音響モジュールアップデート
COMSOL Multiphysics® バージョン 6.4 では, 音響モジュールをご利用のユーザー向けに, 圧力音響 (陽的時間発展) におけるマルチ GPU サポート, CGNS 流れデータのインポート機能, 多孔質音響向けの JCA および JCAL モデルのビルトイン対応, そして新しい専用の 周期ポート 機能が導入されました. これらのアップデートの詳細については, 以下をご参照ください.
圧力音響 (陽的時間発展) におけるマルチGPUサポート
圧力音響 (陽的時間発展) インターフェース向けの CUDA-X アクセラレート GPU 定式化は, 単一マシンでの複数 GPU の使用や, クラスター構成での GPU 利用をサポートするようになりました. 高速化された CPU 定式化もクラスター構成でサポートされるようになりました. これらの改良により, 室内音響シミュレーションの実行速度が数倍向上し, 解像波長に対するモデルの規模を拡大することができます. 例えば, 新しい Chamber Music Hall — Wave Based のチュートリアルモデルでは, 500 Hz オクターブバンドを (750 Hz まで解像するメッシュ上で) 解くと, 3億自由度 (DOF) を持つモデルになります. 高速化された CPU 定式化を使用した場合, 16ノードのクラスター上で40周期 (30,000時間ステップ) のシミュレーションを実行すると7時間45分かかりますが, 単一の GPU (NVIDIA® H100) で解くと3時間で完了します.
Car Cabin Acoustics — Transient Analysis チュートリアルモデルでは, モデル内の最初のスタディのシミュレーション時間が, 単一 GPU (NVIDIA® RTX 6000 Ada) 使用時, バージョン 6.3 では 57 分であったのに対し, 50 分へと短縮されました. 2台の GPU でシミュレーションを実行すると, 時間は約半分になり, 29 分で完了します. このような性能向上は, チュートリアルモデル 周波数依存インピーダンスによる波動ベースの時間領域室内音響 モデルや, Acoustics of an Open-Plan Office Space モデルでも確認されています.
なお, 圧力音響 (陽的時間発展) インターフェースは, 単一 GPU 使用時にはすべてのライセンスでサポートされますが, 複数 GPU 使用時には FNL ライセンスが必要です.
新しい Chamber Music Hall チュートリアルモデルにおける初期パルス (中心周波数 500 Hz) の伝播.
CGNS 流れデータインポートと空力音響
空力音響および対流音響シミュレーションが, いくつかの重要な新機能によって改良されました. CGNS ファイル形式で保存された CFD データは,新しい CFD データ (CGNS) 機能と新しい インポート流体流れ インターフェースを使用することで, COMSOL Multiphysics® にインポートできるようになりました. この組み合わせにより, データのインポートと計算メッシュへのマッピングが確実に一貫性を持って行われます. さらに, この新しいインターフェースは, 既存の 背景流体流れカップリング, 空力音響流れソース マルチフィジックスカップリング, マッピングスタディとのシームレスな統合を実現します.
追加更新情報: 線形化ポテンシャル流れ (周波数領域) インターフェースに Brambley インピーダンスモデルが追加されました. 線形化オイラーインターフェースには, 新しい線形摂動圧縮性方程式 (LPCE) 定式化のオプションと安定化改善が導入されています. また, 空力音響流れソース 機能の設定時に, 窓関数を適用できるようになりました. 以下のチュートリアルモデルより, これらの新機能を確認できます:
- helmholtz_resonator_with_flow_cgns (new)
- generic_nacelle_liner (new)
- tandem_cylinder_flow_noise_DES_6.4_cleared (new)
- cavity_flow_noise
- point_source_2d_jet
時間領域多孔質音響における組み込みの JCA および JCAL モデル
圧力音響 (過渡) および 圧力音響 (陽的時間発展) インターフェースで, 多孔質音響 機能が利用可能になりました. この機能には, 多孔質材料を設定する際に利用できる 2つの新しいオプションも含まれています. Johnson–Champoux–Allard (JCA) モデルおよび Johnson–Champoux–Allard–Lafarge (JCAL) モデルは, 従来のユーザー定義オプションを拡張する形で提供されます. これらの新しいモデルのいずれかを選択すると, これらのモデルの一般的な多孔質音響材料パラメーター (ポロシティ, 流れ抵抗率, 屈曲係数など) を利用して部分分数近似が計算されます.
周期ポート
周期ポート は, 吸音体やディフューザーなどの周期構造における透過, 反射, 散乱の問題をモデル化するために追加された新しい専用機能です. 特にディフューザーのモデリングに有用であり, 反射エネルギーを鏡面反射方向と非鏡面反射方向に分けることができます. この機能は, 構造物への平面波の入射だけでなく, すべての反射および透過回折次数にも対応します. 回折次数は, 周期ポート 条件に追加された 回折次数ポート サブノードを用いて捉えられます. チュートリアルモデル 多孔質吸音体 と Schroeder Diffuser in 2D も, 新しい周期ポート機能を含むように更新されました.
周期ポート 条件を用いてモデル化された周期型シュローダーディフューザー (三つのセクションが可視化されています).
新規および更新されたチュートリアルモデルとアプリ
COMSOL Multiphysics® バージョン 6.4 では, 音響モジュールに一つの新しいアプリに加え, いくつかの新規および更新されたチュートリアルモデルが追加されました.
インピーダンスチューブ測定による多孔質材料の特性評価
音響ライナー付き汎用ナセル
2次元ジェット内の点音源: 2次元せん断層を介した音波の放射と屈折
狭いジェット内の点状音源によって生じる音圧変動を, 周波数領域および時間領域の両方で解いたものです. モデルの結果は, 線形化オイラー方程式に関する NASA のベンチマークと比較されています.
流れのあるヘルムホルツ共鳴器: CGNS データによるインポート流体流れ
弾性壁を備えたマフラーの固有モード
多孔質吸音体
周波数 1000 Hz (入射角 45°) における多孔質吸音体の圧力分布. 本モデルは, 新しい 周期ポート 境界条件で設定されています.
スピーカードライバー過渡解析
スピーカードライバーモデルにおける, ボイスコイル周辺領域の圧力分布, 磁場, および移動メッシュ.
横等方性多孔質材料における多孔質音響パラメータの不確実性定量化*
*不確実性定量化モジュールが必要です
液滴内の SAW 誘起ストリーミング (3次元)
高強度集束超音波 (HIFU) によって誘起される組織加熱
バランスドアーマチャートランスデューサー (時間領域解析)
時間領域でモデル化されたバランスドアーマチャー型トランスデューサのマルチフィジックスモデル. 非線形磁性材料と移動メッシュを含みます.
チューブ・カプラー計測セットアップの入力インピーダンス: 部分分数近似による時間領域 MOR
衝撃波砕石術
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