RF モジュールアップデート

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.4 の RF モジュールでは新しい遠方場機能, 効率的アンテナと輻射パターン解析のための新しい変数, マイクロ波とミリ波のための拡張された材料ライブラリ, 補強されたアプリケーションライブラリの例題 (新しい可視化効果や RF パーツライブラリの商用コネクターの実装などを含む) が加わりました. RF モジュールアップデートの詳細は以下をご覧ください.

一様アンテナアレイ因子関数

単アンテナ要素の輻射パターンからアンテナアレイの輻射パターンの評価が迅速にできるようになりました. 単アンテナの遠方場に一様アレイ因子をかける漸近アプローチで計算を行います. この機能は更新された Microstrip Patch Antenna モデルで確認することができます.


単マイクロストリップアンテナシミュレーションから合成された 8x8 マイクロストリップパッチアンテナアレイパターン.

基板用RF材料ライブラリ

RF モジュールの材料ライブラリに Isola Group からのマイクロ波, ミリ波用の40を越える基板材料が追加されました. これで RF モジュールの材料ライブラリには100を越える基板材料が揃いました.

3D 遠方場と 2D 軸対称モデルからの RCS 関数

新しい遠方場関数によって 2D 軸対称モデルが等価 3D モデルの遠方場応答の迅速な評価に利用できるようになりました. 3D 遠方場関数のセットが 2D 軸対称ジオメトリを持つ次のケースで利用できます:

  • 正の方位モード数を持つ円形ポート励起を使ったアンテナモデル
  • 事前定義円偏光平面波タイプの励起による散乱場解析

遠方場ノルム関数

内容 名前 書式例 説明
3D遠方場ノルム norm3DEfar norm3DEfar_TE12 方位モード数 1, モード数2のTE モード円形ポート
3D 遠方場ノルム (dB) normdB3DEfar normdB3DEfar_TM21 方位モード数 2, モード数1の TM モード円形ポート

新しい遠方場ポスト処理変数

最大指向性, ゲイン, 実現化ゲインを計算する新しい変数が新たに加わりました. これらの変数はグローバル評価で利用できます. 3D 遠方場パターンのプロットの必要はありません. 遠方場パターン計算機能の選択が球 (3D) と円 (2D) の場合で, 中心が原点にある場合にアクセスできます.

遠方場ポスト処理変数

内容 名前 利用可能コンポーネント
最大方向性 maxD 2D 軸対称, 3D
最大方向性, dB maxDdB 2D 軸対称, 3D
最大ゲイン maxGain 2D 軸対称, 3D
最大ゲイン (dB) maxGaindB 2D 軸対称, 3D
最大実現ゲイン maxRGain 2D 軸対称, 3D
最大実現ゲイン (dB) maxRGaindB 2D 軸対称, 3D

電気的に厚い層の遷移境界条件

新しい電気的に厚い層オプションが遷移境界に隣接する2つのドメインの結合を分離します. この境界は内部インピーダンス境界条件のように振舞いますが, レイヤーのジオメトリはドメインよりもむしろサーフェスです.

FFTによる時間領域バンドパスインパルス応答

信号集積 (SI) 問題を扱うための時間領域反射解析 (TDR) には過渡解析が通常は便利ですが, RF とマイクロ波では S パラメーターを使った周波数領域解析の例が多くあります. 通常の周波数解析の後に周波数-時間FFTを行うことで TDR 解析を行うことができます. 時間領域で信号の揺らぎを調べるこのタイプの解析は伝送線での物理的な不連続性とインピーダンス不整合を発見するのに役立ちます. この機能は新しいモデル Study of a Defective Microstrip Line via Frequency-to-Time FFT Analysis に使用されています.

A microstrip line model using a time-domain lumped port voltage. 時間領域集中ポート電圧を使用した例. 信号のオーバーシュートとアンダーシュートはマイクロストリップラインの不連続性のためです.
時間領域集中ポート電圧を使用した例. 信号のオーバーシュートとアンダーシュートはマイクロストリップラインの不連続性のためです.

