化学反応工学モジュールアップデート
COMSOL Multiphysics® バージョン 6.4 では, 化学反応工学モジュールを利用のユーザー向けに, ラージエディシミュレーション (LES) を用いた反応流のサポート, 粒子凝集および破壊モデリング, そして固相消費とベッド補充を伴う連続オペレーションのための新機能が追加されました. これらのアップデートの詳細については, 以下をご覧ください.
反応流のラージエディシミュレーション (LES)
反応流 機能が LES に対応し, 乱流反応系のモデル化の精度を飛躍的に向上させました. LES を 化学, 化学種輸送 および 伝熱 (流体) の各インターフェースと連成することで, 気体および液体中における混合, 伝熱, および化学反応の複雑な相互作用を詳細に捉えることができます. このアプローチでは, 反応熱, エンタルピー拡散, および質量流束を考慮し, 残差ベースの LES モデルによって熱および物質輸送の予測精度を強化します. 温度依存性の流体特性および化学特性を組み込むことで, 濃度, 反応速度, および温度場の非常に現実的な解析が可能になります. 触媒反応器や複雑な混合プロセスの解析においても, LES ベースの反応流モデルは, 従来の乱流モデルでは見落とされがちな重要な現象を明らかにします. なお, LES 機能を使用するには CFD モジュールが必要です.
粒子凝集と破壊
医薬品製造から先端材料加工に至るまで, 粒子の成長, 形態, 破壊を正確にモデル化することは, プロセス最適化にとって重要です. 粒子凝集と破壊に関する新たなサポート機能により, 結晶化, 析出, および造粒プロセスにおける粒子サイズ分布の変化を現実的にシミュレーションすることが可能になります. この機能は, 沈殿および結晶化 インターフェースに実装されており, Smoluchowski 凝集方程式と破砕方程式を同時に解くことで, 粒子ダイナミクスを厳密に記述します.
移動ベッドリアクター機能
新しく追加された移動ベッドリアクター機能により, 固体相が連続的に消費および補充される不均一系反応器をモデル化できるようになりました. この機能により, 接触分解, 気体-固体反応, バイオマス変換など, ベッドの移動が反応器性能に大きく影響するプロセスの詳細な解析が可能になります. この機能は, 連続オペレーション中の固体相の動的な挙動も考慮しているため, 産業規模プロセスにおける効率, 選択性, および運転条件の解析に非常に有効なツールとなります.
周期境界条件
ダルシーの法則 および リチャーズ方程式 インターフェースに, 新しい 周期境界条件 機能が追加されました. これにより, 2つ以上の境界間の流れに周期性を容易に適用できます. さらに, 圧力ジャンプを直接指定するか, 質量流量を指定することによって, ソース側境界と行先側境界の間に圧力ジャンプを設定することも可能です.
自由および多孔質流れカップリングにおける圧力ジャンプオプション
自由および多孔質流れカップリング 機能に, 自由流体領域と多孔質媒体領域の境界における圧力ジャンプを考慮する新しいオプションが追加されました. これにより, 例えば, 多孔質スペーサー材で支持された半透膜における浸透圧や, 多相流における毛細管圧による圧力ジャンプなどをモデル化することが可能になります.
新規および更新されたチュートリアルモデル
COMSOL Multiphysics® バージョン 6.4 では, 化学反応工学モジュールにいくつかの新規および更新されたチュートリアルモデルが追加されました.
攪拌タンクリアクターによる抗体薬物複合体の製造
4枚翼攪拌子付きタンク反応器内の乱流反応流のシミュレーション. 抗体–薬物複合体濃度の等値面およびコンターを可視化することで, 混合効率や反応性能に関する貴重な知見を得ることができます.









