半導体モジュール

半導体及び光電子デバイスのシミュレーション

半導体モジュールは, 半導体デバイスの動作を基礎物理レベルで解析するための専用機能を備えています. 半導体モジュールでは, バイポーラートランジスター, 金属 - 半導体電場効果トランジスター (MESFET), 金属 - 酸化物 - 半導体電場効果トランジスター (MOSFET), 絶縁ゲート型バイポーラートランジスター (IGBT), ショットキーダイオード, p-n 接合, 太陽電池など, さまざまな種類のデバイスをシミュレーションすることができます.

このモジュールには, 電磁波と半導体材料の相互作用をモデル化するために設計された機能が含まれています. 代表的なモデリングデバイスには, フォトダイオード, LED, レーザーダイオードなどがあります. さらに, このモジュールでは, ユーザー定義の方程式や式を用いてモデリングすることが可能です.

また, 半導体モジュールは, 他の COMSOL Multiphysics® アドオン製品と組み合わせることができる柔軟性を持っています.

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プリズムカラーテーブルの発光率を示す LED モデル.

半導体モジュールでモデル化できるもの

さまざまな種類のトランジスター, センサー, フォトニックデバイス, 量子系, 基本的な半導体ビルディングブロックを解析できます.

熱結果を示すバイポーラトランジスターモデルの拡大図.

3D バイポーラートランジスター

バイポーラートランジスターの電流 - 電圧応答を計算し, アナログ電流増幅器としてのデバイスの動作をシミュレートすることができます.

電子濃度を示す MOS トランジスターモデルの拡大図.

MOSFET

金属 - 酸化物 - 半導体 (MOS) トランジスターの DC 特性が計算できます.

光生成率を示すシリコン太陽電池の拡大図.

太陽電池

太陽電池のユーザー定義生成率 (変形) および Shockley–Read–Hall 再結合率が計算できます.

発光率を示す LED モデルの拡大図.

LED

赤外線を発する LED をシミュレートすることができます.

電位を示す ISFET モデルの拡大図.

ISFET センサー

半導体モデルと電解質モデルをカップリングし, イオン感応性電場効果トランジスター (ISFET) pH センサーをシミュレーションすることができます.

双極子カラーテーブルの電子密度を示す IGBT モデルの拡大図.

3D IGBT

実際のデバイスのように押し出し方向に沿って交互にエミッターを配置しながら, トレンチゲートIGBTをモデル化できます.

正孔濃度プロファイルを示す InSb p-チャネル FET モデルの拡大図.

p-チャネル FET

密度勾配定式化を用いて量子閉じ込めを追加し, InSb p-チャネル FET の DC 特性を解析できます.

プリズムカラーテーブルの粒子密度プロファイルを示す6つの構造.

ボース・アインシュタイン凝縮

回転するボース・アインシュタイン凝縮における渦格子形成の Gross–Pitaevskii 方程式を解くことができます.

半導体モジュールの特徴と機能

半導体モジュールの特徴や機能について, 以下で詳しくご紹介します.

グラフィックウィンドウの半導体設定と抵抗器モデルの拡大図.

ドリフト – 拡散方程式

半導体モジュールの基礎となるのは, ドリフト - 拡散方程式とポアソン方程式を組み合わせた方程式を解く半導体インターフェースです. このインターフェースにより, 半導体デバイスの絶縁ドメインと半導体ドメインの両方をモデル化することができます. ドリフト - 拡散の定式化の応用の1つは, フェルミ・ディラック統計またはマクスウェル・ボルツマン統計を使ってデバイスの基礎物理をシミュレーションすることです.

ドリフト - 拡散方程式の解析タイプには, 熱平衡, 定常, 過渡応答, 小信号解析が含まれます.

モデルビルダーとグラフィックスウィンドウの 3D バイポーラートランジスターモデルの拡大図.

ドーピングと材料モデル

半導体デバイスのモデリングでは, 材料のドーピング分布を指定することが重要です. 半導体モジュールには, あらゆるドーピングプロファイルを実現するための様々な機能が含まれています. 高度なオプションとして, 不完全イオン化や, 高いドーピングレベルではバンドギャップ縮小があります.

ドーピングプロファイルの内蔵オプションには, “線形”, “ガウス”, および ”エラー関数” が含まれます. ユーザー定義のドーピングプロファイルは, 数式を入力するか, 別のシミュレーションの出力をドーピングプロファイルの基礎として使用することで指定できます.

さらに, インポートされたルックアップテーブルに基づいてドーピングプロファイルを定義することも簡単です. この方法は, 例えば, ドーピングプロファイルが外部シミュレーションから出力される場合など, 必要な分布を解析的に定義できない場合に有効です.

