ローターダイナミクスモジュール

回転機械のダイナミクス解析

回転部品を備えた機械を設計する場合, 回転の影響を正しく捉えることが非常に重要です. 正確なシミュレーションを実行することで, エンジニアはシステムの故障や不具合を回避する方法や, 運転や性能を最適化する方法をより的確に判断することができます. 構造力学モジュールのアドオンであるローターダイナミクスモジュールは, 回転機械のシミュレーションを実行するために特別に設計されており, このような判断に必要な機能を提供します.

ローターダイナミクスの研究は, 回転機械を含む応用分野において重要となります. 例えば, 自動車産業, 航空宇宙産業, 発電, 電気製品や家電製品の設計などです. COMSOL® ソフトウェアのマルチフィジックス機能を使用すると, モデリングを通して疲労のシミュレーション, 音の伝搬の解析, 回転シャフトと流体軸受の相互作用など, 静止部品と可動部品の相互作用を解析できます.

COMSOL へお問い合わせ
プリズムカラーテーブルのガスタービンモデル

ローター軸受システムの解析

回転機械の物理的挙動は振動に大きく影響され, 機械自体の回転や形状によって振動はさらに大きくなります. 完全に対称なローターアセンブリでさえ, 回転速度の増加とともにモード分離が発生します. これは, 垂直対称面における同一モードの通常の挙動が, 回転シャフトには適用できないことを意味しています. さらに, 回転システムの固有振動数に近い周波数で動作する場合, わずかな欠陥や不均衡であっても, 大きな振動振幅を引き起こす可能性があります.

ローターダイナミクスモジュールを使用すると, ローター, 軸受, ディスク, およびファンデーションにおける共振, 応力, およびひずみの解析が可能になるため, ユーザーは条件を許容可能な動作限界内に保つことができます. また, このモジュールを使用して, 異なる設計パラメーターが固有振動数にどのように影響し, その結果として臨界速度, 旋回, および安定性のしきい値にどのような影響を与えるかを評価することもできます. さらに, 定常および過渡的なアンバランス応答を調査するためにも使用できます.

このモジュールはまた, 回転挙動がローター自体の応力にどのように影響し, 回転機械のアセンブリの他の部分に負荷や振動がどのように伝達されるかを予測するための機能も備えています.

流体軸受シミュレーション

回転機械が臨界速度を超えるためには, 十分な減衰が必要です. このため, 回転シャフトを支持するために流体軸受がよく使用されます. ローターダイナミクスモジュールを使用すると, 流体軸受の挙動を詳細に解析することができます.

軸受表面のコンプライアンスとジオメトリ, 軸受荷重, 潤滑油の特性によって, 支持圧力分布を決定するためにさまざまな影響を考慮する必要があります. ローターダイナミクスモジュールでは, 単純な流体力学シミュレーションを実行したり, 構造力学モジュール伝熱モジュールと組み合わせて, より複雑な弾性流体力学シミュレーションや熱弾性流体力学シミュレーションを実行することもできます.

ローターダイナミクスモジュールの特徴と機能

COMSOL Multiphysics® でさまざまなローターダイナミクスシミュレーションを実行する.

固体ローターノードが強調表示されたモデルビルダーの拡大図と, グラフィックスウィンドウ内のターボチャージャー モデル.

組み込みのユーザーインターフェース

COMSOL Multiphysics® シミュレーションプラットフォームとそのアドオンモジュールは, 特定の物理分野に対応した定義済みのインターフェースを提供します. ローターダイナミクスモジュールは, ローターと軸受を正確にモデル化するための専用インターフェースを提供します. “固体ローター” インターフェースは, CAD ソフトウェアまたは COMSOL Multiphysics® の組み込み CAD 機能を使用して作成された完全3Dジオメトリモデルとしてローターをモデル化するために使用できます. “梁ローター” インターフェースは, ローターを1次元の梁としてモデル化し, ローター部品をモデル内の点として実装できる, 計算コストの低い方法を提供します.

“固体ローター” および ”梁ローター” インターフェースは, 変位, 速度, 加速度, および応力の計算に使用できます. 潤滑油膜を含む軸受の詳細なモデリングには, “流体軸受” インターフェースを使用できます.

梁ローターノードが強調表示されたモデルビルダーの拡大図と, グラフィックスウィンドウ内のモータードライブモデル.

梁ローター

ローターシステムのモデリングは, 計算コストが高くなることが多くなりがちです. そのため, シャフトの表現を簡略化するのが一般的です. 多くの場合, ローターの全体的なダイナミクスは, 特殊な梁要素を使用することで十分にモデル化することができます.

この種の解析には, シャフトの断面特性によって支配される効果的な幾何学的記述を使用する線表現が適用されます. このアプローチは, 例えば, 理想的に剛性の高いディスクを備えた軸対称シャフトからなるローターシステムを扱う場合に役立ちます. 梁ローターモデルは, ローターの変位が制限されている場合のローターの摩擦のシミュレーションにも使用できます.

