ローターダイナミクスモジュールアップデート

ローターダイナミクスモジュールのユーザー向けに, COMSOL Multiphysics® バージョン5.6には, 能動型磁気軸受モデリング, ローターとステーター接続用のアタッチメントおよび流体力学ジャーナル軸受の乱流効果モデル化機能が追加されました. 具体的な内容は下記を参照してください.

能動型磁気軸受

能動型磁気軸受 (AMB) は, フィードバック制御機構がサポートする電磁軸受です. 固体ローターと梁ローターの両インターフェースでPIDコントローラーを使用してこのような軸受のモデル化が可能です. 他の軸受同様,静止部品上の回転部品をサポートします. また,能動型磁気軸受は,必要に応じて大振幅の振動制御にも使用できます. このような軸受は潤滑剤の使用が禁止されている環境で一般的に使われています. 非接触サポートによりこのタイプの軸受の損失を最小限に抑えることが可能です. この機能は Vibration Control in a Motor Drive Using an Active Magnetic Bearing チュートリアルモデルで使われています.

能動型磁気軸受のないモーター駆動の振動応答
能動型磁気軸受のあるモーター駆動の振動応答

ロータースターター接続のためのアタッチメント

ローターとステーターの部品を接続するための軸受の基礎としてアタッチメントが使用できるようになりました. これをサポートするのに, アタッチメントは固体力学,シェル, 梁などの構造力学インターフェースで利用できます. この機能により, 軸受を介して静止部品と回転部品の間を容易に接続できるようになりました. この新機能は Modeling of Vibration and Noise in a Gearbox: Bearing VersionVibration Control in a Motor Drive Using an Active Magnetic Bearing チュートリアルモデルで使われています.

A gearbox model with the top of the housing cut out to show the internal gears and shafts; the velocity is shown in teal and purple; the stress is shown in red, yellow, and green; and the SPL is shown in rainbow.
ハウジングはアタッチメントを介してシャフトに接続されています. 結果にはギアとシャフトの速度, ハウジング内のフォンミーゼス応力および音圧レベルが示されます.

A motor drive assembly model with the stress visualized in a rainbow color table.
電動機駆動アセンブリの応力; モーターハウジングとプラットフォームは, アタッチメントを使用してローターに接続されています.

流体力学的ジャーナル軸受の乱流効果

流体力学的ジャーナル軸受の乱流効果は, 一連の流動係数とせん断応力係数を使用して平均的にモデル化できるようになりました. この効果は下記のケース2つにおいてモデル化可能です:

  • ジャーナルと軸受の表面が十分に滑らかなローターが高速なために引き起こされる乱流
  • ジャーナルとブッシング表面の粗さによって引き起こされる乱流

2つ目のケースでは, 完全被膜潤滑と混合潤滑の2種類の潤滑方式のモデル化が可能です. 完全被膜潤滑の場合, 接触荷重は潤滑フィルム内の圧力によってのみ支えられ, 混合潤滑では接触荷重が潤滑膜圧力と凹凸接触圧力の両方によって支えられます. 混合潤滑モデリングは,高負荷の接触面において重要です.

A closeup view of the COMSOL Multiphysics version 5.6 UI showing the Model Builder, Hydrodynamic Journal Bearing settings, and the Graphics window containing two pressure plots for a journal bearing.
ジャーナル軸受のフィルム圧力と凹凸接触圧力.

ローラー軸受の事前荷重

ローラー軸受の事前荷重は, ローラーとレース間の接触の均一化に使用され, 軸受の振動や騒音, 摩耗の減少に役立ちます. ローラー軸受のタイプに応じて軸方向または半径方向の事前荷重を加えることができます. 事前荷重軸受の場合, 事前応力解析を実行し, ローラー軸受系の固有振動数と周波数応答を決定することもできます.

A closeup view of the COMSOL Multiphysics version 5.6 UI showing the Model Builder, Radial Roller Bearing settings with the Geometric Properties and Clearance and Preload sections expanded, and the Graphics window containing a Campbell plot.
ローラー軸受の事前荷重設定を示すモデルのスナップショット.

気体軸受の動的係数改善

これまで軸受の動的係数の計算において潤滑剤の圧縮率は無視されていました. 液体潤滑剤の場合はこれでも適切に算出できますが, 気体軸受の場合は動的係数の正確な計算に気体の圧縮率と旋回中のジャーナル加速の影響が非常に重要です. これらの影響はどちらも気体軸受動的係数計算において考慮されます.

A 1D plot of the effect of compressibility for a bearing.
軸受の剛性に対する潤滑剤の圧縮率の影響

動的係数の評価グループ

軸受の動的係数計算することを選択した場合, 評価グループがデフォルトとして自動的に結果に含まれます. 計算が完了すると, このグループを使ってテーブル内の動的係数を評価できます. パラメトリックスタディを実行した場合は, 各パラメーター値の係数が表に示されます. 調べたパラメーターに関する各係数の変動をテーブルプロットにすばやく作成することが可能です. この新機能は更新された Evaluation of Dynamic Coefficients of a Plain Journal BearingDamping Coefficients of a Squeeze Film Damper で使われています.

A closeup view of the COMSOL Multiphysics version 5.6 UI showing the Model Builder, Evaluation Group settings, and the Graphics window containing a plot of dimensionless stiffness and the Dynamic Coefficients tab open.
軸受の動的係数の計算. 評価グループが強調されます.

新しいチュートリアルモデル

COMSOL Multiphysics® バージョン5.6ではいくつかの新しいチュートリアルモデルがローターダイナミクスモジュールに加わりました.

能動型磁気軸受を使ったモーター駆動中の振動制御

A 1D plot of vertical displacement at coupling with and without AMB and two 3D simulations overlaid on the plot.
ローターの特定位置に能動型磁気軸受がある場合とない場合の振動応答の比較. 能動型磁気軸受がある場合とない場合の特定インスタンスでの応力プロファイルが示されています.

アプリケーションライブラリタイトル:

vibration_control_with_amb

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ローター中の軸受熱損失による熱応力

Two 3D models of a rotor, where one shows temperature in white-to-red color gradient and the other shows stress in a rainbow color table.
ローター中温度 (左) と応力 (右) プロファイル

アプリケーションライブラリタイトル:

rotor_thermal_stress

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ギアボックス中の振動とノイズモデリング: 軸受バージョン

A gearbox model with the top of the housing cut out to show the internal gears and shafts; the stress is shown in rainbow and the bearing forces are shown with black arrows.
ハウジング中の応力とギアとシャフトの速度. ベアリング力は黒の矢印で表されています.

アプリケーションライブラリタイトル:

gearbox_vibration_noise_bearing

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