グラフィックスウィンドウでの金属コンタクト設定と ISFET モデルの拡大図.

金属 - 半導体接触

金属 - 半導体接触のモデリングには, 専用の “金属接触” 境界機能を使用することができます. この端子タイプは, 電圧, 電流, 電力, および外部回路への接続をサポートしています.

電流 - 電圧特性が接合部に形成される電位障壁に依存する単純な整流金属 - 半導体接合部をモデル化するために, 理想的なショットキー接触タイプを利用することができます. このモデルに表面捕獲による表面再結合効果と表面電荷密度を組み込むために, “捕獲アシスト表面再結合” 境界条件を金属接触条件と同じ境界選択に追加することができます.

シュレディンガー方程式ノードがハイライトされたモデルビルダーとグラフィックスウィンドウの 3D モデルの拡大図.

シュレディンガー方程式

“シュレディンガー方程式” インターフェースは, 外部ポテンシャル中の単一粒子に対するシュレディンガー方程式を解きます. このインターフェースは, 一般的な量子力学的問題や, 量子井戸, ワイヤー, ドットなどの量子閉じ込め系 (エンベロープ関数近似を用いた場合) に有効です.

境界条件やスタディタイプを適切に設定することで,束縛状態の固有エネルギー, 準束縛状態の減衰率, 透過及び反射係数, 共鳴トンネル条件, 超格子構造の実効バンドギャップなど, 様々な状況において関連量を計算するモデルをユーザーが簡単に設定できるようになっています.

光学遷移設定とグラフィックスウィンドウの 1D プロットの拡大図.

光学遷移

“光学遷移” 機能は, 半導体内の光吸収および誘導放射と自発放射の両方をモデル化するために利用できます. 誘導放射または誘導吸収は, 電磁波の伝播によって生じる振動電場の存在下で, 2つの量子状態間で遷移が発生するときに起こります. 自発放射は, 高エネルギーから低エネルギーの量子状態への遷移が発生したときに起こります.

電気回路ノードがハイライトされたモデルビルダーとグラフィックスウィンドウの 1D プロットの拡大図.

電気回路への接続

“電気回路” インターフェースは, 回路内の電流や電圧をモデル化するための集中システムを作成するために使用されます. この機能は, 典型的な電圧源や電流源, 抵抗器, コンデンサー, インダクター, その他の半導体デバイスをモデル化する際に役立ちます. 電気回路モデルは, 2D および 3D の分散フィールドモデルにも接続することができます. また, 回路トポロジは, SPICE ネットリスト形式でエクスポートおよびインポートすることができます. 電気回路を半導体デバイスのフィジックスモデルと組み合わせると, 現実的な負荷をシミュレーションすることができます.

Lombardi 表面移動度モデルノードがハイライトされたモデルビルダーとグラフィックスウィンドウの 2D プロットの拡大図.

キャリア移動度モデル

ドリフト - 拡散アプローチで半導体デバイスをシミュレーションする場合, キャリア移動度の現実的なモデルが重要です. このような場合, 移動度は材料内のキャリアの散乱によって制限されます. 半導体モジュールには, いくつかの既定移動度モデルも含まれており, ユーザーが独自の移動度モデルを定義するオプションも備えています.

既定移動度モデルには, フォノン, 不純物, キャリア - キャリア散乱, 高電場速度飽和, および表面散乱のオプションが含まれています.

ユーザー定義の移動度モデルは, ユーザー定義機能に適切な式を入力することで容易に指定することができ, スクリプトやコーディングは必要ありません. このユーザー定義移動度モデルは, ソフトウェアに組み込まれている既定移動度モデルと任意に組み合わせることができます.

捕獲アシスト再結合の設定とグラフィックスウィンドウの 1D プロットの拡大図.

生成と再結合

オージェ再結合, 直接再結合, 衝突電離生成, 捕獲アシスト再結合などの生成および再結合プロセスは, “半導体” インターフェースを使用してモデルに含めることができます. ユーザー定義の再結合および生成機能を使用し, これらのプロセスの速度を手動で設定できます.

“捕獲アシスト再結合” モデルは, 間接バンドギャップ半導体の電子と正孔の再結合率を設定するために使用されます. デフォルトでは, 定常状態の再結合は, ミッドギャップに位置する状態を考慮する "Shockley-Read-Hall" 捕獲モデルを使ってモデル化されます. また, バンドギャップ内のエネルギーにおける離散捕獲や捕獲状態の連続密度を指定するために, “明示的捕獲分布” モデルを使用することもできます.

