半導体モジュールアップデート

COMSOL Multiphysics®バージョン6.0では, 半導体モジュールのユーザー向けに, 離散的な捕獲エネルギー準位間の遷移機能, 金属コンタクトにコンタクト抵抗を加える機能, および熱モデリングのための新たなヘテロ接合熱源機能が備わっています. 半導体モジュールのアップデートに関する詳細は以下をご覧ください.

離散的な準位間の遷移

明示的捕獲オプションが選択され, 2つ以上の離散的な捕獲エネルギー準位が作成されると, 3つの捕獲アシスト再結合機能 (ドメイン, 境界, ヘテロ界面) の属性として, 新たな離散準位間の遷移機能が利用できます. この機能により, 捕獲準位間の減衰寿命を指定し, 量子井戸や量子ドットを捕獲準位として扱うことで, 量子準位間の遷移をシミュレーションすることができます. この新機能は, A Solar Cell with InAs Quantum Dots Embedded in AlGaAs/GaAs Quantum Wellsチュートリアルモデルで確認できます.

A closeup view of the COMSOL Multiphysics UI showing the Model Builder with the Transition Between Discrete Levels node highlighted, the corresponding Settings window, and 1D plot in the Graphics window.
新しい遷移機能を用いて, 構成される量子井戸と量子ドットの間の遷移をモデル化した太陽電池モデル.

コンタクト抵抗

金属コンタクト境界条件に, コンタクト抵抗オプションが追加されました. コンタクトタイプはオーミックとショットキーの両方で, 駆動モードは, 電圧, 電流, 電力, 回路電流, 回路電圧の5種類すべてに対応しています. この機能は, 設定ウィンドウのコンタクト抵抗チェックボックス (デフォルトでは無効) を選択することで有効になります. これにより, より現実的かつ実用的な金属コンタクトのモデリングが可能になります. この新しいオプションは, A Cross-Bridge Kelvin Resistor Model for the Extraction of Specific Contact Resistivityチュートリアルモデルで確認できます.

A cross-bridge Kelvin resistor model showing the electric potential in the Prism color table and the current density shown in arrows and streamlines.
コンタクト抵抗測定用のクロスブリッジケルビン抵抗器の電位 (カラー) と電流密度 (矢印と流線).

Klaassen による統一移動度モデル (LIC)

半導体インターフェースに, 半導体材料モデルノードで利用可能な Klaassen による統一移動度モデル機能 (Philips による統一的移動度モデルと呼ばれることもあります) が追加されました. このモデルでは, 格子 (L), ドナー (I), アクセプター (I), およびキャリア-キャリア (C) 散乱効果を組み合わせることで, 総キャリア移動度が与えられます. この移動度モデルには, 電荷キャリアによる不純物のスクリーニングと, 高濃度なドーピングにおける不純物のクラスタリングが含まれています. この新機能は, Trench-Gate IGBT 3DTrench-Gate IGBT 2D チュートリアルモデルで確認できます.

A 3D trench-gate IGBT model showing the electron concentration in the Prism color table and current streamlines.
Klaassenによる統一的移動度モデル 機能を取り入れたIGBTのモデル.

ヘテロ接合の熱源

ヘテロ接合におけるジュール熱の境界熱源への寄与が, 半導体インターフェースの組み込み変数に追加されました. これにより, ヘテロ構造の熱の連成解析を容易に行えるようになりました.

新しいデフォルトのソルバー

フィジックスで推奨された新しいソルバーシーケンスが半導体インターフェースに追加され, 場依存の移動度や衝突電離の生成を伴うモデルのスタディ設定のストリームライン化が実現しました. 以下は, 新しいソルバーシーケンスによってより効率的になった, 既存のアプリケーションライブラリモデルです:

捕獲機能

明示的な捕獲オプションが選択されている場合, 追加の電子および正孔捕捉確率を指定する新しいオプションが, 捕獲アシスト再結合機能 (ドメイン, 境界, およびヘテロ界面) の離散エネルギー準位属性に追加されました. 連続的エネルギー準位機能は, バンドギャップ外側の捕獲エネルギー準位の範囲を拡大し, 捕捉確率が捕獲エネルギー準位に依存させることで強化されました. 密度勾配定式化の捕獲機能は, (捕獲フェルミ準位とは対照的に) 捕獲占有率を解く新しいオプションによって強化されました.

移動度モデル

Caughey-Thomas 移動度モデルは, 駆動力を定式化するためのいくつかの新しいオプションによって強化され, さまざまなタイプの駆動力に関心のあるユーザーにとって汎用性が高まりました.

金属コンタクト

金属コンタクト境界条件に, 端子の平均電流密度のための新しい組み込みグローバル変数が追加され, 比較のためのスケールに依存しない出力量を容易に取得できるようになりました.

新規およびアップデートされたチュートリアルモデル

COMSOL Multiphysics®バージョン6.0では, 半導体モジュールにいくつかのチュートリアルモデルが新たに追加されました.