ラジアルローラー軸受ノードの設定ウィンドウとグラフィックスウィンドウのギアボックスモデルの拡大図.

アブストラクト軸受

多くの場合, ローターは, 特定の位置での横方向および/または軸方向の動きを防止するために軸受によって支持されています. ローターダイナミクスモジュールでは, 暗黙的な軸受記述を使用してモデル化されたアブストラクトな軸受の範囲が提供されます. これには, 次のようなさまざまなタイプの軸受が含まれます:

  • ジャーナル軸受
  • スラスト軸受
  • ラジアルローラー軸受
  • アクティブ磁気軸受
  • マルチスプール軸受

これらのカテゴリには, 複数のバリエーションがあります. 例えば, ラジアルローラー軸受のオプションには, 単列と2列のバリエーションがあり, 以下のようなさまざまなスタイルがあります:

  • 深溝ボール
  • 角接触ボール
  • 自己位置調整ボール
  • 球ローラー
  • 円筒ローラー
  • テーパーローラー
グラフィックスウィンドウ内の流体ジャーナル軸受設定と基礎モデルの拡大図.

ファンデーション

ローター軸受システムが載っている構造部品 (ファンデーションとも呼ばれます) は, さまざまな複雑さのレベルでモデル化することができます. ファンデーションは以下のように選択できます:

  • 固定
  • フレキシブル
  • 可動

ファンデーションがローターとその支持体よりもかなり硬い場合, “固定ファンデーション” オプションを使用することができます. あるいは, “フレキシブルファンデーション” オプションを使用すると, 一連のフレキシブルなスプリングを使用してファンデーションの柔軟性を模倣できます. 軸受ファンデーションの動きを明示的に含める必要がある場合では, “可動ファンデーション” オプションを選択します.

縮小コンポーネントノードが強調表示されたモデルビルダーの拡大図と, グラフィックスウィンドウ内のギアボックスモデル.

コンポーネントモード合成 (CMS)

ローターダイナミクスモジュールでは, Craig-Bampton 法により, 線形部品を計算効率の高い縮約次数モデルに縮小することができます. これらの部品は, 縮小された部品のみで構成されるモデルに統合したり, 非線形部品を含むことができる非縮小弾性有限要素 (FE) モデルと組み合わせたりすることができます. “コンポーネントモード合成” または “動的サブストラクチャリング” として知られるこの手法は, 計算時間とメモリ使用量の両方を大幅に削減します.

パラメトリックスイープノードの設定ウィンドウの拡大図とグラフィックスウィンドウのホワールプロット.

結果と可視化

ローターダイナミクスモジュールは, シミュレーション結果を明確かつ簡潔に可視化し, 将来の使用や解析にデータを利用できるようにする機能を提供します. また, ローターダイナミクスアプリケーションに特化した次のようなさまざまなプロットタイプも含まれています:

  • ワールプロット: ローター軸を中心に回転するローターのモード形状を離散的な回転間隔でプロットする
  • キャンベル線図: ローター回転数に対するローターの固有振動数の変化をプロットする
  • ウォーターフォールプロット: 回転速度の関数として周波数スペクトルの変化を表示する
  • 軌道プロット: ディスクや軸受など, 特定のローター構成部品 (または点) の変位を示す
グラフィックスウィンドウ内の固体ローターと軸受のカップリング設定とレシプロエンジンモデルの拡大図.

マルチフィジックスインターフェースとカップリング

ローターダイナミクスモジュールでは, オイルホワールとホイップの効果を捉えるためにマルチフィジックスカップリングを利用できます. 3Dローターと流体軸受, およびそれらの間の相互作用をモデル化するには, “固体ローターと流体軸受” マルチフィジックスインターフェースを使用します. このインターフェースは, “固体ローター軸受カップリング” マルチフィジックスカップリングを介して, “固体ローター” と ”流体軸受” のインターフェースを連成します. このカップリングは, 速度と変位の情報を固体ロータインターフェースから流体軸受インターフェースに転送します.

梁として定義されるローターと流体軸受, およびそれらの間の相互作用をモデル化するために,“梁ローター軸受カップリング" マルチフィジックスカップリングを介して “梁ローター” と ”流体軸受” インターフェースを連成します.

固体ローターノードが強調表示されたモデルビルダーの拡大図と, グラフィックスウィンドウ内のレシプロエンジンモデル.

固体ローター

アプリケーションによっては, ローターの非対称性, 断面のたわみ, ディスク, ブレード, その他の付属品のダイナミクスなどの要因を無視できない場合があります. このような場合, ローターの完全な3D表現を使用して, ジオメトリを明示的にモデル化します.

