マイクロフルイディクスモジュール
マイクロフルイディクスモジュールでマイクロ流体デバイスのマルチフィジックスシミュレーションを実行

インクの液滴はノズルから放出され, 目標に達するまで空気中を飛びます. モデルでは液滴速度, 体積, 追従する液滴の有無で, インク特性の効果とノズル位置の圧力プロファイルを把握できます.
マイクロ流体工学シミュレーション
マイクロフルイディクスモジュールはマイクロ流体装置を調査するための操作しやすいツールを備えています. ラボオンチップデバイス, デジタルマイクロ流体, 動電学的装置と動磁気学的装置, インクジェットのシミュレーションが主な用途です. マイクロフルイディクスモジュールにはすぐに使えるユーザーインターフェースとシミュレーションツール, すなわち単相流, 多孔質媒体流, 2相流, 輸送現象向けのいわゆるフィジックスインターフェースがあります.
マイクロスケール流にスケールダウン
マイクロ流体流れは目に見える流れよりも大きさの桁が小さい長さスケールで発生します. マイクロスケールの流体の操作には多くのメリットがあり, 一般にマイクロ流体システムは小さく, 動作が速く, 肉眼レベルの同じ操作に比べて少ない流体で処理できます.
エネルギー入出力も簡単に制御できます (たとえば, 化学的反応で生成された熱など). これはシステムの表面対面積体積比が巨視的システムよりはるかに大きいためです. 通常, 流量の長さスケールが減少すると, システムの表面積に応じて増減する特性の重要性が流量体積に応じて増減する特性よりも相対的に上昇します.
このことは, 等速表面を横切るせん断によって生成される粘性力が慣性力よりも優勢であるような流体自身で明らかです. これらの 2 つの力の比率を示すレイノルズ数 (Re) は, 通常値が小さく, したがって流れは層流です. 多くの場合, ほふく (ストークス) 流の枠組みを適用します (Re≪1). 層流とほふく流があると特に混合がむずかしくなります. したがって質量輸送は拡散主体になることが多くなりますが, マイクロ流体系でも拡散はゆっくりしたプロセスになります. これがマイクロ流体系における化学輸送のインプリケーションを与えます. マイクロフルイディクスモジュールは, マイクロスケールの流れに特に留意して運動量, 熱, 質量輸送を処理するために作られたモジュールです.
事例紹介


COMSOL の汎用マルチフィジックス機能はマイクロ流体デバイスで利用されるさまざまなマイクロスケール効果の取り扱いに最適です. 電気泳動, 磁気泳動, 誘電泳動, 電気浸透, 電気湿潤など, 連成した動電学的シミュレーションと磁気力学シミュレーションが簡単に設定できます. また, このモジュールに組み込まれた希釈種機能の化学的拡散と化学反応では, ラボオンチップデバイスで発生するプロセスをシミュレートできます. 希薄気体流れのシミュレーションでは, すべり流れの枠組みで流動シミュレーションを開始する特殊な境界条件を使用できます. マイクロフルイディクスモジュールにはレベルセット法, フェーズフィールド法, 移動メッシュ方式という2相流シミュレーション専用の手法もあります. 以上のそれぞれについて, マイクロフルイディクスモジュールの機能には, 表面張力, 毛細管力, マランゴニ効果が組み込まれています.
マイクロ流体装置のモデル化のワークフロー
マイクロ流体デバイスのモデルを作成するには, CAD ファイルをインポートしてソフトウェアでジオメトリを定義するか, COMSOL Multiphysics に組み込みのジオメトリモデル化ツールでジオメトリを定義します. ジオメトリモデルのインポートには力学 CAD モデルインポート用の CAD インポートモジュール, 電子レイアウトインポート用の ECAD インポートモジュール, パッケージ.専用 CAD ソフトウェアパッケージで作成したモデルとの直接リンク用の LiveLink™ 製品といったいくつかの選択肢があります. 次のステップでは, 適切な流体特性を選択し, 最適なフィジックスインターフェースを選択します. 初期条件と境界条件をインターフェース内にセットアップします. 次に, メッシュを定義します. COMSOL が物理特性に依存して自動的に生成するデフォルトメッシュが多くの問題で適切に働きます. ソルバーもデフォルトで選択されたものが適切な設定を与えます. 最後に結果を表示します. 以上のステップはすべて COMSOL Desktop® からアクセスできます. マイクロフルイディクスモジュールでは, 定常および時間依存性流れを 2 次元と 3 次元で求解できます. また, 他のアドオン製品と連成させてモデル化機能を拡張することもできます. たとえば, 粒子追跡モジュールと組合わせると, 流れ中に放たれた粒子の追跡が可能です.