過渡スタディにおける遠方場解析

電磁場 (過渡) インターフェースで新しい遠方場計算機能が加わりました. この機能を使って, まず過渡応答解析を行い, 次に時間-周波数FFTを実行することで, 周波数領域広帯域アンテナ遠方場パターン解析することができます. この機能は新しいモデル Transient Analysis of a Printed Dual-Band Strip Antenna で使われています.

A model of a printed dual-band antenna strip showing the far-field radiation pattern. プリント化デュアルバンドアンテナストリップの第2共振での遠方輻射パターン. 誘電体基板上部での電場ノルムが示されています.
プリント化デュアルバンドアンテナストリップの第2共振での遠方輻射パターン. 誘電体基板上部での電場ノルムが示されています.

2D 軸対称における円偏光背景場

2D 軸対称コンポーネントでモデル化する際の散乱場定式化に「円偏光平面波」オプションが加わりました. この機能を使うには, 2D 軸対称モデルの軸対称散乱体を円偏光背景場で励起します. そして, norm3DEfar 関数を使って同じ散乱体が 3D で円偏光背景場に照射された場合の遠方場レーダー断面積 (RCS) を見積もることができます.

A demonstration of representing a 2D axisymmetric model in 3D. 2D軸対称モデルの3D表示. 直線偏光背景場で励起された球の散乱場応答は2D軸対称モデルで円偏光背景場を使用して簡単に見積もることができます.
2D軸対称モデルの3D表示. 直線偏光背景場で励起された球の散乱場応答は2D軸対称モデルで円偏光背景場を使用して簡単に見積もることができます.

ポート定義の改善

入射と出射方向

入射ポート (励起) と出射ポート (リスナー) の方向が矢印表示されるようになりました. 矢印の向きがパワーの流れる方向を表します. 励起ポートはポート境界で内向き矢印で, リスナーポートは外向き矢印で示されます. 集中ポートにもこの可視化機能がサポートされています.

An example of defining inports and outports in RF models. この瞳フィルター導波路モデルの例における励起ポート境界では, 赤の矢印で示された方向にパワー流れがあります.
この瞳フィルター導波路モデルの例における励起ポート境界では, 赤の矢印で示された方向にパワー流れがあります.

電圧降下方向指定数値 TEM ポート

境界モード解析で数値ポートを解析する際, 縮退モードがあるとSパラメーターの計算で難しい点があります. そのような場合に, 電圧降下方向を赤い矢印でポート境界に対して指定することができるようになり, ポートモード場の偏光を固定することができるようになりました. その方向は, 数値TEMポート機能のサブ機能, 電圧の積分線ノードの「電圧降下方向を切替え」ボックスをチェックすることで切替えることができます. この機能は更新されたモデル Notch Filter Using a Split Ring Resonator に使われています.

An example of indicating the voltage drop direction in a model. 数値TEMポートの電圧降下方向が赤矢印で示されています.
数値TEMポートの電圧降下方向が赤矢印で示されています.

モデルウィザードの一方向連成マルチフィジックス

波動光学モジュールにおけるレーザー加熱や, RF モジュールでのマイクロ波加熱などの電磁加熱を含むマルチフィジックスのために, 2つの新しいスタディシーケンスがモデルウィザードに加わりました. シーケンシャル周波数-定常スタディは電磁場の周波数領域方程式をまず解き, 続いてその電磁熱源をソース項とする熱伝導の定常問題を解きます. シーケンシャル周波数-過渡スタディは, 最初に周波数領域の電磁場の方程式を解き, その電磁熱をソース項とする時間依存の熱伝導方程式を解きます. どちらのシーケンスでも電磁場解析は計算された温度分布に依存しないことを仮定しています. この仮定が正しければより少ないコンピューターリソースで2つのフィジックスを解くことができます.

この機能は次のモデルに使われています:

異方性屈折率

波動方程式機能の電気変位場モデルコンボボックスで屈折率オプションが選択されている場合, 新たに異方性テンソルを入力できるようになりました. 行列積を使ってこの屈折率テンソルを比誘電率テンソルに変換します.

重要な補強

新しいチュートリアルモデル

COMSOL Multiphysics® バージョン 5.4 で2つの新しいモデルが加わりました.