ゲート絶縁膜の設定とグラフィックスウィンドウの 3D IGBT モデルの拡大図.

絶縁体 - 半導体接触

“半導体” インターフェースには, 半導体と金属の間にある薄い絶縁体 (酸化物) をモデル化するための機能があります. この機能は, I-V曲線の計算に便利な小信号解析もサポートしています.

一般的な絶縁体のモデリングでは, “静電” の一般的なインターフェースでモデリングする際に追加される機能と同様の方法で, 電荷保存ドメイン機能を “半導体” インターフェースに追加することができます. 絶縁体ドメインのモデリングには, 以下のようないくつかの境界条件が利用できます:

  • 半導体 - 絶縁体界面 (デフォルト)
  • 外部表面電荷蓄積
  • 電気変位場
  • 浮遊電位
シュレディンガー方程式ノードがハイライトされたモデルビルダーとグラフィックスウィンドウの 1D プロットの拡大図.

シュレディンガー・ポアソン方程式

“シュレディンガー・ポアソン方程式” マルチフィジックスインターフェースは, “シュレディンガー方程式” インターフェースと “静電” インターフェースとを組み合わせ, 量子閉じ込め系における電荷キャリアをモデル化します. このインターフェースは, 量子井戸, ワイヤー, ドットなどの量子閉じ込めデバイスのモデリングや, マルチバンド系やスピンを持つ粒子のモデリングのための多成分波動関数のモデリングに使用することができます. さらに, ボース・アインシュタイン凝縮における渦格子の形成など, 一般的な量子系をシミュレーションする機能も備えています.

“シュレディンガー・ポアソン方程式” インターフェースを使用する場合, 電位はシュレディンガー方程式のポテンシャルエネルギー項に寄与し, 固有状態からの確率密度の統計的加重和は空間電荷密度に寄与します. 双方向結合系の自己無撞着解に必要なソルバー設定を自動生成する専用のスタディタイプが用意されています.

このインターフェースには, 共鳴トンネル状態のシミュレーションに使用される, 入射波と出射波を持つ開放境界をモデル化するオプションが含まれています. また, 超格子のモデル化には "周期的" 境界条件が利用できます.

半導体-電磁波カップリングの設定とグラフィックスウィンドウの 1D プロットの拡大図.

半導体オプトエレクトロニクス

半導体モジュールには, 電磁波と半導体の相互作用をモデル化するための2つのマルチフィジックスインターフェースが含まれています. この機能を使用するには, 波動光学モジュールが必要です. この機能は, 波動光学モジュール内の “周波数領域” インターフェースと “ビームエンベロープ” インターフェースに基づくものです.

“半導体” と “電磁波” インターフェースのカップリングは, 半導体モジュールの “光学遷移” 機能を用いて行われます. この機能は, 直接遷移材料に適した “半導体” インターフェース内のドメインに誘導放出生成項を導入します. この項は, “電磁波” インタフェースの対応する機能における光強度に比例します. さらに, “光学遷移” 機能は, 直接遷移材料における自然放出も考慮することができます.

光の吸収や発光の影響は, 複素誘電率または屈折率の対応する変化によって考慮されます.

半導体デバイスのマルチフィジックス

半導体デバイスの性能において, 多くの場合,物理効果の連成が重要な役割を果たします. 静電気, 熱伝導, 波動光学, 光線光学, 化学種輸送などの異なるフィジックスを組み合わせることで, マルチフィジックスシミュレーションは半導体デバイス内で発生する複雑な相互作用を捉えることができます. 半導体デバイスのマルチフィジックス解析の例としては, 以下のようなものがあります:

  • パワーデバイス内の熱効果のモデル化
  • 太陽光線のモデル化によるシリコン太陽電池の照明
  • 波動光学を考慮した誘導放出と自然放出のモデル化
  • 種輸送を利用した半導体と電解質モデルのカップリング

半導体モジュールと COMSOL 製品群の他の製品を組み合わせることで, 半導体デバイスの動作をより現実的かつ包括的に理解するマルチフィジックス解析が可能になります. これは, 性能と機能を向上させた, より効率的で高度な半導体デバイスの開発につながるでしょう.

どのビジネスもシミュレーションニーズもそれぞれ違います. COMSOL Multiphysics® ソフトウェアがお客様のご要望を満たすかどうかをきちんと評価するために, 我々にご連絡ください. 我々のセールス担当と話をすれば各個人に向いたお勧めや, しっかり文書化されたモデルなどをお送りすることができ, 最大限の評価結果を引き出すことができます. 最終的にどのライセンスオプションがあなたの要望にとって最適かを選択することができます.

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