RF モジュールアップデート

RF モジュールをご使用の場合, COMSOL Multiphysics® バージョン 5.2a ではシミュレーション方法が新しくなり, バンドパスフィルタータイプの装置設計の迅速化, レーダー断面のモデル作成の新機能等, 機能が強化されています. RF モジュールのアップデートの詳細は, 以下のとおりです.

バンドパスフィルタータイプのデバイスへの迅速なモデリングアプローチ

アプリケーションライブラリで示されるバンドパスフィルタータイプの高Q 装置の既存の設計例に, 漸近波形評価法と周波数領域モード法という2つの強力なシミュレーション方法が実装されました. その結果として, このタイプの装置の従来の周波数スイープと比較してシミュレーション速度が数十倍速くなります. 周波数領域で有限要素法 (FEM) を用いてバンドパスフィルタータイプの 高Q 装置をシミュレートする場合, 通過帯域を十分かつ正確に記述するため詳細な周波数スイープが必要となる状況に遭遇することがよくあります. シミュレーション時間は, シミュレーションスイープの際に含まれる周波数の数に直接比例します. 上記の新しい方法により, 計算時間が大幅に短縮されます.

漸近波形評価法の使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

RF_Module/Passive_devices/cylindrical_cavity_filter_evanescent

周波数領域モード法の使用例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

RF_Module/Passive_devices/cascaded_cavity_filter

RF_Module/Passive_devices/coupled_line_filter

RF_Module/Passive_devices/cpw_bandpass_filter

Comparison of an S-parameter analysis using the asymptotic waveform evaluation (AWE) and the regular FEM frequency sweep methods. The AWE method is about 50 times faster in this example. Comparison of an S-parameter analysis using the asymptotic waveform evaluation (AWE) and the regular FEM frequency sweep methods. The AWE method is about 50 times faster in this example.

漸近波形評価 (AWE) 法と正規の FEM 周波数スイープ法によるSパラメーター解析の比較. この例では, AWE 法が約50倍に高速化されていることが示されています.

バイスタティックレーダー断面 (RCS) の遠方場変数のポストプロセス

バイスタティックレーダー断面 (RCS) を計算するフィジックスインターフェースにポストプロセス変数を追加しました. これらのポストプロセス変数を遠方場プロットで使い, レーダーで計測した散乱体のサイズを視覚化できます. バイスタティック RCS 変数 bRCS3D では, 別々に配置した送信機と受信機によって計測した RCS について解説されており, またモノスタィテック RCS をプロットすることもできます. 2D モデルについては, 演算子 bRCS2D を用いて単位長あたりのバイスタティック RCS のモデルを作成できます.

bRCS3D ポストプロセス変数を用いたバイスタティック RCS のプロット例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

RF_Module//Verification_Examples/rcs_sphere

bRCS2D ポストプロセス変数を用いたモノスタティック RCS のプロット例を示すアプリケーションライブラリへのパス:

RF_Module/Scattering_and_RCS/radar_cross_section

一般的な押し出し演算子と単位長あたりのバイスタティック RCS 変数(bRCS2D9) を用いて視覚化した単位長あたりのモノスタティックレーダー断面(RCS). 一般的な押し出し演算子と単位長あたりのバイスタティック RCS 変数(bRCS2D9) を用いて視覚化した単位長あたりのモノスタティックレーダー断面(RCS).

一般的な押し出し演算子と単位長あたりのバイスタティック RCS 変数(bRCS2D9) を用いて視覚化した単位長あたりのモノスタティックレーダー断面(RCS).

2ポートネットワークシステム

2 ポートネットワーク機能では, S パラメーターを使い, 反射と透過などの2ポートネットワークシステムの応答を特徴づけます. 2 ポートネットワーク機能は, 集中ポート機能と同様, 完全導体条件, インピーダンス境界条件, または遷移境界条件が適用され, 波長よりもかなり短い距離だけ離れている2つの金属境界間にのみ適用することができます. デフォルトにより, 一対の 2ポートネットワークポート サブノードが 2ポートネットワーク ノードに追加されており, S パラメーター入力のポート 1 とポート 2 にそれぞれ対応する境界を選択する際に使用します.

完全整合層 (PML) のアップデート

完全整合層機能にオプションが幾つか追加され, 層特性をカスタマイズできるようになりました.

  • ソルバーの Enable/disable PMLs (PMLの有効化/無効化) オプションは、計算上の電場を散乱源とする散乱問題をモデル化する場合に有用です.
  • ユーザー定義のジオメトリタイプオプションは、PML が非標準ジオメトリを持つ場合に使用することができ, また自動 PML ジオメトリ検出に失敗した場合にも使用できます.
  • ユーザー定義の座標ストレッチング機能を選択して, PML 伸縮を定義することができます. つまり, PML 内部のスケーリングを調整して, 例えば具体的なフィジックス構成の弾性波を非常に効率的に吸収することができます.

アップデートされたアプリケーション: プラズモニックワイヤーグレーティングアナライザー

表面プラズモンを使用した回路は, プラズモンチップ, 光生成, ナノリソグラフィーなどの用途に用いられています. プラズモニックワイヤーグレーティングアナライザーアプリケーションは, 屈折係数, 鏡面反射, 一次回折を, 誘電体基板のプラズモニックワイヤーグレーティングの入射角の関数として計算します. このモデルは格子の単位セルを記述し, フロケ境界条件によって周期性を定義します. ポストプロセス機能を使い, 単位セルの数を拡張したり, 表示を抽出して3次元表示することができます. アプリケーションには, 平面波の入射角を法線角からグレージング角まで格子構造上でスイープできる機能が組み込まれています. また, 導線の半径を変化させたり, 単位セルの周期性やサイズを変化させることができます. この他にも, 偏光の波長や方向等のパラメーターを変更することができます. このアプリケーションでは, 選択した入射角に対する複数の格子周期性の電場ノルム, すべての反射モードおよび透過モードの入射波ベクトルと波数ベクトル, 反射率と透過率の結果が示されます.

アプリケーションライブラリへのパス:

Wave_Optics_Module/Applications/plasmonic_wire_grating

プラズモニックワイヤーグレーティングアナライザアプリケーションは, 誘導体基板の導線格子について, 透過波と反射波の回析効率と, 一次回析次数と二次回析次数を計算します. プラズモニックワイヤーグレーティングアナライザアプリケーションは, 誘導体基板の導線格子について, 透過波と反射波の回析効率と, 一次回析次数と二次回析次数を計算します.

プラズモニックワイヤーグレーティングアナライザアプリケーションは, 誘導体基板の導線格子について, 透過波と反射波の回析効率と, 一次回析次数と二次回析次数を計算します.

新しいチュートリアルモデル:EMI/EMC 試験のための対数周期アンテナ

対数周期アンテナは, 八木・宇田アンテナと似た形状をしていますが, 共平面アレイから構成されており, 帯域が広くなっています. このアンテナは, 広帯域アンテナまたは周波数に依存しないアンテナとも言います. 完全導体 (PEC) 境界条件を適用してすべての金属部品をモデル化しています. アンテナは集中ポートによって励起され, 抵抗器を持つ集中要素を用いて励起を終端させます. 結果にはスミスプロットのインピーダンス整合特性が示され, また遠方場極座標プロットも示され, 周波数の増加に従い放射パターンの指向性が僅かに変化することが分かります. 3D 遠方場放射パターンも同様の傾向を示しています. また, アンテナの電圧定在波比 (VSWR) も示されます.

アプリケーションライブラリへのパス:

RF_Module/Antennas/log_periodic_antenna

対数周期アンテナは, 共平面ダイポールアレイを2つの金属本体フレームを介して取付け, モデル化します. 対数周期アンテナは, 共平面ダイポールアレイを2つの金属本体フレームを介して取付け, モデル化します.

対数周期アンテナは, 共平面ダイポールアレイを2つの金属本体フレームを介して取付け, モデル化します.

新しいチュートリアルモデル:隣接するマイクロストリップラインに関するシグナルインテグリティ (SI) と時間領域反射 (TDR) 解析

シグナルインテグリティ (SI) 解析により, 高速相互接続, ケーブル, プリント基板等, 電気回路に流れる電気信号の品質について概要が分かります. 受信信号の品質は回路外からのノイズによって歪む可能性があり, またインピーダンスミスマッチ, 挿入損失 (インサーションロス) クロストークによって劣化する可能性があります. このような理由から, EMC/EMI 解析を実行して装置やネットワークが望ましくないカップリングの影響を受けやすいかどうかを予測します. このチュートリアルモデルでは, 一定の誘導率を持つマイクロ波基板上の2つの隣接するマイクロストリップ線路間のクロストーク効果について検討します. シミュレーションでは, 2つのパルスを装置に印加し, パラメトリックスイープによってパルスの周波数が切り替わります. このシミュレーションによって結合ポートでの時間領域反射 (TDR) 応答が示され, 周波数が大きくなったりデータレートが速くなるほど信号の歪みが大きくなることが分かります.

アプリケーションライブラリへのパス:

RF_Module/Transmission_Lines_and_Waveguides/microstrip_line_crosstalk

マイクロストリップラインクロストークモデルは, 接地平面および2つの隣接するマイクロストリップラインを設けたマイクロ波基板から構成されます.
電場の対数ノルムのコンタープロットは, 2つのマイクロストリップライン間の電場のカップリングを示します. マイクロストリップラインクロストークモデルは, 接地平面および2つの隣接するマイクロストリップラインを設けたマイクロ波基板から構成されます. 電場の対数ノルムのコンタープロットは, 2つのマイクロストリップライン間の電場のカップリングを示します.

マイクロストリップラインクロストークモデルは, 接地平面および2つの隣接するマイクロストリップラインを設けたマイクロ波基板から構成されます. 電場の対数ノルムのコンタープロットは, 2つのマイクロストリップライン間の電場のカップリングを示します.