スタディとソルバーアップデート

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.4 では, 新しい疎パターン再利用によるメモリアロケーションのおかげで, 新しいプロセッサーを搭載した Windows® で, CFDのシミュレーションが最大で15% 速くなりました. また, パラメーターグループのパラメトリックスイープやパラメトリックスイープの最適化などのアップデートも含まれています. スタディとソルバーのアップデートの詳細は以下をご覧ください.

Windows® OSでの計算が数倍高速化

新しいメモリアロケーションの効率的な方法により, Windows® OSの一部のプロセッサーアーキテクチャーで全体の求解パフォーマンスが数倍改善されました. この改善は8コア以上を使用する際に最新のプロセッサーアーキテクチャーだけで見ることができます. macOS と Linux® OSでは従来からこのレベルのパフォーマンスは得られていました.

最大15%の高速化

COMSOL Multiphysics® では前の行列アセンブリとソルバーステップからデータを再利用していました. 新しいバージョンでは, それを前のステップからのシステム行列疎パターンを再利用する新しいソルバー機能に発展させました. これは非線形と時間依存解析にとって重要です. この機能は最大で数%多くメモリを使いますが, 通常最大で15%の求解時間を節約します. 流体流れ, 輸送現象, 構造力学の多くのフィジックスインターフェースで新しい疎パターンを再利用オプションがデフォルトで有効になっています. 他のフィジックスではデフォルトで無効になっていますが, ソルバーノードの詳細>アセンブリ設定でマニュアルで有効化することができます.

A screenshot of the Reuse sparsity pattern option. 疎パターン再利用オプションの有効/無効切り替え設定
疎パターン再利用オプションの有効/無効切り替え設定

パラメーターケースのパラメータースイープ

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.4 では複数のパラメーターノードを作成することでパラメーターを構造化することができます. さらに,パラメーターノードはケースをサポートするようになり, ファイルにインポートやエクスポートせずにパラメーター値の異なるセット間での切り替えができるようになりました. パラメトリックスイープ機能に関しては, 異なるパラメーターケースをスイープする新しいパラメーター切替オプションができました.

A screenshot of the Parametric Sweep settings in COMSOL Multiphysics version 5.4 材料とジオメトリの2つのパラメーターグループ(それぞれ2セットずつの値); パラメトリックスイープは全ての4つのケースの組合せを解きます.
材料とジオメトリの2つのパラメーターグループ(それぞれ2セットずつの値); パラメトリックスイープは全ての4つのケースの組合せを解きます.

パラメトリックスイープの最適化

新しくジオメトリのスイープを含む通常のパラメトリックスイープスタディで最適化ができるようになりました. この機能はいくつかのセットの固定パラメーター値を, 1つまたは複数の制御パラメーターに関して最適化しなければならないようなときに便利です. この機能は離散最適化として知られているものとは異なります.

目的関数はパラメトリックスイープスタディ解の和, 最大, 最小のいずれかから選ばれます. 目的関数の定義を制御する最適化設定に新しく外部解が加わりました. 外部解とはジオメトリ寸法などの1つのパラメーターのパラメトリックスイープ解のことです. これに対して, 内部解は時間依存,固有周波数, 補助スイープスタディからののことを指します. 従来のバージョンでサポートされていたのは内部解です.

固有周波数解を除いて, 従来の内部解では勾配ベースの最適化法を使うことができましたが, パラメトリックスイープをカバーするこの機能は勾配法以外の最適化法でしか使うことができません. 新しいパラメトリックスイープスタディ最適化スタディの組合せでは各外部パラメーターごとにひとつの最適化をできるようになりました.

A screenshot showing the Outer solution settings for the Optimization study. 最適化パラメトリックスイープの組合せにおける最適化スタディのための新しい外部解設定.
最適化パラメトリックスイープの組合せにおける最適化スタディのための新しい外部解設定.

アダプティブメッシュ細分化解保存

アダプティブメッシュを使った求解で, パラメトリックスイープの場合と同様に, 解保存ノードにそれぞれのメッシュに対応する解を保存できるようになりました. メッシュ細分化レベルパラメーターが自動的に追加され, 結果が比較しやすくなり, 一つのデータセットから全ての解が得られるようになりました.

