多孔質媒体流れモジュールアップデート

多孔質媒体流れモジュールのユーザー向けに COMSOL Multiphysics® バージョン6.0は, 多孔質媒体の有限構造変形をモデル化するための新しいマルチフィジックスインターフェース, ペレットベッドのマルチスケール熱伝達をモデル化するための新しい充填ベッドインターフェース, および多孔質材料の処理の改善をもたらします. これらのアップデートの詳細については以下をご覧ください.

大ひずみ多孔質弾性

新しい多孔質弾性 (大変形) (固体) マルチフィジックスインターフェースにより, 多孔質体の有限構造変形をモデル化できます. これは以前のバージョンから利用可能な多孔質弾性 (固体) マルチフィジックスインターフェースと同じですが, 大きな変形と回転を追跡できる追加の弾性事前変形ノードがあります. このインターフェースは, フィジックス追加ツリーの構造力学フォルダーの多孔質弾性ブランチにあります. この新しいインターフェースには構造力学モジュールが必要です.

多孔質媒体中2相流れ

新しいマルチフィジックスインターフェースは, ブリンクマン方程式とレベルセットインターフェースを組み合わせ, 2相流 (レベルセット) カップリングノードを自動的に追加します. ブリンクマン方程式を使用して, 運動量の保存と質量の連続性を求解します. 多孔質媒体内の2つの非混合流体間の界面はレベルセット関数で追跡されます.

Resin showed in the Aurora Australis color table, injecting into an empty mold model.
空の型への樹脂注入. 新しいインターフェースは注入面を追跡します. 金型には1つの入口と3つの出口があり, 中央に多孔質ブロックがあり最初は空気で満たされています.

多孔質媒体中の非等温流れ

新しい非等温流 (ブリンクマン方程式) マルチフィジックスインターフェースは, 多孔質媒体内の熱伝達と流体の流れの間の連成を自動的に追加します. これは, 伝熱 (多孔質媒体) およびブリンクマン方程式インターフェースを組み合わせたものです. この新機能は既存の Free Convection in a Porous Medium チュートリアルモデルで使われています.

A porous structure showing the temperature in the Heat Camera color table.
チュートリアルの例である多孔質媒体内の自然対流は新しい非等温流機能を利用しています. 温度勾配とそれに続く自然対流にさらされた多孔質構造の温度 (K).

ブリンクマン方程式インターフェースの多孔質スリップ

多孔質媒体内の流れの境界層は非常に薄く, ブリンクマン方程式モデルで解くのは実用的でない場合があります. 新しい多孔質スリップ壁処理オプションを使用すると, 境界層の完全な流れプロファイルを解像せずに壁を考慮することができます. 代わりに応力条件が表面に適用され, 境界層速度プロファイルの漸近解を利用することにより, バルク流れに適切な精度が得られます. この機能は ブリンクマン方程式インターフェース設定ウィンドウで有効化され, デフォルトの壁の状態に使用されます. この新機能はブリンクマン方程式で記述された地下水流を含み, モデル領域が大きいほとんどのモデルで使用できます.

A porous reactor model showing the flow and concentration in the Rainbow color table.
多孔質反応器モデルの流れ場と濃度場.

各段に向上した多孔質材料の取扱い

多孔質材料は多孔質材料ノードの相固有特性テーブルで定義されるようになりました. さらに, サブノードは各フェーズに複数のサブノードを定義できるソリッドおよび流体機能に追加できます. これにより, 材料特性と設定を複製することなく, 流体流れ, 化学種輸送, および熱伝達に1つの同じ多孔質材料を使用できます.

A closeup view of the Model Builder with the Porous Material node highlighted, the corresponding Settings window, and a packed-bed reactor model in the Graphics window
充填ベッドのマルチスケールモデルで例示されている多孔質材料の新しい材料ノード.