このアプローチは, 基礎となる連続体の記述によってスピン軟化と応力硬化の影響を自動的に捉え, さまざまな条件下でのローターの挙動を最も正確に表現します.

流体ジャーナル軸受ノードが強調表示されたモデルビルダーの拡大図と, グラフィックスウィンドウ内のクランクシャフトモデル.

流体軸受

流体軸受で支持されたローターのより高度なシミュレーションには, “流体軸受” インターフェースを使用します. これを通して, 流体膜内の圧力分布, 速度場, および電力損失を調べることができます. 潤滑剤として液体を使用する場合, レイノルズ方程式による単純な解析を実行するか, または Jakobsson-Floberg-Olsson (JFO) キャビテーション理論によりキャビテーションを考慮することができます. 気体軸受の場合は, 修正レイノルズ方程式が使用されます.

このインターフェースは, 定義済みのさまざまなタイプの軸受やダンパー, あるいはユーザーが指定したタイプの軸受やダンパーのモデリングに使用することができます. 定義済みのタイプには以下のものがあります:

  • 流体力学的ジャーナル軸受:
    • プレーン
    • 楕円
    • スプリットハーフ
    • マルチローブ
    • チルトパッド
  • 流体力学的スラスト軸受:
    • ステップ
    • テーパーランド
    • チルトパッド
  • フローティングリング軸受
  • スクイズドフィルムダンパー

また, 入口, 出口, 軸受のミスアラインメントを指定して, 対象の軸受を表現することも可能です.

グラフィックスウィンドウ内の熱膨張設定とローターモデルの拡大図.

材料モデル

ローターダイナミクスモジュールでは, “線形弾性材料” 機能がデフォルトの材料モデルとして使用されます. この機能により, 線形弾性ローターの変位に関する方程式を追加し, 材料の弾性特性と慣性特性を定義することができます. この機能の方程式は, ローターの回転によって引き起こされる座標系加速力を考慮します. 熱膨張, 初期および外部応力とひずみ, 減衰など, 他の多くの効果も組み込むことができます.

時間-周波数 FFT ノードが強調表示されたモデルビルダーの拡大図と, グラフィックスウィンドウのウォーターフォールプロット.

スタディタイプ

ローターダイナミクスモジュールには, ローターアセンブリの静的解析と動的解析の両方に対応するさまざまなスタディタイプが搭載されています. これには, 静止スタディを使用して, 異なる質量偏心などのさまざまな条件下でのローターの挙動を調べるためのパラメトリックスタディが含まれます. また, 固有周波数スタディは, 回転速度の範囲にわたって固有周波数解析を繰り返し行うことにより, 安定した動作範囲や臨界速度を特定するのに特に役立ちます.

ローターにかかるすべての負荷が時間調和である場合, “周波数領域” スタディがローターの応答を計算します. 不均衡の慣性効果や, 共回転座標系に対する時間的変化を考慮する場合は, “時間領域” スタディを使用することができます.

FFT による過渡スタディでは, ローターの角速度に対してパラメトリックスイープを実行し, 時間領域シミュレーションと高速フーリエ変換 (FFT) を行います. このスタディタイプは計算コストがかかりますが, ローター軸受システムの副同期振動と超同期振動が支配的な場合に役立ちます.

固体-軸受カップリングノードが強調表示されたモデルビルダーの拡大図と, グラフィックスウィンドウ内のレシプロエンジンモデル.

拡張マルチフィジックス解析

ローターダイナミクスモジュールは, COMSOL 製品の他の製品と組み合わせて, 連成シミュレーションやマルチフィジックス解析を行うことができます. これにより, ローターシステムに対するさまざまな物理的影響を詳細に調べることができます. 例えば, ローターダイナミクスモジュールとマルチボディダイナミクスモジュールを組み合わせることで, 過渡シミュレーションを実施し, 外部トルクを受けたときのギアードローターアセンブリの振動を予測することが可能になります. 同様に, ステーターおよびローター部品の疲労寿命を評価するために, ローターダイナミクスモジュールを疲労解析モジュールとシームレスに組み合わせることもできます.

どのビジネスもシミュレーションニーズもそれぞれ違います. COMSOL Multiphysics® ソフトウェアがお客様のご要望を満たすかどうかをきちんと評価するために, 我々にご連絡ください. 我々のセールス担当と話をすれば各個人に向いたお勧めや, しっかり文書化されたモデルなどをお送りすることができ, 最大限の評価結果を引き出すことができます. 最終的にどのライセンスオプションがあなたの要望にとって最適かを選択することができます.

"COMSOL へコンタクト" ボタンを押し, あなたの連絡先詳細と特別なコメントや質問があればそれを記入して, 送信していただくだけで済みます. 1営業日以内に我々のセールス担当者から返事が届きます.

次のステップ:

ソフトウェアデモをリクエスト