単相流
流体流れインターフェースは圧力や流速などの物理的数量と, 粘性や密度などの物理的特性で流れ問題を定義します. 層流のフィジックスインターフェースでは非圧縮性流と弱圧縮性流を処理します. この流体流れインターフェースでは非ニュートン流のシミュレーションも可能です. ほふく流のフィジックスインターフェースはレイノルズ数が 1 をかなり下回るときに使用します. これを一般にはストークス流と呼び, 粘性流が優勢なときに適しており, マイクロ流体デバイスに適した流れです.
2相流
2相流にはレベルセット法, フェーズフィールド, 移動メッシュ法という 3 種類の手法を使用できます. これらの手法では, 流体界面で区切られた 2 つの流体をモデル化します. ここでは移動界面を追跡して, 曲率と表面引張力などを詳しく調べます. レベルセット法とフェーズフィールド法では, 固定バックグラウンドメッシュを使用し, 追加方程式で界面の場所を求解します. 移動メッシュ手法では, 移動メッシュの流れ方程式を流体界面を表す境界条件とともに解きます. その場合, 任意ラグランジュオイラー (ALE) 法でメッシュ変形の追加方程式を解きます. これらの手法のすべてとそのフィジックスインターフェースは, 圧縮性層流と非圧縮性層流の両方をサポートします. 非ニュートン流体もサポートします.
希薄流
分子の平均自由行程が流れの長さスケールと比較可能になると希薄気体流が発生します. クヌーセン数 (Kn) は流動の希薄化効果の重要性の特性を示します. 気体が希薄になると (クヌーセン数の増加につれて), 壁のひとつの平均自由行程にあるクヌーセン層によって流動に大きな影響が生じます. クヌーセン数が 0.01 未満のとき, 希薄化は無視され, マイクロフルイディクスモジュールの層流フィジックスインターフェースは非すべり境界条件で使用できます. 少し希薄な気体 (0.01 < Kn < 0.1) の場合, クヌーセン層は領域の連続ナビエストークス方程式と合わせて壁位置の適切な境界条件でモデル化できます. この場合, マイクロフルイディクスモジュールでは, 特別なすべり流フィジックスインターフェースを利用できます. 高いクヌーセン数のモデル化では 分子流モジュールが必要です.
多孔質媒体流
多孔質媒体を通る流れはマイクロスケールのジオメトリでも発生します. 細孔サイズがミクロン規模の場合, しばしば流れの摩擦が優勢になり, ダルシーの法則を適用できます. マイクロフルイディクスモジュールはダルシーの法則に基づいた多孔質媒体流専用のフィジックスインターフェースが特長です. この場合, 流れに垂直なせん断応力は無視します. 中間流にはブリンクマン方程式のフィジックスインターフェースを使用できます. このフィジックスインターフェースは, せん断応力を無視できる, 多孔質媒体通過流をモデル化します. ごく低速の流動に適したストークス・ブリンクマン定式化と, 高速流動による影響を説明する Forchheimer 抗力のいずれもサポートしています. マッハ数 0.3 未満の流体には非圧縮性または圧縮性があります.
自由, または多孔質媒体モデルのためのインターフェースです. ブリンクマン方程式を使った多孔質媒質と層流が自動で連成されます. このインターフェースはマイクロ流体多孔質媒体流に適しています. 用途としては, たとえば, ペーパーマイクロ流体や生物組織における輸送があります.
電気流体力学効果
マイクロスケールではさまざまな電気流体力学効果を流れに反映できます. マイクロフルイディクスモジュールはこのような効果を仮想的にモデル化するすぐれたツールです. サイズ効果のために, 中程度の電圧に対しても大きな電界強度を流体に加えることができます. 電気浸透では, 流体表面の荷電した電気二重層 (EDL) にある非補償イオンが電界によって移動して正味流れが生じます. マイクロフルイディクスモジュールには, いくつかの流体壁境界条件のひとつとして特殊な電気浸透速度境界条件が組み込まれています. 流体の荷電粒子や偏極粒子の電気泳動力と誘電泳動力は, 磁気泳動の際の反磁性力として粒子運動を取り込むときに使用できます. 粒子追跡モジュールにはすぐに使える電気泳動力と誘電泳動粒子力が組み込まれています. マイクロフルイディクスモジュールと AC/DC モジュールを組み合わせると AC 誘電泳動をモデル化できます.
電気湿潤現象による接触角度の操作もマイクロスケールのデバイスでは簡単です. 電気湿潤は各種の新しいディスプレイテクノロジとして活用されている現象です. マイクロフルイディクスモジュールでは電圧パラメーターなどユーザー定義の式で接触角度を直接操作できます.