ペレットベッド中のマルチスケール熱伝導

ペレットベッドの熱伝達をモデル化するために, 新しい伝熱 (充填ベッド) インターフェースが追加されました. ペレットベッドは流体とペレットで構成される多孔質媒体として表されます. ペレットは温度が放射状に変化する球状の均質化された多孔質粒子としてモデル化されます. ペレット内の温度分布は, 充填ベッドのすべての位置について計算されます. それはペレットの表面と流体の間の間質熱流束を介して周囲の流体の温度に結合されます.

この新しい機能は, 化学種の輸送に対応する機能と組み合わせると, 充填ベッド熱エネルギー貯蔵システムの熱または充填ベッドの化学反応をモデル化するのに役立ちます. この機能は, 新しいPacked Bed Thermal Energy Storage System チュートリアルモデルで使われています.

A single pellet bed model showing the temperature distribution within in the Heat Camera color table.
ジオメトリの中央にある固体ペレット内の温度分布.

Eleven pellet beds on a domain showing the temperature distribution in the Heat Camera color table.
ドメイン全体の流体とペレット温度.

水分の蒸発と凝縮のための壁の速度

蒸発や凝縮などの表面反応は, 表面と周囲のドメインとの間に正味の蒸気流束をもたらします. このタイプの反応は, ステファン速度と呼ばれるドメイン境界での有効な湿った空気の速度に対応します. 大きな蒸発率が予想される場合は常に, 系の全体的な動作において重要になる可能性があるため, ステファン流れを考慮に入れる必要があります. 水分流れマルチフィジックスカップリングで濃縮種定式化が水分輸送インターフェースで使用されている場合, 壁のステファン速度を考慮チェックボックスが使用可能になりました. これは, 温度が高く, 通常は50°Cを超える蒸発および凝縮の応用で推奨されます. この機能は Modeling of Stefan Flow Due to Evaporation from a Water Surface チュートリアルモデルで使われています.

A model with isosurface plots showing the relative humidity in blue and red streamlines showing the velocity.
周囲温度が90°Cの場合の蒸発面上のステファン流れによる相対湿度等値面と速度流線.

水分輸送の改善

水分輸送インターフェースに周期条件機能が導入されました. これにより, 周期構造のシミュレーションドメインを縮小したり, 代表的なセルから有効な特性を評価したりできます. さらに吸湿性多孔質材料機能が更新され, 多孔質材料機能の従来のデザインと一致するようになりました. エネルギーバランスの変数が最適かされ, はるかに高速に評価できるようになり, 物質収支をチェックするための新しい変数が利用可能になりました. これらの改善は, 新しいDrying of a Potato Sample チュートリアルモデルと次の既存のモデルで見ることができます:

A 2D potato sample model showing the relative humidity in the Jupiter Aurora Borealis color table.
乾燥空気の流れにさらされたジャガイモサンプルの相対湿度.

伝熱 (多孔質媒体)

多孔質媒体の伝熱機能が刷新され, よりユーザーフレンドリーになりました. 新しい多孔質媒体のフィジックスエリアは, 伝熱ブランチの下に備わっており, 多孔質媒体の伝熱, 局所熱非平衡, パックドベッドの伝熱などのインターフェースが利用可能です. これらすべてのインターフェースの機能は似ていますが, 異なる点は, インターフェース内のデフォルトの多孔質媒体ノードで, 局所熱平衡, 局所熱非平衡, またはパックドベッドの3つのオプションの内, いずれかが選択されていることです. 後者のオプションについては前述のとおりです. マルチフィジックスカップリングの代替として登場した, 局所熱非平衡インターフェースは, 流体相と固相の2つの温度モデルに対応しています. 典型的な応用例として, 多孔質媒体を急速に加熱または冷却することが挙げられます. これは, 金属発泡体のように, 液相では強い対流が, 固相では高い伝導があるためです. 局所熱平衡インターフェースを選択すると, 多孔質媒体の構成に応じて, 有効な熱伝導率を定義するための新しい平均化オプションが利用できます.

さらに, 後処理のための変数は, 3種類の多孔質媒体の均質化された量を統一した形で利用できます. この新しい多孔質媒体の機能は, 以下の既存のチュートリアルモデルで確認できます: