるサンプルのボクセルと空洞のジオメトリ.

基本的に, このピクセル化グリッドアンテナは散乱ユニットセルであり, 必要に応じて壁に誘電体や金属を配置できます. 約1兆の可能な構成から金属, ナノ粒子ベースのアンテナに最適なジオメトリを選択する際, 生物学的複製と自然選択に触発されたルーチンを使うことが最適でした.

遺伝的アルゴリズムルーチン

「問題の非線形性と大きなパラメーター空間のため, 他の最適化手法は不十分でした. なぜなら, 計算量が多すぎるか, グローバルな最小値を見つけるために信頼できなかったからです. この場合は, 遺伝的アルゴリズムが最適だ」とAdomanis氏は説明する.

遺伝的アルゴリズム(図2)では, 遺伝子と見なすことができる設計パラメーターは, 設計パラメーターのグループまたは染色体内に存在します. 設計パラメーターの各グループは, 一意の設計, または個人として考えることができるものを表し, 全ての一意の設計が総母集団を形成します. 母集団内の各個人の適合度がスコアリングされます. これにより, 個人が次世代の個人の親になる可能性がわかります.“

Figure 2. Genetic algorithm solution steps.

遺伝的アルゴリズムソリューションのステップ.

彼の遺伝的アルゴリズムの実装では, 異なるボクセル配置またはアンテナ設計を表す個人で人口を初期化します. 彼は, MATLAB® を使用して母集団を作成し, そのバイナリ表現または 「マスク」 を生成しました. これによって, 一意のパラメーターの各セットのGAルーチンが入力され, COMSOL モデルにフィードされます.

次に, マルチフィジックスシミュレーションを使用して, 母集団内の各個人または固有の設計, または一連の固有設計の適合度を評価しました. 個人は, 望ましい散乱を表す適合しきい値が満たされると適合します. 個体群または固有のモデルの集合, または固有のモデルのセットの適合度が計算された後, しきい値を満たさない個体はルーチンから削除されます. 次に、次世代のモデル, つまり 「子供」 は, 適合しきい値を満たし, 2つのバイナリ表現の部分文字列が子供に連結される「クロスオー バー」と, バイナリ文字列内のビットが切り替えられる「変異」によって形成された固有のモデルから読み込まれます. Adomanis氏は, MATLAB® 用のアドオン製品LiveLink™を介して, MATLAB® とCOMSOL Multiphysics® を統合しました.

最高の設計への収束

光アンテナのメタサーフェスに最適なトポロジを特定するために, Adomanis氏は, 振幅を維持しながら特定の方向の全場透過率の位相遅延を最適化する必要がありました. 電磁モデリング機能はこの目的で使用され, 結果として物理の複雑さをあまり深く掘り下げることなく, ボクセル構成の多くのセットを通過するようにGAルーチンを設定し, 結果の電磁放射を計算できるようになりました. 図3は, 最適化の様々な段階におけるアンテナから生じる磁場を示しています.

Figure 3. Simulation results showing the magnetic field (scaled in terms of V/m) resulting from the optical antenna in intermediate steps of optimization. As the topology forms, so do strong magnetic modes.

最適化の中間段階で光アンテナから発生する磁場(V/mでスケーリング)を示すシミュレーション結果. トポロジが形成されると, 強い磁気モードも形成されます.

ある世代の個体が評価され, 親が選択され, 子の世代が入力され, 子の世代の個体が評価されると, ルーチンが続行され, 母集団は最良の設計に移行します(図4). 遺伝的アルゴリズムルーチンを使用して, COMSOL® ソフトウェアは, 約1兆の可能な設計のパラメーター空間と比較して, 数千のモデルで最高の設計を生成しました.

Figure 4. Plot of the transmittance, or the scattering parameter |S21| 2, against the phase. Generations are distinguished with color.

透過率または散乱パラメーター |S21|^2 の位相に対するプロット. 世代は色で区別されます.

このルーチンにより, アドマニス氏は様々な位相値で透過率を最大化できました. 30世代以内で人口のユニークなデザインが彼のパフォーマンス基準を満たし始めました(図5).

Figure 5. Genetic algorithm optimization of the geometry of an optical scatterer called the omega particle. The aim is to design a scatterer with, from left to right, maximum forward scattering and minimal backward scattering.

オメガ粒子と呼ばれる光散乱体の形状の遺伝的アルゴリズムによる最適化. 目的は, 左から右に, 前方散乱が最大で後方散乱が最小の散乱体を設計することです.

多数の目的関数を持つ解空間でパフォーマンスを視覚化することにより, Adomanis氏は特定のアプリケーションにとって最も重要な基準に基づいて設計を選択することができました. ある設計では最高の透過率を優先し, 別の設計では位相遅延の精度を優先したりしました.

Adomanis氏は, 後方散乱がほとんどなく, 前方のみに全電界を生成するピクセル化グリッドから, 共局在化した電気双極子と磁気双極子を正常に生成することに成功しました. GAルーチンと電磁気シミュレーションを組み合わせることにより, 2π位相空間全体で機能する光アンテナを生成することができました. 図5で例を示します.「この作業は, ピクセル化グリッドアンテナのトポロジが3Dの遺伝的アルゴリズムで最適化された初めての事例です」とAdomanis氏は言います.

最先端設計による実現化

Adomanis氏がGAルーチンから最適な設計を決定した後, 次の課題は最適化された設計に基づいて実際のプロトタイプを作成することです. ただし, 光アンテナの最小の特徴は約100ナノメートルであるため, この概念を実装するには, 専用の新しく開発された製造プロセスが必要でした.

これを実現するために, Adomanis氏は, アンテナを印刷する機能を備えたサンディア国立研究所の研究チームと協力しています. 彼は単に, シミュレーションで最適な散乱をもたらした最適化されたピクセル化グリッドをグループに提供します. 「モデル内の個々の要素の結果を使用して, 適切に機能するフルスケールのシミュレーションレンズを構成したので, 設計が適切に機能していることを確信しています」Adomanis氏は, 「ボクセルの任意の配列の電磁気計算の詳細ではなく, GAルーチンを実装して設計を最適化することに集中できるため, アンテナのパフォーマンスを計算するために COMSOL を使用できたことは強力でした」と結論付けています.

Bryan Adomanis, 空軍工科大学.



MATLAB はThe MathWorks, Inc. の登録商標です.

ダウンロード