A demonstration of using the Adaptive Mesh Refinement dataset in a model. ポイントソースモデルで自動メッシュ細分化したときの解のデータセット
ポイントソースモデルで自動メッシュ細分化したときの解のデータセット

縮小モデル入力が定義に移動

縮小次数モデルのモデル入力宣言がモデル縮小スタディからグローバル定義に移動しました. これにより, 縮小次数モデル変数の数式を一箇所でまとめて定義することができるようになりました. これらの数式はモデルの縮小, 非縮小の両方のバージョンで利用できます. 縮小モデルスタディで縮小モデルを構築する際は, 学習式の値が使われます. 学習値はスタディレベルで指定できます.

A screenshot of the Global Reduced Model Inputs settings.

2つのグローバル縮小モデル入力と thermal_controller_rom モデルの数式. 縮小モデル入力の学習式はモデル縮小スタディで指定できます.

2つのグローバル縮小モデル入力と thermal_controller_rom モデルの数式. 縮小モデル入力の学習式はモデル縮小スタディで指定できます.

新しい反復線形ソルバー TFQMR

線型方程式系を解く新しい反復法 TFQMR が加わりました. これは擬最小残差法 (QMR 法) です. QMR 法の仲間は, 反復回数には依存しない決まった数の解ベクトルだけを保存し, 擬似的な意味で残差を最小にします. QMR 法は GMRES に似た振舞いをしますが, リスタートベクトルにコストがかかることがありません. この方法の欠点は, 同じ行列と同じ前処理で, 収束までの反復回数が多くなることです. QMR 法での各反復は GMRES よりも安価ですが, 特定の行列についてどちらが速いかを前もって言うことはできません. しかし, QMR 法は GMRES よりもメモリ使用が少ないでしょう. GMRES でデフォルト50 回のリスタート回数を増やさなければ収束しないような場合には特にそうです. マルチグリッドや高品質前処理が使えないような場合がそのような種類の計算になります.

A model using the TFQMR solver in COMSOL Multiphysics version 5.4. エポキシ仕上げ絶縁のらせんコイルモデルで, SSOR 前処理付きの新しい TFQMR ソルバーで901k 自由度のこのモデルの線形要素バージョンを解きます. 計算には 2.8 GB メモリを使用し, 656 秒で求解します. これに対してGMRES では 13.4 GB のメモリで 1242 秒かかります.
エポキシ仕上げ絶縁のらせんコイルモデルで, SSOR 前処理付きの新しい TFQMR ソルバーで901k 自由度のこのモデルの線形要素バージョンを解きます. 計算には 2.8 GB メモリを使用し, 656 秒で求解します. これに対してGMRES では 13.4 GB のメモリで 1242 秒かかります.

直接線形ソルバーの誤差評価におけるデフォルト因子の修正

直接線形ソルバーの誤差評価におけるデフォルト因子が修正されました. 従来は400でしたが, 新しいデフォルトは1です. この変更は, 直接ソルバーがメインソルバーとして使われているときだけ適用され, 前処理として使われるときには適用されません. 前処理として使われる場合には既にデフォルト値は1です. 線形ソルバーの誤差評価を 400倍小さくすることで誤差テストをより簡単にします. この新しいデフォルトで誤差評価をより正確にし, 不要な反復や警告やエラーを回避することができます.

自動スケール化された従属変数のさらにロバストな自動ニュートンソルバー

非線形計算では従属変数のスケール化は自動では簡単ではなく, 非線形反復の間に劇的に値が変わることがあります. 新いスケール化方法では, ダンプトニュートン法で誤差を測る重みを更新します. 重みが更新される際に, ニュートン法はリスタートします. これによって自動ニュートンソルバーはよりロバストになり, 全体の反復回数が少なくなります. しかし, リスタートすると, しない場合に比べて反復回数が多くなることもあります. 従って, このオプションはデフォルトでは無効になっています. 新しい方法は, 定常ソルバーノードの「方法と終了」セクションの完全連成と分離ステップノードでスケール化の重み更新重み閾値を使用に設定すれば有効になります.

A screenshot showing the Use threshold for weights option in the Fully Coupled settings. 自動ダンプトニュートン法の重み閾値を使用設定.
自動ダンプトニュートン法の重み閾値を使用設定.

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