質量輸送
マイクロフルイディクスモジュールには希釈種輸送専用のフィジックスインターフェースがあります. このインターフェースは, ひとつの成分 (溶剤) の濃度が過剰な (90 mol% 以上) 混合物における拡散, 対流 (流れと連成したとき), 電界内の泳動による化学種輸送をシミュレートします. このインターフェースは通常, ミキサーのパフォーマンスをモデル化するときに使用します. マイクロ流体デバイスにおける化学的反応をモデル化するとき, マイクロフルイディクスモジュールを化学反応工学モジュールと組み合わせることができます. その場合, 2成分拡散による濃縮種の輸送も処理できます.
柔軟性に富みロバストなマイクロ流体工学シミュレーションのプラットフォーム
各マイクロ流体インターフェースには基本物理的原理が偏微分方程式の形で, 対応する初期条件と 境界条件とともに表現されています. COMSOL の設計では物理特性を重視しており, それぞれの機能で解いた方程式だけでなく、その基本方程式系にもすべてアクセスできます. さらにユーザー定義の方程式や式を系に追加できる柔軟性も備えています. たとえば, 流体の粘性に大きな影響を与える化学種の輸送モデルは濃度依存の粘性を入力するだけで作成でき, スクリプトの記述やコーディングは不要です. COMSOL が方程式をコンパイルすると, これらユーザー定義の式で生成された複雑な連成は方程式系に自動的に組み込まれます. 方程式は有限要素法を使って, さまざまなソルバーで解かれます. 解が得られると, さまざまな後処理ツールでデータを調べることができます. デフォルトプロットが自動的に生成されてデバイスの反応が表示されます. COMSOL は圧力, 速度, せん断速度, 渦度といった (使いやすいメニューでアクセスできる) 定義済みの数量などのさまざまな物理的数量を評価できる柔軟性と, 任意のユーザー定義の式を備えています.
Excel® および MATLAB® とのインターフェース
マイクロフルイディクスモジュールは Microsoft® Excel® LiveLink™ for Excel® と組合わせることができます. この LiveLink™ 製品はパラメーター, 変数, メッシュの制御用として, あるいはシミュレーションの実行用として COMSOL タブと特殊ツールバーを Excel リボンに追加します. さらに, この製品は COMSOL Desktop® のパラメーターリストと変数リスト用の Excel ファイルをインポート, またはエクスポートします.
スクリプトプログラミングで COMSOL シミュレーションを実行したい場合は, LiveLink™ for MATLAB® の持つインターフェースで MATLAB® と COMSOL を組み合わせて使用できます. この LiveLink™ を利用すれば, 豊富な MATLAB コマンドから COMSOL Desktop® の機能をすべてアクセスできます. この方法はマイクロ流体のシミュレーションに COMSOL Desktop® を使用する方法に対してプログラムを利用した代替の方法です.
機能
- 異方性多孔質媒体流
- 後処理の任意のユーザー定義式
- 壁関数が定義された境界層の自動メッシュ化とハイブリッドメッシュ
- Reynolds, Prandtl, Nusselt, RayleighとGrashof数を計算するためのビルトイン変数
- クリーピング流
- 毛細管力
- 動電効果
- ダルシーの法則と ブリンクマン方程式による多孔質媒体における流れ
- 流体構造連成 (FSI)1
- 多孔質媒体流の Forchheimer 抗力
- 層流
- マランゴニ効果
- 移動効果
- 多重種ユーザーインターフェース
- ニュートン流と非ニュートン流
- 粒子が流れに影響を与える可能性がある粒子追跡法 (ラグランジュ・オイラー)2
- スリップ流
- 2D 流の浅い水路の近似
- 多孔質媒体での種輸送
- 表面張力効果
- レベルセット法による2相流
- フェーズフィールド法による2相流
- 任意ラグランジュ・オイラー (ALE) で構築した移動メッシュ法による2相流
1 構造力学モジュールまたは MEMS モジュールと連携
2 粒子追跡モジュールと連携
用途
- 毛細血管装置
- 化学センサーと生化学センサー
- 誘電泳動 (DEP)
- DNA チップ
- 電気合体
- 動電流
- 電気浸透
- 電気浸透
- 電気湿潤
- エマルション
- インクジェット
- ラボオンチップ
- 磁気泳動
- マイクロリアクター, マイクロポンプ, マイクロミキサー
- マイクロ流体センサー
- 若干希薄な気体流 (スリップ流)
- 静的ミキサー
- 表面張力効果
- 2相流
- ポリマー流と粘弾性流
- 光流体工学
Droplet Breakup in a T-Junction
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