波動光学モジュールアップデート

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.4 の波動光学では電磁波 (ビームエンベロープ) インターフェースを使った誘電薄膜計算のための新しい境界条件, 無反射コーティング, 鏡面様表面などの新しいが加わりました. 波動光学モジュールのアップデート詳細は以下をご覧ください.

遷移境界条件

電磁場 (ビームエンベロープ) インターフェースの新しい遷移境界条件機能は電気的に薄い層をモデル化し, ドメインのメッシュ化を不要にします. 伝播方向を選択する2つのオプションがあります. 一つは法線方向 (デフォルト)で, 鏡面のアプリケーションにおける金属層のモデル化に便利です. もう一つは波動ベクトル参照で, 無反射コーティングなどの誘電薄膜に便利です. この機能は Beam Splitter モデルで使われています.

インピーダンス境界条件

電磁場 (ビームエンベロープ) インターフェースの新しいインピーダンス境界条件機能を使うと2つの異なる材料ドメインの界面でのドメインを省くことができます. 伝播方向を選択する2つのオプションがあります. 一つは法線方向 (デフォルト)で, 金属のような高い導電性をもつ外部材料に便利です. もう一つは波動ベクトル参照で, ガラス基板などの外部誘電体層に便利です. この機能は Fresnel Equations モデルで使われています.

A screenshot showing the Fresnel Equations model in the COMSOL Multiphysics version 5.4 GUI. 平面波がある角度でガラス基板に入射し, 空気とガラスドメイン間境界で反射します. ガラスドメインはインピーダンス境界条件機能で置き換えられています. 伝播方向は波動ベクトル参照に設定されています. 平面波がある角度でガラス基板に入射し, 空気とガラスドメイン間境界で反射します. ガラスドメインはインピーダンス境界条件機能で置き換えられています. 伝播方向は波動ベクトル参照に設定されています.

スリットポート

スリットポートは内部境界で入射波を計算ドメインを励起し, 同時にポートモード場と一致する散乱波を吸収するために使います. 使用に際して2つの重要な場合があります. 一つは PML がポート背面にある場合で, ポートによって吸収されなかった散乱輻射の残りを吸収します. これを PMLドメイン背面スリットポートと呼びます. もう一つのケースは通常のポートで, 境界面のポートと反対側の面が PEC の場合です. これを PEC 背面スリットポートと呼びます.

PML 背面スリットポートはガウシアンビームによる励起の場合に有効です. 反射したガウシアンビームはポートでは完全には吸収できないので, より一般的なPMLによる吸収が必要だからです. 下の図とキャプションにこのことが説明されています. この機能を実装するには, ポート機能を内部境界に適用する際に, 下図のように設定ウィンドウで内部ポートにスリット条件を有効化チェックボックスをクリックします.

A model using a PML domain-backed slit port. PML 背面スリットポートを使用して左からガウシアンビームを励起しています. 右側では PML 背面スリットリスニングポートがあります. ほとんどの輻射はスリットポートで吸収され, 残りは PML によって吸収されます. PML 背面スリットポートを使用して左からガウシアンビームを励起しています. 右側では PML 背面スリットリスニングポートがあります. ほとんどの輻射はスリットポートで吸収され, 残りは PML によって吸収されます.

モデルウィザードの一方向連成マルチフィジックス

波動光学モジュールにおけるレーザー加熱や, RFモジュールでのマイクロ波加熱などの電磁加熱を含むマルチフィジックスのために, 2つの新しいスタディシーケンスがモデルウィザードに加わりました. シーケンシャル周波数-定常スタディは電磁場の周波数領域方程式をまず解き, 続いてその電磁熱源をソース項とする熱伝導の定常問題を解きます. シーケンシャル周波数-過渡スタディは, 最初に周波数領域の電磁場の方程式を解き, その電磁熱をソース項とする時間依存の熱伝導方程式を解きます. どちらのシーケンスでも電磁場解析は計算された温度分布に依存しないことを仮定しています. この仮定が正しければより少ないコンピューターリソースで2つのフィジックスを解くことができます.

この機能は次のモデルに使われています:

異方性屈折率

波動方程式機能の電気変位場モデルコンボボックスで屈折率オプションが選択されている場合, 新たに異方性テンソルを入力できるようになりました. 行列積を使ってこの屈折率テンソルを比誘電率テンソルに変換します.

陽的時間発展フィジックスインターフェースの新しい内部境界オプション

電磁場 (陽的時間発展) インターフェースで電気壁 (PEC), 磁気壁 (PMC), 表面電流密度が内部境界にも適用できるようになりました.

デフォルトプロットの新しいカラーテーブルを RainbowLight に

下側に数値のついたパーツのプロット上でデフォルトで黒のテキストを読みやすくするために, カラーテーブルをRainbowLightに変更

A comparison of the RainbowLight and Rainbow color tables.

左のプロットは RainbowLight カラーテーブルを, 右のプロットは従来の Rainbow カラーテーブルを使っています. 黒のテキストが RainbowLight の方が見やすくなっています.

左のプロットは RainbowLight カラーテーブルを, 右のプロットは従来の Rainbow カラーテーブルを使っています. 黒のテキストが RainbowLight の方が見やすくなっています.

一様アンテナアレイ因子関数

単アンテナ要素の輻射パターンからアンテナアレイの輻射パターンの評価が迅速にできるようになりました. 単アンテナの遠方場に一様アレイ因子をかける漸近アプローチで計算を行います. この機能は更新された Microstrip Patch Antenna モデルで確認することができます.


単マイクロストリップアンテナシミュレーションから合成された8x8 マイクロストリップパッチアンテナアレイパターン.

3D 遠方場と 2D 軸対称モデルからの RCS 関数

新しい遠方場関数によって 2D 軸対称モデルが等価 3D モデルの遠方場応答の迅速な評価に利用できるようになりました. 3D 遠方場関数のセットが 2D 軸対称ジオメトリを持つ次のケースで利用できます:

  • 正の方位モード数を持つ円形ポート励起を使ったアンテナモデル
  • 事前定義円偏光平面波タイプの励起による散乱場解析

遠方場ノルム関数

内容 名前 書式例 説明
3D遠方場ノルム norm3DEfar norm3DEfar_TE12 方位モード数 1, モード数2のTE モード円形ポート
3D 遠方場ノルム (dB) normdB3DEfar normdB3DEfar_TM21 方位モード数 2, モード数1の TM モード円形ポート

新しい遠方場ポスト処理変数

最大指向性, ゲイン, 実現化ゲインを計算する新しい変数が新たに加わりました. これらの変数はグローバル評価で利用できます. 3D 遠方場パターンのプロットの必要はありません. 遠方場パターン計算機能の選択が球 ( 3D) と円 (2D) の場合で, 中心が原点にある場合にアクセスできます.

遠方場ポスト処理変数

最大指向性, ゲイン, 実現化ゲインを計算する新しい変数が新たに加わりました. これらの変数はグローバル評価で利用できます. 3D 遠方場パターンのプロットの必要はありません. 遠方場パターン計算機能の選択が球 ( 3D) と円 (2D) の場合で, 中心が原点にある場合にアクセスできます.

遠方場ポスト処理変数

内容 名前 利用可能コンポーネント
最大方向性 maxD 2D 軸対称, 3D
最大方向性, dB maxDdB 2D 軸対称, 3D
最大ゲイン maxGain 2D 軸対称, 3D
最大ゲイン (dB) maxGaindB 2D 軸対称, 3D
最大実現ゲイン maxRGain 2D 軸対称, 3D
最大実現ゲイン (dB) maxRGaindB 2D 軸対称, 3D

電気的に厚い層の遷移境界条件

新しい「電気的に厚い層」オプションが遷移境界に隣接する2つのドメインの結合を分離します. この境界は内部インピーダンス境界条件のように振舞いますが, レイヤーのジオメトリはドメインよりもむしろサーフェスです.

A screenshot showing the Electrically thick layer check box. 電気的に厚い層のチェックボックスで2つの隣接ドメイン間の結合を切り離します. 電気的に厚い層のチェックボックスで2つの隣接ドメイン間の結合を切り離します.

2D軸対称における円偏光背景場

2D軸対称コンポーネントでモデル化する際の散乱場定式化に「円偏光平面波」オプションが加わりました. この機能を使うには, 2D軸対称モデルの軸対称散乱体を円偏光背景場で励起します. そして, norm3DEfar 関数を使って同じ散乱体が3Dで円偏光背景場に照射された場合の遠方場レーダー断面積 (RCS) を見積もることができます.

A demonstration of representing a 2D axisymmetric model in 3D. 2D軸対称モデルの3D表示. 直線偏光背景場で励起された球の散乱場応答は2D軸対称モデルで円偏光背景場を使用して簡単に見積もることができます. 2D軸対称モデルの3D表示. 直線偏光背景場で励起された球の散乱場応答は2D軸対称モデルで円偏光背景場を使用して簡単に見積もることができます.

ポート定義の改善

入射ポート (励起)と出射ポート(リスナー)の方向が矢印表示されるようになりました. 矢印の向きがパワーの流れる方向を表します. 励起ポートはポート境界で内向き矢印で, リスナーポートは外向き矢印で示されます. 集中ポートにもこの可視化機能がサポートされています.

An example of defining inports and outports in RF models. この瞳フィルター導波路モデルの例における励起ポート境界では, 赤の矢印で示された方向にパワー流れがあります. この瞳フィルター導波路モデルの例における励起ポート境界では, 赤の矢印で示された方向にパワー流れがあります.

新しく更新されたチュートリアルモデル

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.4 では2つの新しいモデルが追加され, 1つのチュートリアルモデルが更新されました.